ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
注目材料
1. 今週の最重要材料:FOMC政策金利・声明発表、パウエル議長会見
本日のCME FedWatchでは、3/15~16 FOMCで25-50bps(88.2%)かつ50-75bps(5.2%)利上げ予想となっています。一部報道では年内利上げ3~4回や一度に50bps利上げ予想も出ています。
注目点は、①テーパリング終了時期、②利上げ(開始時期、年内利上げ回数、一度の利上げ率)、③バランスシート縮小計画です。
強いタカ派の内容であれば、「米国債利回り急騰→ドル買い」だけでなく、利上げ警戒で「日米先物、株価指数下落→円買い」、つまり「ドル買い円買い」が同時に発生すると推測されます。
結局は、ドルと円(ドルインデックス、株価指数、ドルストレート、クロス円)を比べて、強く動いた方向についていくしかないと考えます。
2.ウクライナ情勢緊迫化
先週から「ロシアはいつでもウクライナを攻撃する可能性がある」「非常に危険な状況」との報道(1/18)、ウクライナ駐留外交官家族の国外退避について検討の報道(1/21)、NATO、東欧に派兵へ ウクライナ情勢緊迫化(1/24)と続いており、ウクライナ情勢の緊張が高まったと言えます。
1/19には安全資産のゴールドが突如急騰しましたが、この地政学リスクを反映した可能性があります。
一方、サキ米大統領報道官「米軍がウクライナから米国人を退避させる計画はない」(1/24)、露クレムリン「今週、プーチン露大統領はマクロン仏大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領と話し合う」(1/25)、バイデン米大統領「米軍をウクライナに投入する意向はない」(1/26)といった発言から、直ぐに大規模な軍事衝突が発生するリスクは後退したと考えます。
しかし、協議が決裂する可能性は高く、今後も突発的な報道で「地政学リスク→強い円買い→ドル円下落」の可能性に注意すべきと判断します。
3. 岸田首相発言「株主資本主義を転換」
1/25の衆院予算委員会で、「新しい資本主義」の分配政策に関し、株主利益の最大化を重視する「株主資本主義」の弊害を是正する考えを示しました。投資家にとってネガティブ材料であり、「日経株価指数下落→円買い→ドル円下落」に注意。
4. 米国2021年度第4四半期決算発表
NYマーケットクローズ直後に、マイクロソフト決算が発表されました。売上とEPS共に予想を上回ってにも関わらず、マイクロソフト株価は時間外で約5%の下落となり、「先物(ダウ、日経)下落→円買い→ドル円下落」となりました。
つまり、決算内容に関係なく株が売られています。上記1. and/or 2. の影響を受けた可能性はありますが、そうであれば本日「日本株価指数下落→円買い→ドル円下落」に注意が必要と考えます。
マーケットの動き
東京マーケット前
7:00 オープン
- ドル円:113.862、上昇スタート。
- ドルインデックス:95.999。日足上ヒゲピンバーで引けており下落圧力強い。
- 米国債2年利回り:1.019%
- 米国債10年利回り:1.771%
東京マーケット(9:00~15:00)
9:00 オープン
- ドル円:113.987
- 日経平均株価:27105.98
- TOPIX:1900.37
- 懸念していた、リスクオフ材料(FOMCタカ派内容、ウクライナ情勢緊迫化、岸田首相発言、マイクロソフト決算、日本国内の新型コロナのオミクロン変異株感染拡大に伴う「まん延防止等重点措置)のためか株価指数は下落スタート。
- 懸念していた、リスクオフ材料(FOMCタカ派内容、ウクライナ情勢緊迫化、岸田首相発言、マイクロソフト決算、日本国内の新型コロナのオミクロン変異株感染拡大に伴う「まん延防止等重点措置)のためか株価指数は下落スタート。
- ドルインデックス(9:45):95.962
- 米国債2年利回り(9:15):1.027%
- 米国債10年利回り(9:15): 1.780%
15:00 クローズ
- ドル円:113.896
- オープンから徐々に上昇しましたが、東京オープンから失速し、仲値時113.914、仲値後も下落継続しました。しかし、前日NYマーケット安値113.780付近の113.777まで下落した後は、徐々に上昇しました。つまり、下値113.780付近は堅いと言えそう。
- オープンから徐々に上昇しましたが、東京オープンから失速し、仲値時113.914、仲値後も下落継続しました。しかし、前日NYマーケット安値113.780付近の113.777まで下落した後は、徐々に上昇しました。つまり、下値113.780付近は堅いと言えそう。
- 日経平均株価:27011.33(前日比-120.01)、2020年12月以来安値。
