ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
①注目材料(経済指標や要人発言)
注目は日銀金融政策決定会合と日銀黒田総裁会見です。
2021.12.17 日銀金融政策決定会合後の黒田総裁会見での円安容認発言によって、一時的に円売りが強まりドル円上昇となりました。
また、先週1/14Reutersからの利上げについて議論があったとの報道によって、今回の会合と会見に注目が集まっています。
従って、会合や会見ではドル円は動きにくいと考えます。しかし、会合や会見後にドル円上昇もしくは下落してもトレンドを生じるほどの動きになるとは考えにくいです。動いても全戻しがあり得ると思います。よって、大きな動きにならない限りは様子見に留めます。
②NYマーケット三連休け
三連休明けですが来週のFOMCに向けて動きにくく相場環境です。米利上げ織り込みで「米国債利回り上昇→ドル買い」と「米株価指数下落→円買い」が考えられます。ドル買い円買いとなればドル円の方向性が定めにくいため様子見します。
③米国主要企業決算発表
インフレや供給制約が意識される中でも、米国企業の業績良好であれば日本株の支援材料になると期待されます。
「米決算良好→米株価指数上昇→ドル買い」となればドル円上昇を想定します。
マーケットの動き
東京マーケット前
7:00 取引開始時間
始値114.610
東京マーケット(9:00~15:00)
9:00 オープン
始値114.575。円買い、「米国債利回り上昇から急落→ドル売り」、ドル円急落
日経平均株価:ギャップアップスタート。
11:47 経済指標
日銀金融政策決定会合
政策金利
前回-0.1%、予想-0.1%、結果-0.1%
【見通し】
先週1/14にReutersより「日銀はインフレ2%目標の達成前に利上げを開始できるか議論している」との飛ばしなのかリークなのか判らない報道が出ました。その後は続報なし。
11:49 日銀声明
「現在の大規模な金融緩和を維持」「必要なら躊躇なく追加緩和」「物価見通しのリスクは上下にバランスしている」
日銀経済・物価情勢の展望(展望レポート)公表
【見通し】
3か月に一度発表される経済物価情勢の展望レポートです。前回10月は消費者物価が徐々に上昇する一方、コロナが収まり景気回復が見込まれていた。残念ながら、コロナは収まるどころか感染拡大が続いており、景気回復には遠い。現在、消費者物価の上昇が強いことから、物価見通しに関心が集まっています。
【考察】
2022年の消費者物価指数(CPI、除く生鮮食品)見通しが+1.1%(10月+0.9%)に上方修正されました。
また、日銀金融緩和維持に変わりはないことから、欧米諸国との金融政策のスタンスの違いが明確になったったことで「日経平均株価上昇→円売り」。「日米金利差拡大期待→時間外米国債2年と10年利回り上昇→ドル買い」、「ドル買い円売り→ドル円急騰」
しかし、13:00頃から、
1/14Reuterの利上げ議論報道の反動で銀行や保険などの金融株が売りとなり、「日経平均株価急落→円買い」
「原油先物上昇→インフレ懸念高まり→時間外米国2年と10年利回り上昇→日経平均株価、ダウ先物下落→円買い」、強い円買いによってドル円下落。
15:14 報道
政府は1都12県にまん延防止等重点措置を適用する方針を決定。適用は1/21から3週間程度。
15:30 要人発言
日銀黒田総裁
【見通し】
2021.12.17 日銀金融政策決定会合後の黒田総裁会見では円安容認発言があり、直後に円売りが強まりドル円上昇となりました。
今回、先週1/14Reuters報道が事実かどうか、引き続き円安容認姿勢か否かに注目します。
シナリオ
①Reuters報道が事実であればややサプライズか。
今まで利上げの議論という発言はなかったと思いますので、議論しただけでも少し驚きかも知れません。「日本国債利回り上昇→日米金利差縮小の可能性→ドル売り」、「日経平均株価下落→円買い」、一時的にはドル円下落が想定できます。
②2021.12.17と同じく円安容認発言
「リスクオン→日経先物上昇→円売り」、更に「時間外の米国債利回り→ドル買い」となっていればドル円上昇すると考えます。
