ドル円トレードだけでなく、今後他通貨やコモディティー取引に向けて、幾つかの通貨の材料も少しづつまとめたいと思います。
今の時点では、集めた材料のほとんどはドル円動きの後付けとなっており、トレードに活かせていませんが、少なくとも世界の政治や経済等の勉強にもなると割り切って整理します。
ドル(USD)
ドル買い材料
- 金融政策
- FOMC(1/26):政策金利据え置き、但し、金融引き締めに前向きな見解(3月テーパリング終了確定、3月利上げほぼ確実)。市場では3月0.5%利上げ観測や年内利上げ5回以上予想あり。
- 通常の金融調節で指し値オペを通知(2/14):落札額ゼロであったものの、日本10年国債利回り上昇牽制→日米金利差拡大期待。
- 政治、経済
- 暖房用と米経済回復による原油需要拡大→原油価格上昇→インフレ高進
- 原油先物価格上昇基調→ドル建て決済のために他国のドル需要増
- エネルギー需要増&供給不足、労働賃金上昇
- 米企業決算総じて良好
- 米国生産者物価指数(PPI)1月度(2/15):前回かつ予想よりサプライズの強い数値
- 米国小売売上高1月度(2/16):前回かつ予想よりサプライズの強い数値
- 米国住宅建築許可件数1月度(2/17):前回かつ予想より強い数値
- 米国中古住宅販売件数1月度(2/18):前回かつ予想より強い数値
- 要人発言
- パウエルFRB議長会見(1/26):「利上げとバランスシート縮小可能」「毎回のFOMC会合で、利上げする可能性を排除しない」「金利を引き上げる余地はかなりある」
- 米国デーリー・サンフランシスコ連銀総裁(2/9):3月利上げ見通し
- 米国ボスティック・アトランタ連銀総裁:「できるだけ早期のバランスシート縮小開始を望む」
- 米国ブラード・セントルイス連銀総裁(2/10, 2/14, 2/17):「7月1日までに合計1ポイントの政策金利引き上げを支持」
- 米国メスター・クリーブランド連銀総裁(2/18):「バランスシートの縮小は前回を上回るペースで行うのが適切」
- 米国エバンズ・シカゴ連銀総裁(2/18):「金融政策に大幅な調整が必要」
- 米国ブレイナードFRB理事(2/18):「3月会合での利上げとバランスシート縮小支持」
- 新型コロナ
- 米国での新型コロナウイルス感染者減少に伴って経済正常化への期待感
- 地政学リスク
- ウクライナへロシア侵攻すれば米国制裁→ロシア産原油のドル建て決済不可→原油先物価格上昇→インフレ加速
ドル売り材料
- 金融政策
- FOMC1月議事要旨(2/16):「バランスシート縮小の必要性に言及があったものの、明確なガイダンスなし」。想定されたようなタカ派的な内容なし。
- 政治、経済
- 米国貿易赤字が過去最大規模
- 世界経済が回復する中、欧州株、アジア新興市場株や債券、資源国通貨、金や銀に資産を移すべきとのマネーマネージャーが増えているとの報道(1/13, Bloomberg)
- 気候変動・社会保障関連歳出法案:マンチン上院議院反対で採決先送り
- 米国債利回り2年,10年差縮小:FRB利上げが景気減速・後退をもたらすリスク
- 米中貿易戦争:米商務省、「輸出注意リスト」に中国33企業・団体追加
- 米国ニューヨーク連銀製造業景気指数2月度(2/15):予想より弱い数値。
- 米国フィラデルフィア連銀景況指数2月度(2/17):前回かつ予想より弱い数値。
- 米国住宅着工件数1月度(2/17):前回かつ予想より弱い数値。
- 米国新規失業保険申請件数(2/17):予想外の増加。3月米国雇用統計悪化の可能性あり。
- 米国景気先行指数1月度(2/18):前回かつ予想より弱い数値。
- 要人発言
- 米国デーリー、サンフランシスコ連銀総裁(2/14): 米利上げ軌道、慎重かつデータに基づく判断が肝要-SF連銀総裁(Bloomberg)。超タカ派発言牽制
- 米国ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁(2/18):「最初に大きな一歩を踏み出すべきだとの説得力ある論拠は見られない」
