ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
注目材料
1. 米利上げ
3月FOMCで0.25%の利上げ予想が現在のコンセンサスですが、1/16に1/18のBloomberg報道で0.50%利上げが必要との主張も出てきました。3月0.50%利上げが実施されればサプライズとなり、リスクオフ円買いが強くなり、ドル円急落の可能性があると考えます。
現在、「米利上げ期待→米長短金利上昇→ドル買い」だけでなく、利上げ警戒で「日米先物、株価指数下落→円買い」、つまり「ドル買い円買い」が同時に発生することが多いです。
今週のNYマーケットはレンジ相場ですが、本日もドル円の方向性が分かりにくい状況が続きそうです。よって、前日同様、様子見で終える日になりそうです。
2.1/18 ホワイトハウスから「ロシアはいつでもウクライナを攻撃する可能性がある」「非常に危険な状況」との報道がありました。
1/19には安全資産のゴールドが突如急騰しましたが、この地政学リスクを反映した可能性があります。
突発的な報道で、「地政学リスク→強い円買い→ドル円下落」に要注意です。
3.米国主要企業決算発表
インフレや供給制約が意識される中でも、米国企業の業績良好であれば日本株の支援材料になると期待されます。本日も決算結果と米株価の動きに注意が必要です。
注目は、アメリカン航空、ネットフリックスです。
マーケットの動き
東京マーケット前
7:00 取引開始時間
・ドル円始値:114.310
・ドルインデックス:95.607
・米国債利回り: 2年1.047%、10年1.866%
8:50 経済指標
日本通関ベース貿易収支12月度
(季節調整前)前回-9548億円、予想-7876億円、結果-5824億円
(季節調整済)前回-4868億円、予想-7441億円、結果-4353億円
【考察】
前回かつ予想より赤字幅が縮小しており、日本株への好材料です。
東京マーケット(9:00~15:00)
9:00 オープン
・ドル円:114.348
・日経平均株価:27401.43。日本通関ベース貿易収支のためか上昇スタート。
・TOPIX:1916.58。上昇スタート
・ダウ先物:34938。
9:55 五十日仲値
【見通し】
取引時間開始からドル円上昇し、15M足レベルで20MA反発などの上昇サインが生じれば五十日仲値に向かってロング可と考えます。
【考察】
五十日仲値に向けてドル円上昇していましたが、突然仲値前から失速。
「時間外米国債利回り2年,10年低下→ドル売り」、「日経平均株価、ダウ先物下落→円買い」となりドル円急落しました。
10:17 報道
中国人民銀行、LPR引下げ決定
中国不動産市場で打撃を受けた景気支援策として、1/17中期貸出制度(MLF)引き下げに加えて、最優遇貸出金利(LPR: ローンプライムレート)引き下げ。
【考察】
「中国景気悪化のための金融緩和策→米国、日本経済にも悪影響の可能性→ダウ先物・日経平均株価下落→円買い」、「米国債利回り2年,10年動きなしでもドル売り」、ドル売り円買いでドル円下落が継続しました。しかし、ラウンドナンバー手前で指値買いも多く、114.026下げ止まって反発に転じました。
15:00 クローズ
・ドル円:114.472
・ドルインデックス:95.558
・米国債: 2年利回り1.064%、10年利回り1.861%
・日経平均株価:27772.93(前日比+305.70)
・TOPIX:1938.53(前日比+18.81)
・日経先物:27775
・ダウ先物:35039
欧州マーケット(17:00~1:30)
17:00 オープン
・ドル円:114.395
・ドルインデックス:95.488
・米国債: 2年利回り1.049%、10年利回り1.850%
・日経先物:27775
・ダウ先物:35046
22:30 経済指標
米国フィラデルフィア連銀景況指数: 前回15.4、予想19.0、結果23.2
【見通し】
1/18発表のニューヨーク連銀製造業景気指数と同様の指標ですが、そちらはサプライズのマイナス値。
よって、フィラデルフィア連銀景況指数もネガティブサプライズに要警戒です。
ニューヨーク連銀製造業景気指数発表時、ドル円は下落で反応しましたが、来週FOMC控えているためか、今週は指標結果の良し悪しに関わらずトレンドが出にくく、反応が出ても一時的です。
よって、指標結果を見てのトレードには適していない環境だと考えます。
22:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数: 前回23.0万件、予想22.5万件、結果28.6万件