しかし、①もしくは②であってもトレンドが続くような動きにはなりにくいと推測します。一時的ドル円下落から全戻しの上昇もあり得ると考えます。
15:45 黒田日銀総裁
「現在の金融政策継続、修正しない」「利上げ議論していない(1/14 Reuters報道全否定)」「物価が2%へ向けて着実に上昇しているわけではない」
15:57 「悪い円安と考えていない」
「円安容認発言→円売り材料ですがやや円買い」、「先物(ダウ、日経)下落→円買い」、「米国債2年と10年利回り低下→ドル売り」となり、ドル円下落となりました。円安容認は想定通りだったことでSell the factの動きになったようです。
【考察】
日銀金融政策決定会合のドル円は初動はシナリオ②の動きでした。
また、黒田総裁発言でも「金融緩和変更なく、Reutersの利上げ報道全否定→円売り」でしたが、同時に「米国債2年と10年利回り低下→ドル売り」となり、ドル売り円売りでドル円小幅推移。
16:18 報道
ウクライナ、前大統領の逮捕も - 国家反逆容疑、対立激化へ
「地政学リスク→円買い材料」
17:17 報道(Bloomberg)
1/16とは別の運用会社の見解ではありますが、同じく米利上げ0.5%必要との話が出始めました。
欧州マーケット(17:00~1:30)
17:00 オープン
ドル円:114.875。15M足で長ヒゲでWトップを付けた後の下落中。
欧州株価(欧EUSTX50、独DAX、英FTSE):急落
先物(日経、ダウ):急落
米国債:2年と10年利回り下落中ですが週足以下は上昇トレンドであり、いつ切り返してもおかしくない。
18:23 報道
トヨタ 今年度生産計画 “900万台規模”の水準下回る見込み
【考察】
生産台数低下の要因は世界的な半導体不足とのこと。トヨタ生産が滞れば、日本の製造業への打撃が大きい。
「リスクオフ→1/19(水)の日経平均株価下落→円買い→ドル円下落」に警戒したい。
21:31 米国ゴールドマン・サックス・グループ2021年度第4四半期決算発表
売上:予想120億ドル、結果126.4億ドル
EPS*:予想11.76ドル、結果10.81ドル
* EPS(一株当たり利益)とは、Earnings Per Shareの略
EPS= 当期純利益(税引後利益) ÷ 発行済み株式数(自社株含まない)
「EPS高い→企業収益力高い」、「EPS低い→収益力低い」
【見通し】
インフレや供給制約が意識される中でも、米国企業の業績良好であれば日本株の支援材料になると期待されます。
【考察】
1/14のJPモルガン・チェース決算と同様にトレーディング収益減少が大きい。
「EPS悪化→リスクオフ→ダウ先物下落→円買い」。
22:30 経済指標
米国ニューヨーク連銀製造業景気指数 1月度:前回31.9、予想25.0、結果-0.7
【見通し】
ISM製造業景気指数の先行指標としても注目されています。2ヶ月連続で予想20台に対して結果は30以上となっており、今回も期待したいですが、新型コロナ変異オミクロン株の感染拡大の影響が大きく出ればサプライズで悪い結果もありえます。実際、1/14(金)米国ミシガン大学消費者信頼感指数1月度結果が前回かつ予想より低い結果となっていました。
【考察】
2020年06月が-0.2でしたから、コロナショック辺りに匹敵する弱い数値のサプライズ。
初動は「米国債2年と10年利回り低下→ドル売り」、「ダウ先物下落→円買い」でドル円下落。
しかしながら、サプライズとは言え、この指標結果だけで、来週のFOMCに向けた米利上げ期待が大きく後退するとは考えにくい。よって、トレンドが出るよう下落にはならず上昇に転じやすいと推測します。
NYマーケット(23:30~6:00)
三連休明け
【見通し】
1/25~26のFOMCを控えてFRB当局者が金融政策についての発言を禁じられるブラックアウト期間に入り金融引き締めが警戒されるような材料は出にくくなる見込みです。
しかし、三連休明けでFOMCに向けての米利上げ織り込みで「米国債利回り上昇→ドル買い」と「米株価指数下落→円買い」が考えられます。ドル買い円買いとなればドル円の方向性が定めにくいため様子見します。
23:30 オープン
ドル円:114.605。ドル買い円買い交錯し、レンジ推移中114.55~114.75。