- 新型コロナ
- 米国内のワクチン接種率向上しない、マスクをしない人も多い→感染拡大で人員不足
- 米国内のワクチン接種率向上しない、マスクをしない人も多い→感染拡大で人員不足
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係悪化
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化
- ロシア、米国、NATOの協議不調。ロシアのウクライナ侵攻の懸念増大
- ロシア制裁でドル決済が使えなくなったら、ロシアはドル売り中国人民元買いの可能性
米利上げ期待とウクライナ情勢悪化リスクオフでドルは買い材料が優勢と推測します。
円(JPY)
円買い材料
- 金融政策
- 日銀、量的緩和じわり修正 国債保有残高13年ぶり減少(1/5, 日経新聞):弱いながらも実質的なテーパリング
- 政治、経済
- 長期金利が一時0.185%(2016年1月以来):2/1から大手銀行5行が10年固定の住宅ローン基準金利を0.05~0.10%引き上げ。
- 要人発言
- 岸田首相発言「新しい資本主義」:投資家軽視→リスクオフ株価下落
- 神田財務官:悪い円安への牽制発言
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化
- 北朝鮮の軍事行動:ミサイル発射は1月に6回
円売り材料
- 金融政策
- 日銀金融政策決定会合(1/18):政策金利-0.1%維持、金融緩和継続、必要なら追加緩和。
- 日銀経済・物価情勢の展望(1/18):予想よりハト派的
- 日本以外でテーパリングや利上げ実施する国が増加→円を売って海外通貨買って利回りが良い海外国債などに投資した方が良い。
- 通常の金融調節で指し値オペを通知(2/14):落札額ゼロであったものの、日本10年国債利回り上昇牽制→日米金利差拡大期待。
- 政治、経済
- 原油など資源価格高騰→輸入物価上昇→資源輸入への支払い増→日本の経常収支悪化
- 日本通関ベース貿易収支1月度(2/17):貿易赤字拡大
- 日本消費者物価指数1月度(2/18):インフレ懸念後退
- 要人発言
- 日銀黒田総裁(1/18):「2%目標達成前の利上げや緩和的な政策変える必要ないし議論もない」」
- 新型コロナ
- 日本政府 「まん延防止等重点措置」期間延長あり
- IMM通貨先物
- 2/15時点、円ショート拡大(ネット-59,148→ – 66,162 、前週比- 7,014)
総じて、円は売り材料が優勢と推測しますが、 但し、2/11に発生したウクライナ情勢悪化のリスクオフ円買いが再び起こる可能性もあります。
ユーロ(EUR)
ユーロ買い材料
- 金融政策
- ECB理事会(2/3):現状の金融政策維持だが、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を予定通り2022年3月終了と決定。
- 政治、経済
- 独雇用統計:前回かつ予想より良好。
- 欧雇用統計12月度(2/1):前回かつ予想より良好
- 欧消費者物価指数(HICP)速報値1月度(2/2):前年比5.1%上昇と予想の4.4%上昇を大幅に上回り、過去最大を記録。エネルギー価格高騰が押し上げ要因、食品価格も急上昇。サービスと工業製品も高止まり。
- 要人発言
- 欧州ラガルドECB総裁(2/3):インフレリスクへ言及、今年の利上げ否定せず→タカ派
- オランダクノット中銀総裁(2/7):早ければ10月に利上げと予想
- 独ナーゲル連銀総裁(2/9):「3月までにインフレの状況が変わらなければ、金融政策の正常化を主張する」
- ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト(2/9):「今後数カ月で複数回の利上げを予想」
- ECB当局者(2/18):資産購入を9月終了することで一致し、多くのメンバーが年内利上げに傾いている
- 新型コロナ