米国失業保険継続受給件数 : 前回155.9万件、予想158.0万件、結果163.5万件
【見通し】
前回の新規失業保険申請件は2021年11月以来の高い数値でしたが、失業保険継続受給件数が低い数値でした。指標発表後の考え方は、同刻の米国フィラデルフィア連銀景況指数と同じで、結果を確認するだけに留めた方が良さそうです。
【考察】
フィラデルフィア連銀製造業景気指数はサプライズの強い数値であった一方、新規失業保険申請件数がサプライズの弱い数値となりました。
新規失業保険申請件数が2021年10月以来の弱さとなったことで、来月の米国雇用統計悪化も懸念されます。新型コロナ変異オミクロン株の重症化は少ないとは言え、感染拡大による労働市場への打撃が生じているようです。
そのためか、「米国債利回り2年,10年低下→ドル売り」、円買いでラウンドナンバー114.000まで急落しました。
しかし、東京マーケットで付けた114.026とラウンドナンバー114.000ではショート勢の利確も入るため反発中。
米国2021年度第4四半期決算発表
【見通し】
「米企業決算良好→ダウ先物上昇→円売りドル買い」と「米国債2年,10年利回り上昇→ドル買い」→ドル買い円買い→ドル円上昇。NYオープンから米国株価指数の上昇期待あり
アメリカン航空
売上:予想93.7億ドル、結果94.0億ドル
EPS*:予想-1.54ドル、結果-1.42ドル
*EPS(一株当たり利益)とは、Earnings Per Shareの略
EPS= 当期純利益(税引後利益) ÷ 発行済み株式数(自社株含まない)
オミクロン株感染拡大の影響がありつつも予想より良い結果となりました。この結果を好感すれば、米国主要3指数上昇に繋がりそうです。
NYマーケット(23:30~6:00)
【見通し】
1/25~26のFOMCを控えてFRB当局者が金融政策についての発言を禁じられるブラックアウト期間に入り金融引き締めが警戒されるような材料は出にくくなる見込みです。
しかし、FOMCに向けての米利上げ織り込みで「米国債利回り上昇→ドル買い」と「米株価指数下落→円買い」が考えられます。ドル買い円買いとなればドル円の方向性が定めにくいため様子見します。
23:30 オープン
・ドル円:114.124
・ドルインデックス:95.545
・米国債利回り: 2年1.045%、10年1.831%
・原油先物WTI:85.77
・日経先物:27775
・ダウ先物:35013
・ダウ平均:35113.71。上昇スタート。
・S&P500:4551.56。上昇スタート。
・ナスダック:14462.85。ギャップアップスタート。
0:00 経済指標
米国中古住宅販売件数 12月度:前回646万件(改定648万件)、予想644万件、結果618万件
【見通し】
1/19の米国住宅着工件数と米国住宅建築許可件はサプライズの高い数値で一時的にドル円上昇しました。同じ住宅関連指標の米国中古住宅販売件数で高い数値が出ても不思議ではありません。
【見解】
①サプライズの弱い数値。「米国債利回り2年上昇、10年低下→長期より直近の利上げ警戒でドル買い」「米国主要3指数は小幅下落→円買い」、「ドル買い円買い」でしたが、通貨強弱「円>ドル」によってドル円下落し、ラウンドナンバー114.000も下抜けしました。
②ドル円エントリーについて
・OANDAラボのオープンオーダーでは、0:00時点にラウンドナンバー114.000付近に指値買いが多く、逆指売りは少なめでした。やはり、114.000はレジスタンス候補だったと思います。
・指標結果が悪いとは言え注目度が高くはない。
・114.000付近は4H足1H足チャネル下限に重なる
よって、結果的に113.963まで下落しましたが、ドル円ショート狙うにはリスクが高かったと考えます。
1:00 経済指標
米国週間石油在庫統計
(原油在庫):前回-455.3万バレル、予想-175.0万バレル、結果51.5万バレル
(ガソリン在庫):前回796.1万バレル、予想260.0万バレル、結果597.3万バレル
【見通し】
原油先物価格(WTI)85ドル台まで上昇を続けています。
「原油、ガソリン在庫減となれば原油先物価格上昇に拍車→インフレ高進懸念→米利上げ織り込み→米国債金利上昇→ドル買い材料」を想定します。
【考察】
①在庫積み増し。初動からWTI下落すると思いましたが、直前まで強い上昇だったためかオーバーシュートで87.1を付けた後に1:30から下落に転じました。
「WTI下落→インフレ懸念後退→米国債利回り2年動かず10年小幅下落→ドル買い継続」、「米国主要3指数下落→円買いでなく円売り」。整合性が見えない「ドル買い円売り」でドル円上昇転換の起点となりました。
