ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
①前日NYマーケットの流れを引き継ぎ
米国消費者物価指数(CPI)がほぼ予想通りとは言え、絶対値は全体的に高い数値でした。
「インフレ懸念再燃→FRB金融正常化加速→ドル買い材料」になり得ると考えましたが、実際には「米国債2年と10年利回り低下→ドル売り」、「先物(ダウ、日経)急騰→円売り」、ドル売り円売りが交錯しましたがドル売りが強く、ドル円115.404 から急落。
指標に向かってドル円は徐々に上昇していたことから、発表直後にSell the factになったのかも知れませんが、それだけでは説明できない大きな下落でした。
よって、下落の主因は、前日のパウエルFRB議長発言が期待よりもハト派的だったことで、この程度のCPIでは金融正常化加速にはならないと判断されたと推測します。
本日もこの流れを引き継いで東京マーケットは推移すると考えます。しかしながら、インフレ対策として利上げとバランスシート縮小は本質的にドル買い材料のはず。よって、ドル円下落が一服すれば大きな上昇への転換する可能性もあります。
②注目材料(経済指標や要人発言)
注目は、米国生産者物価指数(PPI)と米国レイナードFRB理事の副議長承認公聴会です。
PPIについては結果が強い場合CPIと同じようなドル売りとなるか、レイナード氏の発言についてはパウエル議長との差異に注意したいと考えます。
最近、インフレ関連指標が強くともドル売り、金融当局者がタカ派発言してもドル売りが多い。指標や発言直後に方向性を決め打ちせずに、「ドル買い円売り」もしくは「ドル売り円買い」の方向性が定まってから、エントリーを実施したいと思います。
東京マーケット前
7:00 取引開始時間
始値114.169スタート。
8:25 要人発言(Bloomberg)
米国デイリー・サンフランシスコ連銀総裁
「インフレは不快なほど高い」「早ければ2022年3月には利上げ見込み」
【考察】
米国金融当局者はインフレに対して強い危機感を抱いていることが、日々の要人発言で見て取れます。タカ派の中でも強いか弱いかの違いだけ。
タカ派発言後、「時間外米国2年と10年利回りは上昇→しかしドル売り」、「先物(日経、ダウ)下落→円買い」でドル円は下落転換。
やはり、要人のタカ派発言で「米国債利回り上昇→ドル買い」と考えるのは危険な環境になっています。
ドル売り円買い、米国債利回りがドル買いに繋がっておらず、ドル円も方向性が定まらないレンジ推移
東京マーケット(9:00~15:00)
注目材料なし。
欧州マーケット(17:00~1:30)
21:30 テクニカル分析、ドル円シナリオ②合致
NY勢がドル売り円買い参入してきたためかドル円下落し、1H足レンジ下限114.388かつ日足押し安値114.325を下抜け。
しかしながら、 「ダウ先物上昇継続→円売りになりやすい」、「米国債2年利回り上昇、10年利回り低下→ドル買い方向性判りにくい」、更に注目の米国PPI発表が迫っているため、エントリーは見送りました。指標前にドル円が大きく下落していることから、Buy the factの可能性も考えられました。
22:28 要人発言
米国ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁
「テーパリング終了後、利上げ、その後にバランスシート縮小が必要」「バランスシート縮小は2022年後半か、2023年初頭開始の可能性」「今年3回利上げ、4回目もあり得る」
【考察】
やはり、米国金融当局者はインフレに対して強い危機感を抱いていることが、日々の要人発言で見て取れます。現状、タカ派発言は当然になっており、強烈なサプライズがなければ材料にはならないよう。
22:30 経済指標
米国生産者物価指数(PPI)
(前月比)前回0.8%、予想0.4%、結果0.2%
(前年比)前回9.6%、予想9.8%、結果9.7%
(コア前月比)前回0.7%、予想0.5%、結果0.5%
(コア前年比)前回8.0%、予想7.7%、結果8.3%
【見通し】