- WHO欧州地域事務局長:新型コロナのパンデミックは欧州での終わりが近い考え。集団免疫達成でリスク度合い低下の可能性。アイルランドやフランスの一部規制緩和。
- IMM通貨先物
- 2/15時点、ユーロロング拡大(ネット+38,842→+ 47,581、前週比+ 8,739):ECB金融政策(2/3)がタカ派転換したことでユーロ買いが進んでいるよう。
ユーロ売り材料
- 金融政策
- 政治、経済
- 英国とEUの北アイルランド議定書議論難航
- ドイツエネルギー当局:ノルドストリーム2(独露間をつないだ天然ガスパイプライン)稼働前の認証プロセス停止→天然ガス価格高騰→ユーロ圏景況悪化懸念
- 欧製造業PMI 1月度(2/1):前回かつ予想より弱い数値独製造業PMI 1月度(2/1):前回かつ予想より弱い数値
- 独鉱工業生産12月度(2/7):前月比と前年比、ともに前回かつ予想より弱い数値
- 要人発言
- フィンランド中銀のレーン総裁(2/5):遅くとも来年の利上げが「理にかなう」
- ラガルドECB総裁(2/7):「インフレは短期的に高水準を維持する可能性が高い」「ボトルネックは緩和の兆候が見られる」「国債買い入れが終了するまでは利上げしない」「いかなる政策調整も段階的になる予定」
- 新型コロナ
- 地政学リスク
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化:ロシアとNATOが協議を重ねたが妥協点に到達できず。ロシアのウクライナ侵攻の懸念、ロシアの天然ガス供給抑制懸念
ウクライナ情勢悪化の一途でユーロ売り優勢。
ポンド(GBP)
ポンド買い材料
- 金融政策
- 英中銀(BOE)金融政策決定会合(2/3):0.25%から0.50%への追加利上げ決定。4人が0.75%への利上げを主張。
- 短期金融市場がBOE0.5%利上げ織り込み(2/12, Bloomberg)
- 政治、経済
- 新型コロナ
- 英政府は新型コロナ制限措置を解除
- IMM通貨先物
- 2/15時点、ショートからロングに転換(ネット-23,605→-8,545→+ 2,237、前週比+ 10,782):英中銀金融政策(2/3)がタカ派的になったことで一気にショート縮小のよう。
ポンド売り材料
- 金融政策
- 政治、経済
- 北アイルランド議定書の効力停止懸念(非公式期限2月末)
- 英首相官邸のロックダウン期間中パーティーで、ジョンソン首相支持率急落、与党保守党も支持率低下、退陣要求(2/7, Bloomberg)
- 要人発言
- ベイリーBOE総裁(2/3):「金利が長期的に上昇すると推測することは誤り」→ポンド高牽制
- ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員(2/4):「積極的に利上げをするとは予想しない」→ポンド高牽制
- IMM通貨先物
- 2/1時点、ショート大幅拡大(ネット-7,763→-23,605、前週比-15,842):英中銀金融政策(2/3)がタカ派的になるとは想定されずにショート増になったのか。だとすれば、次週は一気にショート縮小する可能性ありそう。
英中銀利上げ期待から総じてポンドは買い材料が優勢と推測します。
豪ドル(AUD)
豪ドル買い材料
- 金融政策
- 政治、経済
- 中国人民銀行が最優遇貸出金利(ローンプライムレート)引き下げ→中国経済回復期待→中国経済の影響を大きく受ける豪州経済回復
- 要人発言
- ロウRBA総裁(2/1):理事会後の講演で「何年もの間で初めて雇用とCPIの目標が見えてきた」
豪ドル売り材料
- 金融政策
- 豪準備銀行(RBA)政策決定会合(2/1)
- 政策金利据え置き、2月で債券購入プログラム決定
- 声明文:「量的緩和(QE)の終了は利上げを意味するものではない」「インフレ率が2-3%の目標範囲内に収まるまで政策金利を引き上げない」→利上げ慎重姿勢
- 豪準備銀行(RBA)政策決定会合(2/1)
- 政治、経済
- 豪小売売上高12月度(2/1):前回かつ予想を大きく下回るサプライズに弱い数値。