米国債:2年利回り1.018%、10年利回り1.838%。共に下落スタート
米国主要3指数:ギャップダウンスタート。米利上げ警戒のよう。
24:00 経済指標
米国ホームビルダー協会(NAHB)住宅市場指数1月度
前回84、予想84、結果83
【見通し】
注目度は高くないため確認のみ。
2:33 報道
ホワイトハウス「ロシアはいつでもウクライナを攻撃する可能性がある」「非常に危険な状況」
【考察】
ドル円の反応をは見られませんが、報道内容は深刻さが伝わります。戦争になればリスクオフですが、当然避けてほしいですが。
6:00 経済指標
米国対米証券投資 11月度
前回71億ドル、結果1374億ドル
【見通し】
米国以外から米国証券に投資された金額を公表したもの。米国への資金フローが分かります。
【考察】
2021年3月以来の強い数値。「米利上げ期待→ドル買い→米国証券(株式や債券など)買い」を表していそうです。
6:00 クローズ
ドル円:114.624
米国債:2年利回り1.045%、10年利回り1.875%
米国主要3指数:
原油先物WTI:85.21ドル。7年3ヶ月ぶりの高値→インフレ懸念が高まりそうです。
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
米国債イールドカーブ
材料まとめ
ドル買い材料
- 金融政策
- 政策金利:2021.12.15 FOMCで2022年末までに0.25%ずつ3回利上げ方針
- 米国FOMC議事要旨公表(1/5)→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小示唆→織り込み増加
- 経済
- 暖房用と米経済回復による原油需要拡大→需要ひっ迫警戒感→原油価格上昇→インフレ高進懸念→米利上げ織り込み→米国債金利上昇
- 米国債利回り急上昇、22年最初の取引-早期利上げ観測強まるとの見方(1/4, Bloomberg)
- 米国インフレが一時的(transitory)でなく持続的:エネルギー需要増&供給不足、労働賃金上昇→利上げ観測前進
- 米国ADP雇用者数が強い数値(1/5)→米国雇用統計(1/7)期待感で織り込み増加
- 米国雇用統計(1/7):失業率と平均時給が良好→インフレ懸念
- 要人発言
- 米国金融当局者の相次ぐタカ派発言。一般的にはドル買い材料のはずですが、最近はドル売りで反応することも多く、材料としての判断が難しい。
- 新型コロナ
- オミクロン株はデルタ株に比べて重症化事例が少ない→経済活動回復期待
- ワクチンや経口薬開発が進んでいる→経済活動回復期待
- FDAワクチン諮問委員:オミクロン株のピークは2~3週間の見込み
ドル売り材料
- 政治、経済
- 米国貿易赤字が過去最大規模
- 米国雇用統計(1/7):非農業部門雇用者数が大幅減
- 米国小売売上高(1/14):サプライズの弱い数値。米国GDP悪化の懸念大。
- 世界経済が回復する中、欧州株、アジア新興市場株や債券、資源国通貨、金や銀に資産を移すべきとのマネーマネージャーが増えているとの報道(1/13, Bloomberg)
- 新型コロナ
- オミクロン株の感染拡大や重症化リスクが払拭されていない→経済活動停滞や景気回復鈍化懸念→利上げ時期後退の可能性
- オミクロン株はデルタ株より入院率は低いが医療システム逼迫懸念
- 米国内のワクチン接種率向上しない、マスクをしない人も多い→感染拡大で人員不足
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係やウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化:ロシアとNATOが協議を重ねたが妥協点に到達できず
円買い材料
- 金融政策
- 日銀、量的緩和じわり修正 国債保有残高13年ぶり減少(1/5, 日経新聞):弱いながらも実質的なテーパリングとも考えられます。
- 米国FOMC議事要旨公表(1/5)→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小示唆→株価下落→リスクオフ
