ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
注目材料
1. 前日NYマーケットの流れ引継ぎ(FOMC政策金利・声明発表、パウエル議長会見)
<声明文>
テーパリング:2月終了は否定し、予定通り3月。
米金利:利上げ(soon)が適切。3月利上げ示唆。
バランスシート縮小:利上げ後に再投資額の調整(≒見送り)で実施
声明文は警戒されたタカ派の内容ではありませんでした。
<パウエル議長会見>
「バランスシートの大きさ」と「利上げとバランスシート縮小可能」「毎回のFOMC会合で、利上げする可能性を排除しない」「金利を引き上げる余地はかなりある」がタカ派と考えられたためか、「米国債利回り2年,10年急騰→ドル買い」、「米国株価指数急落→円買いではなく円売り」、「ドル買い円売り→ドル円急騰」となりました。
本日もパウエル議長会見のタカ派内容の影響は続くと想定します。しかし、日本株が過度に反応して「日経平均株価下落→強い円買い」が生じるようであれば、一旦のドル円下落にも注意します。
2.ウクライナ情勢緊迫化
露クレムリン「今週、プーチン露大統領はマクロン仏大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領と話し合う」(1/25)、バイデン米大統領「米軍をウクライナに投入する意向はない」(1/26)といった発言から、直ぐに大規模な軍事衝突が発生するリスクは後退したと考えます。
しかし、協議が決裂する可能性は高く、今後も突発的な報道で「地政学リスク→強い円買い→ドル円下落」の可能性に注意すべきと判断します。
マーケットの動き
東京マーケット前
7:00 オープン
- ドル円:114.630
- ドルインデックス:96.487
- 米国債2年利回り:1.156%
- 米国債10年利回り:1.869%
8:15 報道
北朝鮮ミサイル発射、今月6回目
【考察】
1/25(火)12:43の5回目ミサイル発射報道時は、「時間外米国債利回り2年,10年下落→ドル売り」と「日経平均株価下落→円買い」、「ドル売り円買い→ドル円下落」となりました。
今回は、東京マーケットオープン前のためか、「日経先物動き小→ドル円下落小」。
東京マーケット(9:00~15:00)
9:00 オープン
- ドル円:114.722
- 日経平均株価:27105.98
15:00 クローズ
- ドル円:113.896
- 前日FOMCのタカ派内容を受けて強いドル円上昇を想定していましたが、114.48~114.79のレンジ推移。「ドル買い」と「株価指数・株先物下落→円買い」でドル円のトレンドが出にくかった様です。
- 日経平均株価:26179.30(前日比-841.03)
- 上昇スタートから、即反転下落。前日FOMCタカ派影響に加えて、直前の北朝鮮ミサイル発射報道でリスクオフになったと考えます。
欧州マーケット(17:00~1:30)
22:30 経済指標
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)
米国新規失業保険申請件数: 前回28.6万件、予想26.5万件、結果26.0万件(◎)
米国失業保険継続受給件数 : 前回163.5万件、予想165.3万件、結果167.5万件(✕)
【見通し】
前回は、新規失業保険申請件数が2021年10月以来の弱さとなったことで、来月の米国雇用統計悪化も懸念されました。そのためか、「米国債利回り2年,10年低下→ドル売り」、円買いでラウンドナンバー114.000まで急落しました。予想値は改善していますが、今回も弱い数値が出ればドル円下落で反応しやすいと考えます。
22:30 経済指標
米国実質GDP(速報値)第4四半期:
(実質GDP)前回2.3%、予想5.3%、結果6.9%(◎)
(個人消費)前回2.0%、予想3.4%、結果3.3%(✕)
(GDPデフレータ)前回6.0%、予想6.0%、結果6.9%(◎)
(PCEコアデフレータ)前回4.6%、予想4.9%、結果4.9%(○)
【見通し】速報値であり注目度は高い指標です。
【考察】
22:30 経済指標
米国耐久財受注(速報値)12月度
(前月比)前回2.6%、予想-0.6%、結果-0.9%(✕)
(コア前月比)前回0.9%、予想0.3%、結果0.4%(○)
【見通し】
注目度が高いのは米国実質GDPであるため確認のみ。
22:30 米国2021年度第4四半期決算発表
【見通し】
「米企業決算良好→株先物(ダウ、日経)・米国主要3指数上昇→円売りドル買い」と「米国債2年,10年利回り上昇→ドル買い」→ドル買い円買い→ドル円上昇。NYオープンから米国株価指数の上昇期待あり。
マクドナルド
売上:予想60.3億ドル、結果60.1億ドル(✕)
EPS:予想2.34ドル、結果2.23ドル(✕)
サウスウェスト航空
売上:予想50.01億ドル、結果50.51億ドル(○)
EPS:予想0.07ドル、結果0.14ドル(○)
NYマーケット(23:30~6:00)
0:00 経済指標
米国中古住宅販売成約指数12月度:前回-2.2%、予想-0.4%、結果-3.8%(✕)
1:30 欧州クローズ
- ドル円
