ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
注目材料
1. 前日NYマーケットの流れ引継ぎ
前日は、本日の米国消費者物価指数(CPI)を控えて手を出しにくいと考えられたためか、動きが鈍い展開となりました。よって、CPI発表までは同じような流れになるかもしれません。
2. 東京マーケット休場前日
日本は2/11(金)が建国記念の日で祝日。「仮に米国CPIが強い数値→インフレ懸念→米国債利回り急騰→株価下落」の可能性も考えられることから、休日前に「日本株決済売り→円買い→ドル円下落」もあり得ます。
また、日本休日や米国CPIを控えて、含み益のあるドル円ロング勢決済によるドル円下落が生じやすいと推測します。
3.ウクライナ情勢緊迫化
米国サリバン大統領補佐官(2/6)「ロシア侵攻は明日にも起こり得るし数週間先かもしれない」「ロシアはいつでも攻撃を仕掛けられるよう軍を展開した」「侵攻は複数の形で行われるかもしれない(サイバー攻撃も示唆」
米国バイデン大統領と独ショルツ首相(2/7)も「ロシアがウクライナへ侵攻すれば対抗措置を講じる」
ロシアメディア報道(2/9)「ウクライナとの国境に近い東部にTHAAD配備を検討」など、ウクライナ情勢に関する報道が毎日続いていますが、解決に向かうような状況が見えてきません。
引き続き「地政学リスク→強い円買い→ドル円下落」の可能性に注意すべきと判断します。
米国CPI発表まではドル円動きにくい、もしくは決済売りでドル円下落しやすいと推測します。
マーケットの動き
東京マーケット前
7:00 取引開始時間
・ドル円:115.507
前日終値115.537からギャップダウンスタート。しかし、直ぐに窓埋め上昇しており、五十日仲値に向けて上昇期待あり。
東京マーケット(9:00~15:00)
9:00 オープン
・ドル円:115.602
・日経平均株価:27818.1 前日終値27579.65からギャップアップスタート。前日NYマーケットの米国債利回上昇の流れを引き継いで上昇。
・米国債利回り2年:1.365%
・米国債利回り10年: 1.939%
9:55 五十日仲値
・ドル円:115.583
仲値に向けて上昇継続し、仲値直前から一気に下落。
15:00 クローズ
・ドル円: 115.477
・日経平均株価: 27695.86(前日比 +116.21)
・米国債利回り2年:1.357%
・米国債利回り10年: 1.928%
欧州マーケット(17:00~1:30)
17:00 オープン
・ドル円: 115.403
・米国債利回り2年: 1.349%
・米国債利回り10年: 1.930%
18:05 報道
日銀が指し値オペを発表、新発10年国債で0.25%-14日にオファー(Bloomberg)
【考察】
2018年7月以来の「指しオペ」発動はサプライズで「強烈な円売り→ドル円急騰」
15M足下降チャネル上抜けて、テクニカル分析(A)ロングのタイミングと一致。しかし、あっと言う間の噴き上げで手を出せず。
22:30 経済指標
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)
米国消費者物価指数(CPI)1月度(Bloomberg)
前月比:前回0.5%、予想0.4%、結果0.6%(◎)
前年比:前回7.0%、予想7.2%、結果7.5%(◎)
コア前月比:前回0.6%、予想0.5%、結果0.6%(○)
コア前年比:前回5.5%、予想5.9%、結果6.0%(○)
【見通し】
米国のインフレターゲットの対象はCPIではなく個人消費支出(PCE)デフレータですが、CPIの発表時期はPCEより早くデータの信頼性も高い。よって、注目度は物価関連指標の中で最も高いとされています。
【考察】
米消費者物価指数、1月は7.5%上昇-市場予想を上回る伸び(Bloomberg)
サプライズの上振れのCPIを受けて、「米利上げ織り込み加速→米国債利回り急騰→ドル買い」、「株先物(ダウ、日経)急落→リスクオフ円買いなし」、「日米金利差拡大→円売り」、ドル円急騰。
22:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数:前回23.8万件、予想23.0万件、結果22.3万件(◎)
米国失業保険継続受給件数:前回162.1万件、予想161.5万件、結果162.1万件(△)
【見通し】
注目度が高いのは、同刻の米国消費者物価指数。よって、強いサプライズがない限りは確認のみ。
【考察】
米新規失業保険申請件数、前週比1.6万件減の22.3万件-予想23万件(Bloomberg)
米国新規失業保険申請件数は3週連続減少し、2021年12月以来の低水準。→ドル買い材料
米国失業保険継続受給件数は2週連続減少したものの予想よりは高い。→ドル売り材料
総じてドル買い材料と判断します。
テクニカル分析(A)目標日足実体上限116.067到達。上昇勢いが強く、オーバーシュートで日足ヒゲ先116.353手前の116.338に達しました。