全体的に予想値は前回値より低め。前日の米国消費者物価指数(CPI)は高い数値にも関わらず強いドル売りとなってドル急落しました。つまり、「インフレ懸念→ドル買いではなくドル売り」。
この考えが続くなら、「予想通りPPI低い結果→インフレ懸念後退→ドル買い」となるかも知れません。前日ドル円急落していますので、「予想通りPPI低い結果→インフレ懸念後退→Buy the factでドル買い戻し→ドル円上昇」という考え方もありそうです。
22:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数:前回20.7万件、予想20.0万件、結果23.0万件
米国失業保険継続受給件数:前回175.4万件、予想173.3万件、結果155.9万件
【見通し】
2021年11月より低い数値が安定して続いており注目度は低くなったと見ます。サプライズがない限り、同刻発表の米国PPIの結果でドル円は動くと考えます。
【考察】
米国PPIは前月比・前年比で予想を下回りましたが、コア前年比は予想より強い数値。
米国新規失業保険申請件数の増加は新型コロナウイルスのオミクロン変異株の流行が影響しているようです。これが長引くようなら、来月の米国雇用統計数値が悪化する可能性があります。完全雇用への期待が後退すればドル売り材料になります。
強弱入り混じった結果になったため、「米国債2年と10年利回り低下→ドル売り」、「ダウ先物買い→円売り」でドル売り円売りが交錯し、初動はドル円の方向感がでませんでした。
NYマーケット(23:30~6:00)
23:30 オープン
ドル円:114.244
米国債: 2年利回り0.905%、10年利回り1.732%
ドルインデックス:94.717
通貨強弱:円>ドル
原油先物(WTI):82.76
0:00 報道(Bloomberg)
米国住宅ローン金利は3.45%に急騰、2020年3月以来最高値
【解釈】
先週3.22%、昨年2.79%から大きく上昇→インフレ懸念再燃
これがきっかけかだったのか不明ですが、
米国債2年と10年利回り低下→しかし強いドル買い
米国主要3指数、日経先物下落→クロス円急落→強い円買い
ドル買い円買い→通貨強弱「円>>ドル」→ドル円急落
ビットコインも急落
0:29 要人発言(Bloomberg)
米国ブレイナードFRB理事の副議長承認公聴会
「我々の行動はインフレを低下させる」「インフレは明らかに米国民を傷つけている」
1:20 「FRBは強力なツールを使ってインフレを抑制する」
1:49 「FOMCは年末までに約2.5%近くのインフレ予測」
2:15 「今年、複数回の利上げとバランスシート縮小を想定する」
2:23 「利上げ余地がなくなればQE実施する」
【見通し】
金融政策について、1/11のパウエル議長再任指名承認公聴会の発言と同じになると予想します。ブレイナード氏はもともとハト派だったことと、パウエル議長発言が想定よりハト派的でしたので、今回もハト派的な発言であれば相場の動きは小さいと考えます。
反対に、パウエル議長よりもタカ派的な発言をすれば、「米国株価指数急落→リスクオフ円買い→ドル円下落」があり得ます。
【考察】
想定通りのタカ派内容ですが、
「米国債2年と10年利回り低下→ドル売り」
「ダウ平均反応薄から下落に転換、S&P500とナスダック下落→円買い」
「ドル売り円買い→ドル円」となりました。
やはり、タカ派発言がドル買いに繋がらない環境が続いています。
2:19 要人発言(Bloomberg)
米国バーキン・リッチモンド連銀総裁「労働力不足は長期化する可能性がある」
【考察】
今月の米国雇用統計の失業率が3.9%だったことから完全雇用に近いと判断していました。
つまり、FRB使命の最「雇用の最大化」と「物価の安定」の内、「雇用の最大化」が近づきつつあることで、もう一つの使命である「物価の安定」に向けてインフレ抑制政策(利上げ、バランスシート縮小)が実行できるだろう、ということ。
しかし、今回の発言をそのまま捉えれば「雇用の最大化」 には時間が掛かる。確かに、今週の米国新規失業保険申請件数も増加していますので、雇用不安が見えます。