②ドル円エントリーについて
整合性が見えない「ドル買い円売り」のドル円上昇でしたので様子見のみ。
6:00 クローズ
・ドル円:114.199
・ドルインデックス:95.855
・米国債利回り: 2年1.047%、10年1.824%
・原油先物WTI:84.63
・日経先物:27520
・ダウ先物:34605
・ダウ平均:34715.39(-313.26, -0.89%)
・S&P500:4482.73(-50.03, -1.10%)
・ナスダック: 14154.02(-186.23, -1.30%)
前日同様、引けが近づくにつれて米国主要3指数急落。
6:00 米国2021年度第4四半期決算発表
ネットフリックス
売上:予想77.1億ドル、結果77.1億ドル
EPS:予想1.33ドル、結果1.33ドル
ガイダンス(来期以降の決算に対する企業側の見解)
EPS:予想3.45ドル、結果2.86ドル
売上:予想80.8億ドル、結果79億ドル
【考察】
決算結果は良かったものの、ガイダンスが弱かったことでネットフリックス株価が時間外で約20%超え下落。日経平均株価への影響が気になります。
通貨強弱
引け時点の通貨強弱順位
1. AUD(資源国リスクオン通貨):2日連続1位
2. JPY(リスクオフ通貨):前日2位
3. CAD(資源国リスクオン通貨):前日8位
4. USD(基軸通貨):前日7位
5. GBP(リスクオン通貨):前日6位
6. CHF(リスクオフ通貨):前日4位
7. EUR(リスクオン通貨):前日5位
8. NZD(資源国リスクオン通貨):前日3位
AUDとJPYが連日強く、リスクオンとリスクオフが入り混じって方向性が分かりにくい日でした。
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
米国債イールドカーブ
・2021年1月FOMCから、2022年1月までに利回りが大きく上昇している
(特に短期、中期)
・2021年12月FOMCには、20年と30年利回りが逆イールドしており、現在も継続中
・2022年1月FOMC議事要旨公表後も利回り上昇中
・1/20(木)は1/19(水)とほぼ同じカーブ
材料まとめ
ドル買い材料
- 金融政策
- 政策金利:2021.12.15 FOMCで2022年末までに0.25%ずつ3回利上げ方針
- 米国FOMC議事要旨公表(1/5)→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小示唆→織り込み増加
- 経済
- 暖房用と米経済回復による原油需要拡大→需要ひっ迫警戒感→原油価格上昇→インフレ高進懸念→米利上げ織り込み→米国債金利上昇
- 米国債利回り急上昇、22年最初の取引-早期利上げ観測強まるとの見方(1/4, Bloomberg)
- 米国インフレが一時的(transitory)でなく持続的:エネルギー需要増&供給不足、労働賃金上昇→利上げ観測前進
- 米国ADP雇用者数が強い数値(1/5)→米国雇用統計(1/7)期待感で織り込み増加
- 米国雇用統計(1/7):失業率と平均時給が良好→インフレ懸念
- 米国企業決算が全体的に良好
- 要人発言
- 米国金融当局者の相次ぐタカ派発言。一般的にはドル買い材料のはずですが、最近はドル売りで反応することも多く、材料としての判断が難しい。
- 新型コロナ
- オミクロン株はデルタ株に比べて重症化事例が少ない→経済活動回復期待
- ワクチンや経口薬開発が進んでいる→経済活動回復期待
- FDAワクチン諮問委員:オミクロン株のピークは2~3週間の見込み
ドル売り材料
- 政治、経済
- 米国貿易赤字が過去最大規模
- 米国雇用統計(1/7):非農業部門雇用者数が大幅減
- 米国小売売上高(1/14):サプライズの弱い数値。米国GDP悪化の懸念大。
- 世界経済が回復する中、欧州株、アジア新興市場株や債券、資源国通貨、金や銀に資産を移すべきとのマネーマネージャーが増えているとの報道(1/13, Bloomberg)
- 新型コロナ
- オミクロン株の感染拡大や重症化リスクが払拭されていない→経済活動停滞や景気回復鈍化懸念→利上げ時期後退の可能性
- オミクロン株はデルタ株より入院率は低いが医療システム逼迫懸念
- 米国内のワクチン接種率向上しない、マスクをしない人も多い→感染拡大で人員不足
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係やウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化:ロシアとNATOが協議を重ねたが妥協点に到達できず