NYマーケット(23:30~6:00)
23:30 オープン
・ドル円:116.283
・米国債利回り2年:1.475%
・米国債利回り10年:1.986%
・ダウ平均: 35630.81
・S&P500: 4553.24
・ナスダック: 14228.68
米国CPIが強い結果だったことを受けて、米国債利回り急騰を嫌気して、米国主要3指数は全て下落。
しかし、ドル円日足上限付近116.350に強力な売り勢力が控えていたためか、強烈なドル売りが発生し、ドル円下落に転換。米国CPIを受けて上昇した分を全て吐き出すことに。
指標結果を見て飛びつくのは危険だと見せつけられました。
1:30 欧州クローズ
・ドル円: 115.845
・米国債利回り2年: 1.501%
・米国債利回り10年 2.024%
2:45 要人発言
米国ブラード、セントルイス連銀総裁
「7月1日までの1.00%利上げを支持」
「2000年以来となる0.5%の利上げ支持」
「第2四半期にBS縮小スタートの可能性」
【考察】
超タカ派発言で、「米国債2年,10年利回り急騰→ドル買い」、「米国主要3指数上昇急落」、ドル円急騰
3:00 経済指標
米国30年債入札:230億ドル、最高落札利回り 2.340%
【見通し】
入札良好なら米国債利回り低下、入札不調なら米国債利回り上昇です。
1/24 2年債入札:好調
1/11 3年債入札:好調
1/12 10年債入札:360億ドル、不調
1/13 30年債入札:不調
1/20 20年債入札:好調
1/25 5年債入札:好調
1/27 7年債入札:好調
2/8 3年債入札:500億ドル、好調
2/9 10年債入札:370億ドル、好調
今年複数回の米利上げが見込まれているにも関わらず、短期・長期に関わらず好調な国債入札が続いています。よって、今回も「入札好調→国債利回り低下→ドル売り→ドル円下落」に注意。
【考察】
「入札好調→30年利回りだけでなく、2年,10年利回り下落→ドル売り」でドル円下落
6:00 クローズ
ドル円: 116.047
米国債利回り2年: 1.615%
米国債利回り10年: 2.047%
ダウ平均: 35241.6
S&P500: 4504.07
ナスダック: 14185.65
米国債利回り急騰を受けて米国主要3指数急落。
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
通貨強弱
NYマーケットクローズ時点の通貨強弱
- GBP(リスクオン通貨):前日8位
- EUR(リスクオン通貨):前日5位
- USD(基軸通貨):前日7位
- NZD(資源国リスクオン通貨):前日1位
- AUD(資源国リスクオン通貨):前日2位
- CHF(リスクオフ通貨):前日4位
- CAD(資源国リスクオン通貨):前日3位
- JPY(リスクオフ通貨):前日6位
【考察】
利上げ期待からポンドとユーロ買いが強く、ドルは大きく振れたものの結局は利上げ期待で買いが優勢になりました。
一方、日銀が指し値オペを発表したことで円が売られました。
米国債イールドカーブ
- 2/10(木)は2/9(水)に対して、ベア・フラットニング(短期金利上昇、長期金利上昇、長短金利差縮小)になりました。景気過熱と金融引き締めを示唆しており、ドル買い材料と考えられます。
材料まとめ
ドル買い材料
- 金融政策
- FOMC(1/26):政策金利据え置き、但し、金融引き締めに前向きな見解(3月テーパリング終了確定、3月利上げほぼ確実)。市場では3月0.5%利上げ観測や年内利上げ5回以上予想見られる。
- 日米金利差拡大:米国は金融引き締め、日本は金融緩和継続
- 政治、経済
- 暖房用と米経済回復による原油需要拡大→需要ひっ迫警戒感→原油価格上昇→インフレ高進懸念→米利上げ織り込み
- エネルギー需要増&供給不足、労働賃金上昇
- 米企業決算総じて良好
- 米国GDP第4四半期(1/27):良好
- 米国雇用統計(2/4):サプライズの強い数値
- 要人発言
- パウエルFRB議長会見(1/26):「利上げとバランスシート縮小可能」「毎回のFOMC会合で、利上げする可能性を排除しない」「金利を引き上げる余地はかなりある」→タカ派発言
- 新型コロナ
- 米国での新型コロナウイルス感染者減少に伴って経済正常化への期待感
- 地政学リスク
- ウクライナへロシア侵攻すれば米国制裁→ロシア産原油のドル建て決済不可→原油先物価格上昇→インフレ加速
ドル売り材料
- 政治、経済
- 米国貿易赤字が過去最大規模
- 世界経済が回復する中、欧州株、アジア新興市場株や債券、資源国通貨、金や銀に資産を移すべきとのマネーマネージャーが増えているとの報道(1/13, Bloomberg)
- 気候変動・社会保障関連歳出法案:マンチン上院議院反対で採決先送り
- 高インフレに伴うバイデン政権支持率低下
- 2/15の米国債償還・利払いに伴う円転
- 米中貿易戦争:米商務省、「輸出注意リスト」に中国33企業・団体追加
- 新型コロナ
- 米国内のワクチン接種率向上しない、マスクをしない人も多い
