ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
注目材料
1. 前日NYマーケットの流れ引継ぎ
米国消費者物価指数(CPI)の強い結果で「米国債利回り急騰→ドル買い→ドル円上昇」となり、一時116.338円と1月4日以来の高値を更新しましたが、日足レジスタンス116.353付近での利確や戻り売り勢が強く、CPIでの上昇分が全戻しの下落となりました。
その後、米国ブラード・セントルイス連銀総裁の超タカ派発言「7月1日までの1.00%利上げを支持」「2000年以来となる0.5%の利上げ支持」「第2四半期にBS縮小スタートの可能性」をきっかけに、再びドル円上昇。
CME FedWatch Toolでも、3月FOMCでの50-75bps利上げ織り込みが大きく上昇(前日24.0%→89.9%)したことからも、ドル円上昇しやすいと考えます。
また、115円台に戻らず、116.000円ちょうどで引けたことは116.00円台維持に期待が持てます。
2. ウクライナ情勢緊迫化
ロシアメディア報道(2/9)「ウクライナとの国境に近い東部にTHAAD配備を検討」など、ウクライナ情勢に関する報道が毎日続いていますが、解決に向かうような状況が見えてきません。
やや沈静化した雰囲気はありますが、引き続き「地政学リスク→強い円買い→ドル円下落」の可能性に注意すべきと判断します。
総じて、NYマーケットの流れ引継いでドル円は上昇しやすいと考えます。
マーケットの動き
東京マーケット前
7:00 取引開始
ドル円: 115.992
東京マーケット(9:00~15:00)、建国記念の日で休場
9:00
【見通し】
日本が休みでも東京マーケットが動くことが多い。前日NYマーケットの動きを引き継ぐ可能性が高いと推測します。
・ドル円: 116.053
15:00
・ドル円: 116.053
・米国債10年利回り: 2.035%
欧州マーケット(17:00~1:30)
17:00 オープン
・ドル円: 116.011
・米国債2年利回り: 1.592%
・米国債10年利回り: 2.008%
NYマーケット(23:30~6:00)
23:30 オープン
・ドル円: 115.876
・米国債2年利回り: 1.553%
・米国債10年利回り: 2.003%
・ダウ平均: 35267.89
・S&P500: 4506.27
・ナスダック: 14213.62
0:00 経済指標
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)
米国ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)2月度
前回67.2、予想67.0、結果61.7(×)
【見通し】
速報値のため注目されやすいですが、調査対象人数が少なく数値の変動も大きいため信頼性は高くありません。よって、サプライズがない限りは確認のみ。
【考察】
米消費者マインド一段と悪化、約10年ぶり低水準-インフレを懸念(Bloomberg)
サプライズの弱い数値で「ドル売り→ドル円下落」しましたが、小幅下落で15M足200MA到達から反発上昇。
1:30 欧州クローズ
ドル円: 115.911
3:27 報道
米国「プーチン露大統領がウクライナに侵攻することを決定。侵攻は来週の見込み。」
【考察】
リスクオフ→米国主要3指数急落、ユーロ売り、米国債利回り低下、原油先物WTI急騰、ゴールド買い、ドル買い、円買い→強さ「円>>ドル」→ドル円急落
4:04 要人発言
米国サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)
「ロシアのウクライナ侵攻がいつでも始まる可能性」
「ロシアが侵攻した場合、米国は断固として対応する準備」
「ロシアの攻撃は、空襲から始まる可能性が高い」
「プーチン露大統領が最終決定を下したとは断定しない」
【考察】
プーチン大統領が最終決定した訳ではない、とのことでドル円急落の勢いが一時弱まりました。
4:50 報道
米国当局「ロシアは火曜日に侵攻開始の可能性があり、ウクライナのドンバス地域、または首都キエフへの攻撃があり得る」