- TOPIX:1891.85(前日比-4.77)
- リスクオフ材料(FOMCタカ派内容、ウクライナ情勢緊迫化、岸田首相発言、マイクロソフト決算)で、日経平均株価は一時は27,000円を割り込んだものの、買戻しも多くレンジ推移で終了。
- ドルインデックス:95.972、スタートと同水準。
- 米国債2年利回り:1.029%、スタートと同水準。
- 米国債10年利回り: 1.773%、スタートと同水準。
欧州マーケット(17:00~1:30)
17:00 オープン
- ドル円:113.986、東京クローズから急上昇
- 日経先物:27070
- ダウ先物:34226、急上昇
- ドルインデックス:96.050、東京クローズから上昇
- 米国債2年利回り:1.035%
- 米国債10年利回り: 1.774%
21:00 経済指標
米国MBA住宅ローン申請指数:前回2.35、予想-、結果-7.1%
【見通し】
他の住宅関連指標と同様に高水準を維持しています。注目度が高い指標ではないため確認のみ。
22:30 経済指標
米国卸売在庫(速報値)12月度:前回1.4%、予想1.2%、結果2.1%
【見通し】
注目度は高い指標ですが、FOMC発表や発言の前のため確認のみ。
米国2021年度第4四半期決算発表
【見通し】
「米企業決算良好→株先物(ダウ、日経)・米国主要3指数上昇→円売りドル買い」と「米国債2年,10年利回り上昇→ドル買い」→ドル買い円買い→ドル円上昇。NYオープンから米国株価指数の上昇期待あり。
ボーイング
売上:予想168.8億ドル、結果147.9億ドル(✕)
EPS:予想-0.30ドル、結果-7.69ドル(✕)
【考察】
弱い結果であることから、米国株価指数にとっては下落材料となる可能性あり。
NYマーケット(23:30~6:00)
23:30 オープン
- ドル円:114.263
- ドルインデックス:96.024
- 米国債2年利回り:1.027%
- 米国債10年利回り:1.774%
- 日経先物:27340
- ダウ先物:34494
- ダウ平均:34606.46、ギャップアップ
- S&P500:4421.34、ギャップアップ
- ナスダック:13871.77、ギャップアップ
【考察】
ボーイング決算不調、米ウクライナ情勢不安、FOMC前のリスクオフで、米主要3指数は下落しやすいと考えていましたが、揃ってギャップアップスタートになりました。
0:00 経済指標
米国新築住宅販売件数12月度:前回74.4万件、予想76.0万件、結果81.1万件
【見通し】
他の住宅関連指標よりも景気に対して先行性があるとされています。注目度は高い指標ですが、やはりFOMC発表や発言の前のため、大きなサプライズがない限り確認のみ。
0:30 経済指標
米国週間石油在庫統計
(原油在庫):前回51.5万バレル、予想100.0万バレル、結果237.7万バレル
(ガソリン在庫):前回587.3万バレル、予想190.0万バレル、結果129.7万バレル
【見通し】
前回は在庫を大きく積み増しとなりましたが、原油先物価格WTIは上昇を続けました。ウクライナ情勢悪化に伴いエネルギー価格上昇しており、「在庫減となればWTI価格上昇→インフレ加速」の可能性が高まります。
4:00 経済指標
米国FOMC政策金利1月度
前回0.00-0.25%、予想0.00-0.25%、結果0.00-0.25%
【考察】
予想通り据え置き。
米国FOMC声明発表
テーパリング:2月終了は否定し、予定通り3月。
米金利:利上げ(soon)が適切。3月利上げ示唆。
バランスシート縮小:利上げ後に再投資額の調整(≒見送り)で実施
【考察】
警戒されていたタカ派ではありませんでしたが、初動「米国債利回り2年,10年急騰→ドル買い」、安心感からか「米国株価指数上昇→円売り」、「ドル買い円売り→ドル円急騰」しました。
しかし、ドル円急騰→上ヒゲ付けて急落→再び急上昇。
バランスシート縮小方法について具体的な内容があったことが、ややタカ派と捉えられて、「米国債利回り2年,10年上昇→ドル買い」になったようです。
4:30 要人発言
米国パウエルFRB議長
「年末にかけてインフレは減速していく見通し」「3月以降全ての会合で利上げを行う可能性、否定せず」「バランスシート縮小は現時点で未確定」「インフレ高止まりや堅調な雇用を考慮した金融政策が必要」「バランスシートは必要以上に大きい」「利上げしながらバランスシート縮小可能」「金利引き上げの決定は3月FOMC」
【考察】
「バランスシートの大きさ」と「利上げとバランスシート縮小可能」への言及がタカ派と考えられたためか、「米国債利回り2年,10年急騰→ドル買い」、「米国株価指数急落→円買いではなく円売り」、「ドル買い円売り→ドル円急騰」となりました。
本日CME FedWatchでも、3月FOMC利上げ織り込み100%となりました。