そうなると、米国経済停滞、インフレ抑制政策へのブレーキが懸念されます。要人のタカ派発言が相次いでも、米国債利回りが上がりにくくドル買いになりにくいのは、「雇用の最大化」の不安も要因として挙げられるのかもしれません。
3:00 経済指標
米国30年債入札(220億ドル)、最高落札利回り2.075%
【見通し】
入札良好なら米国債利回り低下、入札不調なら米国債利回り上昇です。
米国債3年債入札は好調で利回り低下、米国債10年入札は不調で利回り上昇となりました。利上げ局面では短期債金利が長期債金利より上昇しやすいようですが逆の動きです。
超長期債と呼ばれる米国30年債入札も、10年債同様、不調になりそうです。更に米国30年債入札は10年債より人気が低いため、ドル円への影響は小さいと考えます。
【考察】
米国30年債入札不調で初動は利回り上昇しましたが直ぐに下落へ転換。米国債10年利回りも上昇から下落、2年利回りは動かず。
ドルも動きませんでしたが、円売りに傾いたことで、ドル円上昇。しかし、ドル円上昇が続くような材料はありませんので、ドル円戻り売りを狙いやすくなったと思います。
3:22 要人発言(Bloomberg)
米国エバンズ・シカゴ連銀総裁「インフレは高すぎる」
5:04「インフレが十分に改善しなければ2022年に4回利上げの可能性」
【考察】
他の金融当局者と同じくタカ派発言。「米国債2年と10年利回り下落継続→しかしドル買い」、「先物(日経、ダウ)、米国主要3指数下落継続→しかし円売り」。「ドル買い円売り→ドル円上昇」へと転換しました。
整合性のないドル買い円売りですので、単にNYショート勢の撤退に伴うドル円買戻しの決済が入ったのかもしれません。
6:00 NYマーケットクローズ
ドル円:114.139
米国債:2年利回り0.891%、10年利回り1.701%
ドルインデックス:94.891
通貨強弱:円>>ドル
WTI先物:81.5
ダウ平均:36113.62
ナスダック: 14806.81
S&P500: 4759.03
材料まとめ
ドル買い材料
- 金融政策
- テーパリング加速決定:2021.12.15 FOMCで、2022年3月終了に前倒し
- 政策金利:2021.12.15 FOMCで2022年末までに0.25%ずつ3回利上げ方針
- 米国FOMC議事要旨公表(1/5)→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小示唆→織り込み増加
- 経済
- 暖房用と米経済回復による原油需要拡大→需要ひっ迫警戒感→原油価格上昇→インフレ高進懸念→米利上げ織り込み→米国債金利上昇
- 米国債利回り急上昇、22年最初の取引-早期利上げ観測強まるとの見方(1/4, Bloomberg)
- 米国インフレが一時的(transitory)でなく持続的:エネルギー需要増&供給不足、労働賃金上昇→利上げ観測前進
- 米国ADP雇用者数が強い数値(1/5)→米国雇用統計(1/7)期待感で織り込み増加
- 米国雇用統計(1/7):失業率と平均時給が良好→インフレ懸念
- 要人発言
- 米国金融当局者の相次ぐタカ派発言。しかしながら、最近はドル売りで反応することも多く、材料としての判断が難しい。
- 新型コロナ
- オミクロン株はデルタ株に比べて重症化事例が少ない→経済活動回復期待
- ワクチンや経口薬開発が進んでいる→経済活動回復期待
ドル売り材料
- 経済
- 米国貿易赤字が過去最大規模
- 米国雇用統計(1/7):非農業部門雇用者数が大幅減
- 新型コロナ
- オミクロン株の感染拡大や重症化リスクが払拭されていない→経済活動停滞や景気回復鈍化懸念→利上げ時期後退の可能性
- オミクロン株はデルタ株より入院率は低いが医療システム逼迫懸念
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係やウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化
円買い材料
- 金融政策
- 日銀、量的緩和じわり修正 国債保有残高13年ぶり減少(1/5, 日経新聞):弱いながらも実質的なテーパリングとも考えられる。