円買い材料
- 金融政策
- 日銀、量的緩和じわり修正 国債保有残高13年ぶり減少(1/5, 日経新聞):弱いながらも実質的なテーパリングとも考えられます。
- 米国FOMC議事要旨公表(1/5)→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小示唆→株価下落→リスクオフ
- 米国雇用統計(1/7):失業率と平均時給が良好→インフレ懸念→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小の前進→株価下落→リスクオフ
- パウエル米FRB議長再任指名承認公聴会(1/11):インフレ対策として利上げとバランスシート縮小について言及あり。発言後は「警戒したほどタカ派的な内容ではなかった」ことでドル売りとなりましたが、本質的にはドル買い材料と考えます。
- 要人発言
- 山際経済再生大臣「新しい資本主義は株価を意識しません」(1/13, プライムニュース)
- 新型コロナ
- 世界中で新型コロナのオミクロン株感染拡大:英国やドイツでもロックダウンが実施されるようなら株価下落でリスクオフ円買いあり得る。
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係やウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化。1/18 ホワイトハウス「ロシアはいつでもウクライナを攻撃する可能性がある」「非常に危険な状況」
- 北朝鮮の軍事行動:ミサイル発射は1月に4回
円売り材料
- 金融政策
- 2021.12.17 に引き続き、2022.1.18日銀金融政策決定会合で、政策金利-0.1%維持、金融緩和継続、必要なら追加緩和方針。
- 日本以外でテーパリングや利上げ実施する国が増加→円を売って海外通貨買って利回りが良い海外国債などに投資した方が良い。
- 要人発言
- 2021.12.17 日銀金融政策決定会合で、黒田総裁が円安容認発言→発言直後、円売りが強まりドル円上昇となった。
- 2022.1.18 日銀金融政策決定会合で、黒田総裁「利上げや緩和的な政策変える必要ないし議論もない」
- 経済
- 原油など資源価格高騰→輸入物価上昇→資源輸入への支払い増→日本の経常収支悪化
- 新型コロナ
- 日本国内での新型コロナ感染急拡大(1/19, 全国で初の4万人超感染)
- 日本政府 「まん延防止等重点措置」 13都県に1/21から適用。期間は1月21日から2月13日の約3週間。25日には8都府県追加予定。
- トヨタが従業員の感染拡大で国内で最大11工場停止(1/20, 日経新聞)
- IMM通貨先物
- 1/11時点、円ショートポジション拡大
テクニカル分析
ドル円チャート
- 月足: トレンドラインで反発し上昇トレンド継続中。直近4カ月で見れば綺麗なダウ形成中。下値目処は月足押し安値113.051。上値目処は2017年1月の118円台前半。
- 週足: トレンドラインで反発かつレジサポライン114.212で踏み留まっており、上ヒゲピンバー形成中。上値目処は115.534。下値目処は押し安値112.774。
- 日足: 下降トレンド中であり、トレンドライン上抜けまで下目線。下値目処114.128、その下はヒゲ先付近113.571(4H足実体下限)。
- 4H足: レンジ推移。4H足押し安値114.466抜ければ下値目処114.128まで一気に落ちると考えていましたが114.223が堅く戻しも大きい。
トレンドラインかつ115.092やラウンドナンバー115.000上抜けで上値目処は日足戻り高値115.274。
押し安値114.128抜ければ下値目処113.571。 - 1H足: チャネル推移。戦略は4H足と同じ。
- 15M足: レンジ推移。ボリンジャーバンドがスクイーズしながら、20MAと114.223に挟まれている。抜けた方向に一気に伸びる可能性あり。戦略は4H足と同じ。
【シナリオ】前日より4H足以下がレンジ範囲が広がりブレイクアウト待ち。
(A)4H足トレンドラインかつ115.092やラウンドナンバー115.000上抜けでロング狙い。上値目処は日足戻り高値115.274。
(B) 4H足押し安値114.128抜ければショート狙い。下値目処113.571。
【考察】
シナリオ(B)で推移中ですが、OANDAラボのオープンポジションでラウンドナンバー114.000付近の買い指値の多さからエントリーしにくい環境でした。
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