しかし、「米国債利回り2年と10年差縮小、米国株価指数急落→リスクオフ円買い→クロス円下落」も強まって、ドル買い円買いで、ドル円急落する展開もありました。
6:00 クローズ
- ドル円:114.597
- ドルインデックス:96.490
- 米国債2年利回り:1.144%
- 米国債10年利回り:1.860%
- ダウ平均:34177.39
- S&P500:4351.17
- ナスダック:13537.52
6:05 米国2021年度第4四半期決算発表
テスラ
売上:予想億166ドル、結果177億ドル(〇)
EPS:予想2.36ドル、結果2.52ドル(〇)
インテル
売上:予想183.3億ドル、結果195.3億ドル(〇)
EPS:予想ドル0.90、結果1.09ドル(〇)
【考察】
NYマーケットクローズ直後にテスラとインテルの決算が発表されました。売上とEPS共に予想を上回ってにも関わらず、前日のマイクロソフトと同様に株価は下落となりました。
つまり、決算内容に関係なく株が売られています。1/27の「日本株価指数下落→円買い→ドル円下落」に注意が必要と考えます。
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
通貨強弱
NYマーケットクローズ時点の通貨強弱
- USD(基軸通貨):前日5位→米国FOMCで米国債利回り上昇
- GBP(リスクオン通貨):前日1位→連日強い。利上げ観測か。
- CAD(資源国リスクオン通貨):前日3位→本日BOC政策金利据え置きで一時失望売りがあったものの、総裁発言で今後の利上げ期待前進
- NZD(資源国リスクオン通貨):前日7位
- AUD(資源国リスクオン通貨):前日2位
- EUR(リスクオン通貨):前日6位
- CHF(リスクオフ通貨):前日8位
- JPY(リスクオフ通貨):前日4位
本日はリスクオン優勢が明確となりました。
米国債イールドカーブ
- 1/26(水)FOMCで全体的に大きく利回り上昇しました。但し、2年と10年の利回り差は縮小しており、ベアフラットニングの傾向でした。
- 2021年1月FOMCから2022年1月までに利回りが大きく上昇している(特に短期、中期)
- 2021年12月FOMCには、20年と30年利回りが逆イールドしており現在も継続中
- 2022年1月FOMC議事要旨公表後も利回り上昇中
材料まとめ
ドル買い材料
- 金融政策
- 政策金利:2021.12.15 FOMCで2022年末までに0.25%ずつ3回利上げ方針
- 米国FOMC議事要旨公表(1/5)→3月利上げ開始の可能性とバランスシート縮小示唆→織り込み増加
- 1/25~26 FOMC予想:3月利上げ開始、利上げ予想1回(0.25%)
- 日米金利差拡大:米国は金融引き締め、日本は金融緩和継続
- 政治、経済
- 暖房用と米経済回復による原油需要拡大→需要ひっ迫警戒感→原油価格上昇→インフレ高進懸念→米利上げ織り込み→米国債金利上昇
- 米国インフレが一時的(transitory)でなく持続的:エネルギー需要増&供給不足、労働賃金上昇→利上げ観測前進
- 米国雇用統計(1/7):失業率(ほぼ完全雇用)と平均時給が良好。→インフレ懸念
- 高インフレに伴うバイデン政権支持率低下
- 要人発言
- 米国金融当局者の相次ぐタカ派発言。一般的にはドル買い材料のはずですが、最近はドル売りで反応することも多く、材料としての判断が難しい。
- 新型コロナ
- オミクロン株はデルタ株に比べて重症化事例が少ない→経済活動回復期待
- ワクチンや経口薬開発が進んでいる→経済活動回復期待
- FDAワクチン諮問委員:オミクロン株のピークは2~3週間の見込み
ドル売り材料
- 金融政策
- 1/25~26FOMC予想:3月利上げ開始、利上げ0.5%以上、2022年利上げ回数4回以上。一部金融関係者から強烈なタカ派予想あり。もし、その通りになれば「トリプル安(株、債券、ドル)→ドル売り→リスクオフ円買い」の可能性高い。
- 政治、経済
- 米国貿易赤字が過去最大規模
- 米国小売売上高(1/14):サプライズの弱い数値。米国GDP悪化の懸念大。
- 世界経済が回復する中、欧州株、アジア新興市場株や債券、資源国通貨、金や銀に資産を移すべきとのマネーマネージャーが増えているとの報道(1/13, Bloomberg)
- 気候変動・社会保障関連歳出法案:マンチン上院議院反対で採決先送り
- 中国春節の7連休(1/31~2/6):中国国内での消費のためにドル保有投資家や企業がドルを人民元に両替。中国の経済規模は大きいたドル売り人民元買いの影響が大きいと推測。
- 新型コロナ
- オミクロン株の感染拡大や重症化リスクが払拭されていない→経済活動停滞や景気回復鈍化懸念→利上げ時期後退の可能性