5:00 報道
米国連銀の買いオペ(市場から債券購入)スケジュール発表
結果:買いオペ予定通り
【見通し】
以下が想定されます。
①「買いオペが発表されない→テーパリング緊急終了→緊急利上げの可能性大→米国債利回り上昇→ドル買い」
②「買いオペが予定通り発表→緊急利上げ無し→米国債利回り低下→ドル売り」
【考察】
見通し②となりましたが、直前までのドル円急落の影響が大きかったためか、報道でドル円下落は継続しませんでした。
6:00 クローズ
・ドル円: 115.241
・米国債2年利回り: 1.500%(-5.12%)
・米国債10年利回り: 1.927%(-5.31%)
・ダウ平均: 34738.05(-1.43%)
・S&P500: 4418.65(-1.90%)
・ナスダック: 13791.16(-2.78%)
6:06 要人発言
米国バイデン大統領
明日土曜、プーチン大統領と電話協議へ
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
通貨強弱
NYマーケットクローズ時点の通貨強弱
- JPY(リスクオフ通貨):前日8位
- CHF(リスクオフ通貨):前日6位
- USD(基軸通貨):前日3位
- GBP(リスクオン通貨):前日1位
- CAD(資源国リスクオン通貨):前日7位
- NZD(資源国リスクオン通貨):前日4位
- AUD(資源国リスクオン通貨):前日5位
- EUR(リスクオン通貨):前日2位
【考察】
米国報道「プーチン露大統領がウクライナに侵攻することを決定」から、一気にリスクオフ円買い、スイスフラン買い、ドル買いが進行しました。
米国債イールドカーブ
- 2/11(金)は2/10(木)に対して、ブル・フラットニング(長短金利低下、長期金利が短期金利より低下、長短金利差同じ)になりました。
米国報道「プーチン露大統領がウクライナに侵攻することを決定」の影響ですが、景気減速と将来の金融緩和を示唆しており、ドル売り材料と考えられます。
しかしながら、この米国報道のリスクオは「原油先物WTI上昇→高インフレ加速に繋がる」ため、将来の金融引き締めではなく、金融引き締めになると考えらえます。
材料まとめ
ドル買い材料
- 金融政策
- FOMC(1/26):政策金利据え置き、但し、金融引き締めに前向きな見解(3月テーパリング終了確定、3月利上げほぼ確実)。市場では3月0.5%利上げ観測や年内利上げ5回以上予想見られる。
- 日米金利差拡大:米国は金融引き締め、日本は金融緩和継続
- 政治、経済
- 暖房用と米経済回復による原油需要拡大→需要ひっ迫警戒感→原油価格上昇→インフレ高進懸念→米利上げ織り込み
- エネルギー需要増&供給不足、労働賃金上昇
- 米企業決算総じて良好
- 米国GDP第4四半期(1/27):良好
- 米国雇用統計(2/4):サプライズの強い数値
- 要人発言
- パウエルFRB議長会見(1/26):「利上げとバランスシート縮小可能」「毎回のFOMC会合で、利上げする可能性を排除しない」「金利を引き上げる余地はかなりある」→タカ派発言
- 新型コロナ
- 米国での新型コロナウイルス感染者減少に伴って経済正常化への期待感
- 地政学リスク
- ウクライナへロシア侵攻すれば米国制裁→ロシア産原油のドル建て決済不可→原油先物価格上昇→インフレ加速
ドル売り材料
- 政治、経済
- 米国貿易赤字が過去最大規模
- 世界経済が回復する中、欧州株、アジア新興市場株や債券、資源国通貨、金や銀に資産を移すべきとのマネーマネージャーが増えているとの報道(1/13, Bloomberg)
- 気候変動・社会保障関連歳出法案:マンチン上院議院反対で採決先送り
- 高インフレに伴うバイデン政権支持率低下
- 2/15の米国債償還・利払いに伴う円転
- 米中貿易戦争:米商務省、「輸出注意リスト」に中国33企業・団体追加
- 新型コロナ
- 米国内のワクチン接種率向上しない、マスクをしない人も多い
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係悪化
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化:
- ロシア、米国、NATOの協議不調。
- ロシア制裁でドル決済が使えなくなったら、ロシアはドル売り中国人民元買いの可能性
円買い材料
- 金融政策
- 日銀、量的緩和じわり修正 国債保有残高13年ぶり減少(1/5, 日経新聞):弱いながらも実質的なテーパリング。
- 政治、経済
- 長期金利が一時0.185%(2016年1月以来):2/1から大手銀行5行が10年固定の住宅ローン基準金利を0.05~0.10%引き上げ。
- 2/15の米国債償還・利払いに伴う円転
- 要人発言
- 岸田首相発言「新しい資本主義」:投資家軽視→リスクオフ株価下落
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化
- 米国サリバン大統領補佐官「ロシア侵攻は明日にも起こり得るし数週間先かもしれない」「ロシアはいつでも攻撃を仕掛けられるよう軍を展開した」「侵攻は複数の形で行われるかもしれない(サイバー攻撃も示唆」(2/6)
- 米国「プーチン露大統領がウクライナに侵攻することを決定。侵攻は来週の見込み。」(2/11)
- 北朝鮮の軍事行動:ミサイル発射は1月に7回
- IMM通貨先物
- 1/25時点、円ショート縮小(ネット-80,879→-68,273、前週比+12,606)
円売り材料
- 金融政策
- 2021.12.17 に引き続き、2022.1.18日銀金融政策決定会合で、政策金利-0.1%維持、金融緩和継続、必要なら追加緩和方針。
- 日本以外でテーパリングや利上げ実施する国が増加→円を売って海外通貨買って利回りが良い海外国債などに投資した方が良い。
- 日銀(2/10):10年国債で指し値オペ実施へ、0.25%で金額は無制限
- 要人発言
- 日銀黒田総裁(1/18):「利上げや緩和的な政策変える必要ないし議論もない」
- 政治、経済
- 原油など資源価格高騰→輸入物価上昇→資源輸入への支払い増→日本の経常収支悪化
- 新型コロナ
- 日本政府 「まん延防止等重点措置」適用→日本経済停滞
テクニカル分析
ドル円チャート
- 月足: ボリンジャーバンド開いており、上昇トレンド継続。上値目処は実体上限116.762。
- 週足: 上昇トレンド継続ですがボリンジャーバンドが閉じつつありますが、このまま115.577を実体で超えて引ければ来週も上昇期待あり。
- 日足: ボリンジャーバンド開きつつあり、直近の流れは上昇トレンド。
一時は日足レジスタンス116.107を超えたものの、上ヒゲで大きく戻されましたが、再び116.067を超えれば上値目処日足ヒゲ先116.353
下落目処は週足実体サポート115.577。 - 4H足: 115.577上抜けてボリンジャーバンド開いておりトレンド継続。
116.107を超えれば上値目処日足ヒゲ先116.353
116.107で上値抑えられれば、下値目処は週足実体サポート115.577。 - 1H足: ボリンジャーバンド開いておりトレンドではあるものの、直近の流れは上昇弱まりつつあり。
116.107上抜ければ上値目処は日足ヒゲ先116.353。 - 15M足:トレンドではあるものの、直近の流れは上昇弱まりつつあり。戦略は1H足と同じ。
【シナリオ】
①ロング
(A)日足実体上限116.107でレジサポすれば、目標日足ヒゲ先116.353。
(B)日足ヒゲ先116.353でレジサポすれば、目標月足実体116.762。
②ショート
(C)116.107で反発してレジサポすれば、目標週足実体115.577。
(E)上昇して116.353で反発してレジサポすれば、目標週足実体115.577。
月足・週足が上昇トレンドで日足以下も直近は上昇トレンドであることから、優先は(A)ロング、(B)ロングです。
【考察】
14:00 116.107上抜けし15M足でレジサポ→(A)ロング可
15:45 116.107下抜けし15M足レジサポ→(A)ロング不成立、と同時に(C)ショート可
3:30 (C)ショート目標115.577到達
優先の(A)ロング不成立で、(C)ショートは目標の流れでしたが突発的な米国報道で動いており、狙えるエントリーではありませんでした。
コメント