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係悪化
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化:
- ロシア、米国、NATOの協議不調。
- ロシア制裁でドル決済が使えなくなったら、ロシアはドル売り中国人民元買いの可能性
円買い材料
- 金融政策
- 日銀、量的緩和じわり修正 国債保有残高13年ぶり減少(1/5, 日経新聞):弱いながらも実質的なテーパリング。
- 政治、経済
- 長期金利が一時0.185%(2016年1月以来):2/1から大手銀行5行が10年固定の住宅ローン基準金利を0.05~0.10%引き上げ。
- 2/15の米国債償還・利払いに伴う円転
- 要人発言
- 岸田首相発言「新しい資本主義」:投資家軽視→リスクオフ株価下落
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化
- 米国サリバン大統領補佐官「ロシア侵攻は明日にも起こり得るし数週間先かもしれない」「ロシアはいつでも攻撃を仕掛けられるよう軍を展開した」「侵攻は複数の形で行われるかもしれない(サイバー攻撃も示唆」(2/6)
- 北朝鮮の軍事行動:ミサイル発射は1月に7回
- IMM通貨先物
- 1/25時点、円ショート縮小(ネット-80,879→-68,273、前週比+12,606)
円売り材料
- 金融政策
- 2021.12.17 に引き続き、2022.1.18日銀金融政策決定会合で、政策金利-0.1%維持、金融緩和継続、必要なら追加緩和方針。
- 日本以外でテーパリングや利上げ実施する国が増加→円を売って海外通貨買って利回りが良い海外国債などに投資した方が良い。
- 日銀(2/10):10年国債で指し値オペ実施へ、0.25%で金額は無制限
- 要人発言
- 日銀黒田総裁(1/18):「利上げや緩和的な政策変える必要ないし議論もない」
- 政治、経済
- 原油など資源価格高騰→輸入物価上昇→資源輸入への支払い増→日本の経常収支悪化
- 新型コロナ
- 日本政府 「まん延防止等重点措置」適用→日本経済停滞
テクニカル分析
ドル円チャート
- 月足: ボリンジャーバンド開いており、上昇トレンド継続。
月足トレンドライン付近まで下落して反発し、陽線形成中。 - 週足: 上昇トレンド継続ですがボリンジャーバンドが閉じつつあり。週足実体レジスタンス115.577到達し、売り圧力も高まる位置。
- 日足: ボリンジャーバンド横向きですが、直近の流れは上昇トレンド。
日足レジスタンス115.328を超えたものの週足実体レジスタンス115.555を上ヒゲで戻されており、十字線形成。もみ合いや調整の下落がしばらく続く可能性もあります。
115.577上抜ければ上値目処日足レジスタンス116.067。
調整の下落目処は押し安値115.072。 - 4H足: トレンドライン下抜けたためレンジ。
115.577上抜ければ上値目処日足レジスタンス116.067。
押し安値115.355かつ20MA下抜けで下目線。下値目処は日足押し安値115.072。 - 1H足: ボリンジャーバンドスクイーズしてレンジ推移。戦略は4H足と同じ。
- 15M足:ボリンジャーバンド開いており、直近の流れは上昇トレンド
【シナリオ】
①ロング
(A)週足実体上限115.577を4H足レベルでレジサポすれば、目標日足レジスタンス116.067。
(B)4H足押し安値115.355まで下落した後、20MA等での反発あれば、目標115.577。
(C)日足押し安値115.072またはオーバーシュートで114.937まで下落した後、反発あれば目標115.355
②ショート
(D)4H足押し安値115.355かつ20MA下抜けでレジサポすれば、目標日足押し安値115.072。オーバーシュートで114.937。
(E)4H足押し安値114.937下抜けてレジサポすれば目標日足サポート114.361。
前日同様に上昇圧力は強いですが、週足レジスタンスに到達したことから、このまま上昇するにしても一旦は調整の下落を挟む可能性があると考えます。このような場合、4H足レベルで抜けた方向に付いていきたい。
優先はロング(A)、次にショート(D)です。
【考察】
18:05-22:30
日銀の指し値オペを発表を受けて、15M足下降チャネル上抜けて、テクニカル分析(A)ロングのタイミングと一致。しかし、あっと言う間の噴き上げで手を出せず。
米国CPIの強い結果を受けて、テクニカル分析(A)目標日足実体上限116.067到達。その後、上昇勢いが強く、オーバーシュートで日足ヒゲ先116.353手前の116.338に達しました。
ファンダメンタルズ材料の「日銀指値オペ発表」と「米国CPI結果」をきっかけにドル円急騰しましましたが、動きが早過ぎて付いていけずに見送りで終了でした。
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