- 米国FOMC議事要旨公表(1/5)→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小示唆→株価下落→リスクオフ
- 米国雇用統計(1/7):失業率と平均時給が良好→インフレ懸念→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小の前進→株価下落→リスクオフ
- パウエル米FRB議長再任指名承認公聴会(1/11):インフレ対策として利上げとバランスシート縮小について言及あり。発言後は「警戒したほどタカ派的な内容ではなかった」ことでドル売りとなりましたが、本質的にはドル買い材料と考えます。
- 新型コロナ
- 世界中で新型コロナのオミクロン株感染拡大:英国やドイツでもロックダウンが実施されるようなら株価下落でリスクオフ円買いあり得る。
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係やウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化
円売り材料
- 金融政策
- 2021.12.17 日銀金融政策決定会合で、金融緩和継続方針の決定
- 日本以外でテーパリングや利上げ実施する国が増加→円を売って海外通貨買って利回りが良い海外国債などに投資した方が良い
- 要人発言
- 2021.12.17 日銀金融政策決定会合で、黒田総裁が円安容認発言→発言直後、円売りが強まりドル円上昇となった。
- 経済
- 原油など資源価格高騰→輸入物価上昇→資源輸入への支払い増→日本の経常収支悪化
- 新型コロナ
- 日本国内での新型コロナ感染急拡大
- IMM通貨先物
- 1/4時点、円ショートポジション拡大
テクニカル分析
ドル円チャート
- 月足: 陰線に転換。下値目処は月足押し安値113.041。上値目処は2017年1月の118円台前半。
- 週足: 大陰線形成中。日足押し安値114.325と週足レジサポがほぼ同じ位置となっているため、この辺りから強い反発はあり得ます。114.325を下抜ければ下値目処は月足押し安値113.041で週足20MAと重なる位置。
- 日足: 下落目処は20MA付近の114.787一気に抜けて、次の押し安値114.325手前に到達。週足レジサポがほぼ同じ位置であることから、一旦は反発しやすい。
114.325下抜ければ、下値目処はラウンドナンバー114.000付近の114.074。その下は、113.573と考えます。 - 4H足: 日足押し安値114.325直下に、4H足200MAあり。よって、反発に注意したい位置。
- 1H足: 強い下降トレンドでしたが引け間際にトレンドライン上抜けてレンジ推移になりました。V字で大きく切り返しつつありますが、日足押し安値114.787超えたらロング狙い。レンジ下限114.388下抜けたらショート狙いとします。
- 15M足: レンジ。戦略は1H足と同じ。
シナリオ:
①日足押し安値114.787上抜けたらロング狙い。上値目処は4H足抵抗115.090、抜ければ日足抵抗とチャネル上限が重なる115.391。
②1H足レンジ下限114.388かつ日足押し安値114.325を下抜ければショート狙い。下値目処は日足押し安値114.074、抜ければ113.573。
【考察】
21:30にドル円シナリオ②合致して、1H足レンジ下限114.388かつ日足押し安値114.325を下抜け。
しかしながら、 「ダウ先物上昇継続→円売りになりやすい」、「米国債2年利回り上昇、10年利回り低下→ドル買い方向性判りにくい」、更に注目の米国PPI発表が迫っているため、エントリーは見送りました。
22:30 米国指標発表後もドル円の方向性が不明確で、1H足や15M足レベルでレンジ形成。結果的には②下値目処114.074到達しましたが、今のスキルではエントリータイミングが合わなかったためスルーで正解だったと思います。
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