- オミクロン株はデルタ株より入院率は低いが医療システム逼迫懸念
- 米国内のワクチン接種率向上しない、マスクをしない人も多い→感染拡大で人員不足
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係悪化
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化:ロシア、米国、NATOの協議不調。ロシアのウクライナ侵攻の懸念増大→ロシア制裁でドル決済が使えなくなったら、ロシアはドル売り中国人民元買いの可能性
円買い材料
- 金融政策
- 日銀、量的緩和じわり修正 国債保有残高13年ぶり減少(1/5, 日経新聞):弱いながらも実質的なテーパリングとも考えられます。
- 1/25~26FOMC予想:3月利上げ開始、利上げ0.5%以上、2022年利上げ回数4回以上。一部金融関係者から強烈なタカ派予想あり。もし、その通りになれば「トリプル安(株、債券、ドル)→ドル売り→リスクオフ円買い」の可能性高い。
- 要人発言
- 山際経済再生大臣「新しい資本主義は株価を意識しません」(1/13, プライムニュース)
- 新型コロナ
- 世界中で新型コロナのオミクロン株感染拡大:英国やドイツでもロックダウンが実施されるようなら株価下落でリスクオフ円買いあり得る。
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係やウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化。1/18 ホワイトハウス「ロシアはいつでもウクライナを攻撃する可能性がある」「非常に危険な状況」
- 北朝鮮の軍事行動:ミサイル発射は1月に5回
- IMM通貨先物
- 1/18時点、円ショート縮小(ネット-80,879、前週比+6,646)
円売り材料
- 金融政策
- 2021.12.17 に引き続き、2022.1.18日銀金融政策決定会合で、政策金利-0.1%維持、金融緩和継続、必要なら追加緩和方針。
- 日本以外でテーパリングや利上げ実施する国が増加→円を売って海外通貨買って利回りが良い海外国債などに投資した方が良い。
- 要人発言
- 2022.1.18 日銀金融政策決定会合で、黒田総裁「利上げや緩和的な政策変える必要ないし議論もない」
- 経済
- 原油など資源価格高騰→輸入物価上昇→資源輸入への支払い増→日本の経常収支悪化
- 新型コロナ
- 日本国内での新型コロナ感染急拡大(1/26, 全国で新規感染者7万人超)
- 日本政府 「まん延防止等重点措置」 13都県に1/21から適用。期間は1月21日から2月13日の約3週間。25日には8都府県追加予定。
- トヨタ、コロナ拡大で工場稼働停止を延長-減産規模は計6万5000台に(1/24, Bloomberg)
テクニカル分析
ドル円チャート
- 月足: トレンドラインで反発し上昇トレンド継続中ですが、トレンドラインまで下落。下値目処は月足押し安値113.051。上値目処は2017年1月の118円台前半。
- 週足: トレンドラインを下抜けて20MA付近まで下落。下値目処は押し安値112.818。
- 日足: 陰線十字線で方向性なし。下降トレンド中のため、トレンドライン上抜けまでは下目線。
日足トレンドラインかつレジスタンス114.128上抜ければ、上値目処20M付近114.814。
113.571下抜ければ下値目処は週足押し安値112.818。 - 4H足: 上下しながらも緩やかなカーブを描きながら右肩上がりの推移に見えました。4H足が20MAに支えられており、上昇しやすいと考えます。
日足レジスタンスかつ4H足戻り高値114.128を上抜ければ、上値目処は4H足200MA付近の戻り高値114.469、その上は日足20MA付近114.814。
日足押し安値113.571下抜ければ、下値目処は週足押し安値112.818。 - 1H足: ボリンジャーバンドスクイーズしたまま、緩やかなカーブを描きながら右肩上がりに推移中。戦略は4H足と同じ。
- 15M足: ボリンジャーバンドスクイーズしてレンジ推移中。戦略は4H足や1H足と同じ。
【シナリオ】
(A) 日足レジスタンスかつ4H足戻り高値114.128を上抜ければロング狙い。上値目処は4H足200MA付近の戻り高値114.469、その上は日足20MA付近114.814。
(B) 日足押し安値113.571下抜ければショート狙い。下値目処は週足押し安値112.818(前日と同じ狙い)
【考察】
FOMC前から予想以上に上昇しシナリオ(A)で動きましたが、この流れなら114.814到達可能と考えます。翌日は押し目買い狙いたいところ。
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