- 地政学リスク
- ウクライナ情勢が緊迫化:米国株下落の影響でリスクオフ
- IMM通貨先物
- 2/15時点、ショート拡大(ネット-79,829→-85,741→- 86,694、前週比- 953)
ウクライナ情勢が緊迫化による株価下落の影響で豪ドルは売り材料が優勢と推測します。
カナダドル(CAD)
カナダドル買い材料
- 金融政策
- カナダ中銀(BOC)金融政策会合(1/26):政策金利0.25%据え置いたものの、「貸出金利の引き上げは行わない」文言削除→今後の金融引き締め示唆。3月会合での0.50%利上げ織り込み、年内5回利上げ予想
- 政治、経済
- 冬季の原油供給逼迫→原油先物堅調
- OPEC+の閣僚級会合:3月の原油生産に日量40万バレルの増産にとどめ追加の増産は見送り。原油先物WTI 90ドル超え
- カナダ消費者物価指数1月度(2/16):前年比+5.1%は約30年ぶりの高い伸び
- 市場は3/2会合で利上げ織り込み、今後1年間で最大6回の追加利上げも織り込み(2/10, Bloomberg)
- 要人発言
- マックレムBOC総裁(1/26):「インフレ抑制のため、金利を引き上げる必要がある」「金利上昇を明確に示したい」「BOCはオミクロンの影響を考慮して金利を据え置いた」
- 新型コロナ
- オミクロン株重症化リスク低い→景気回復に伴るエネルギー需要増→原油相場堅調
- 地政学リスク
- ウクライナ情勢緊迫化:供給不安→原油だけでなく天然ガス価格高騰→OPEC+へ追加増産圧力増
カナダドル売り材料
- 金融政策
- BOC政策金利0.25%据え置き(1/26):市場で利上げ織り込んでいたため期待外れ
- 政治、経済
- 新型コロナ対策規制などに対する抗議デモへの緊急事態法を初の発動(2/14)
- IMM通貨先物
- 2/15時点、ロング縮小(ネット +18,264→+14,886→+ 12,170、前週比- 2,716)
利上げと原油先物価格堅調からカナダドルは買い材料優勢と推測します。
人民元(CNH)
人民元買い材料
- 政治、経済
- 中国春節明け、中国株が大幅上昇、オフショア値上がりに追随
- 地政学リスク
- ウクライナへロシア侵攻すれば米国制裁→ロシア産原油のドル建て決済不可→ロシアがドル売り、友好的国の中国人民元買いに向かう可能性
人民元売り材料
- 金融政策
- 中国人民銀行が最優遇貸出金利(ローンプライムレート)引き下げ
- 政治、経済
- 中国実質GDP第4四半期、小売売上高12月度鈍化
- 中国製造業PMI低下
- 中国春節休暇中、コロナで移動控えた影響で観光収入が前年割れ
中国景気後退の影響で人民元は売り材料優勢と推測します。
原油
原油買い材料
- 政治、経済
- 冬季の原油供給逼迫、主要国の景気回復:原油先物堅調
- OPEC+の閣僚級会合:3月の原油生産に日量40万バレルの増産にとどめ追加の増産は見送り。原油先物WTI 90ドル超え
- 北海ブレント、一時94ドルと14年以来の高値(2/7, Bloomberg)
- 地政学リスク
- ウクライナ情勢緊迫化:需要増、供給不安→原油だけでなく天然ガス価格高騰→OPEC+へ追加増産圧力増
原油売り材料
- IMM通貨先物
- 2/15時点、ロング縮小(ネット+ 368,904→+363,383→+ 348,093、前週比- 15,290):ウクライナ情勢悪化で原油先物WTI価格が高値堅調推移にも関わらずロング縮小。原油供給増は考えにくいため、景気回復後退等での需要減が見込まれているのか。
各国のインフレ懸念、ウクライナ情勢悪化による原油先物価格堅調により原油買い優勢と推測します。
金
金買い材料
- IMM通貨先物
- 2/15時点、ロング大幅拡大(ネット+186,706→+ 213,613、前週比+ 26,907):ウクライナ情勢悪化のリスクオフを懸念で安全資産の金買いが増えている様。
金売り材料
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