- 米国雇用統計(1/7):失業率と平均時給が良好→インフレ懸念→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小の前進→株価下落→リスクオフ
- パウエル米FRB議長再任指名承認公聴会(1/11):インフレ対策として利上げとバランスシート縮小について言及あり。発言後は「警戒したほどタカ派的な内容ではなかった」ことでドル売りとなりましたが、本質的にはドル買い材料と考えます。
- 要人発言
- 山際経済再生大臣「新しい資本主義は株価を意識しません」(1/13, プライムニュース)
- 新型コロナ
- 世界中で新型コロナのオミクロン株感染拡大:英国やドイツでもロックダウンが実施されるようなら株価下落でリスクオフ円買いあり得る。
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係やウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化。1/18 ホワイトハウス「ロシアはいつでもウクライナを攻撃する可能性がある」「非常に危険な状況」
- 北朝鮮の軍事行動:ミサイル発射は1月に4回
円売り材料
- 金融政策
- 2021.12.17 に引き続き、2022.1.18日銀金融政策決定会合で、政策金利-0.1%維持、金融緩和継続、必要なら追加緩和方針。
- 日本以外でテーパリングや利上げ実施する国が増加→円を売って海外通貨買って利回りが良い海外国債などに投資した方が良い。
- 要人発言
- 2021.12.17 日銀金融政策決定会合で、黒田総裁が円安容認発言→発言直後、円売りが強まりドル円上昇となった。
- 2022.1.18 日銀金融政策決定会合で、黒田総裁「利上げや緩和的な政策変える必要ないし議論もない」
- 経済
- 原油など資源価格高騰→輸入物価上昇→資源輸入への支払い増→日本の経常収支悪化
- 新型コロナ
- 日本国内での新型コロナ感染急拡大(1/16, 全国で3日続け2万人超感染)
- 日本政府 「まん延防止等重点措置」 16都県に拡大。期間は1月21日から2月13日の約3週間。
- IMM通貨先物
- 1/11時点、円ショートポジション拡大
テクニカル分析
ドル円チャート
- 月足: トレンドラインで反発し上昇トレンド継続中。直近4カ月で見れば綺麗なダウ形成中です。下値目処は月足押し安値113.051。上値目処は2017年1月の118円台前半。
- 週足: 先週は大陰線でしたがトレンドラインで反発かつレジサポライン114.212で踏み留まっており、今週は上昇スタート。上値目処は115.534。下値目処は押し安値112.774。
- 日足: 先週末の長い下ヒゲピンバーの勢いそのままに強い上昇中。上値目処は20MA付近の日足押し安値114.787。
- 4H足: 4H足戻り高値114.620に到達。戻り売りも入りやすい位置。戻り高値上抜ければ上値目処は日足押し安値114.787。114.620で反発下落すれば下値目処は押し安値114.132。
- 1H足: 波の勢い弱く4H足戻り高値114.620付近でチャネル形成中。よって、上昇よりも下落の可能性は高いと考えます。戦略は4H足同様。
- 15M足: ボリンジャーバンドがスクイーズしておりローソク足も小粒です。エクスパンション待ち。
【シナリオ】
(A)4H足戻り高値114.620上抜けてレジサポすればロング狙い。上値目処は日足押し安値114.787。その上は、4H足レジサポ115.092。
(B)4H足戻り高値114.620で反発下落すればショート狙い。下値目処は押し安値114.132
【考察】
シナリオ(A)でロング可能な流れにはなりましたが、あっという間の急騰に付いていけずにエントリー見送り。114.787到達は想定通りですが、その上の4H足レジサポ115.092には届かずに、1H足200MAに接した115.057から反落。
ファンダメンタルズ分析で、日銀会合での上昇は全戻しの可能性がある、という考えは合っていましたが、 急騰の途中からエントリーしていれば全戻し中に損切に遭っていたと思います。
考えてみれば、利確位置はラウンドナンバー115.000が適切でした。
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