- 東京マーケット後半からの上昇を継続し、22:30米国指標で注目度が高かったGDPを筆頭に総合的に良好だったため、「ドル買い」「株先物買い→円売り」でドル円上昇しました。
- NYオープン時、「下落傾向にあった米国債利回り2年,10年急落→強ドル売り→ドル円下落」となりましたが、株先物や米主要3指数ギャップスタートしてリスクオフが後退したことで、「米国債利回り2年,10年上昇→ドル買い」「株買い→円売り」で再びドル円上昇しました。
- 0:00 米国中古住宅販売成約指数がサプライズの悪化となりましたが、ドル円は特に影響なし。しかし、米国債利回り2年,10年、株先物と米主要3指数は上昇が弱まり、下落に転じつつあります。再びリスクオフが優勢になりつつある様子。
3:00 経済指標
米国7年債入札:530億ドル
【見通し】
入札良好なら米国債利回り低下、入札不調なら米国債利回り上昇です。
1/24 米国2年債入札:好調
1/11 米国3年債入札:好調
1/12 米国10年債入札:不調
1/13 米国30年債入札:不調
1/20 米国20年債入札:好調
1/25 米国5年債入札:好調
短期債入札好調で長期債入札は不調の傾向がありますので、「米国7年債入札好調→利回り低下→ドル売り→ドル円下落」する可能性があります。
【考察】
入札好調→米国7年債利回り1.769%から低下→ドル売り→ドル円115.382から下落。
6:00 クローズ
- ドル円:115.356
- ダウ平均:34160.78(前日比-7.31、-0.02%)
- S&P500: 4326.51(前日比-23.42、-0.54%)
- ナスダック:13352.78(前日比-189.33、-1.40%)
6:05 米国2021年度第4四半期決算発表
ビザ
売上:予想67.9億ドル、結果70.6億ドル(○)
EPS:予想1.42ドル、結果1.81ドル(○)
アップル
売上:予想1186億ドル、結果1239.5億ドル(○)
EPS:予想1.89ドル、結果2.1ドル(○)
決算良好で、それぞれ時間外株価上昇、ダウ先物も上昇。1/28の日経平均株価上昇の期待あり。
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
通貨強弱
NYマーケットクローズ時点の通貨強弱
- USD(基軸通貨):前日1位→米国FOMCで米国債利回り上昇、米国経済指標(GDP等)良好
- JPY(リスクオフ通貨):前日8位
- GBP(リスクオン通貨):前日2位→連日強い。利上げ観測か。
- CAD(資源国リスクオン通貨):前日3位→前日のBOC総裁発言で今後の利上げ期待継続、原油先物WTI堅調推移
- CHF(リスクオフ通貨):前日7位
- EUR(リスクオン通貨):前日6位
- NZD(資源国リスクオン通貨):前日4位
- AUD(資源国リスクオン通貨):前日5位
リスクオンとリスクオフに傾向は見られませんでしたが、ドルの一人勝ち継続でした。
米国債イールドカーブ
- 1/27(木)は1/26(水)FOMCに対して、短期金利が上昇し長期金利が低下するカーブになりました。ドル売り→ドル円下落に注意が必要かもしれません。
- 2021年1月FOMCから2022年1月までに利回りが大きく上昇している(特に短期、中期)
- 2021年12月FOMCには、20年と30年利回りが逆転しており現在も継続中
1/27(木)は1/26(水)より米国債利回り差が縮まりました。金利差で利益を出している金融機関にとってはマイナス材料です。
材料まとめ
ドル買い材料
- 金融政策
- 1/25~26 FOMC:政策金利据え置き、但し、金融引き締めに前向きな見解
- 日米金利差拡大:米国は金融引き締め、日本は金融緩和継続
- 政治、経済
- 暖房用と米経済回復による原油需要拡大→需要ひっ迫警戒感→原油価格上昇→インフレ高進懸念→米利上げ織り込み→米国債金利上昇
- 米国インフレが一時的(transitory)でなく持続的:エネルギー需要増&供給不足、労働賃金上昇→利上げ観測前進
- 米国雇用統計(1/7):失業率(ほぼ完全雇用)と平均時給が良好。→インフレ懸念
- 高インフレに伴うバイデン政権支持率低下
- 要人発言
- 1/26 パウエルFRB議長会見:「利上げとバランスシート縮小可能」「毎回のFOMC会合で、利上げする可能性を排除しない」「金利を引き上げる余地はかなりある」→タカ派
- 新型コロナ
- オミクロン株はデルタ株に比べて重症化事例が少ない→経済活動回復期待
- ワクチンや経口薬開発が進んでいる→経済活動回復期待
- FDAワクチン諮問委員:オミクロン株のピークは2~3週間の見込み
ドル売り材料
- 金融政策
- 政治、経済
- 米国貿易赤字が過去最大規模
- 米国小売売上高(1/14):サプライズの弱い数値。米国GDP悪化の懸念大。
- 世界経済が回復する中、欧州株、アジア新興市場株や債券、資源国通貨、金や銀に資産を移すべきとのマネーマネージャーが増えているとの報道(1/13, Bloomberg)
- 気候変動・社会保障関連歳出法案:マンチン上院議院反対で採決先送り
- 中国春節の7連休(1/31~2/6):中国国内での消費のためにドル保有投資家や企業がドルを人民元に両替。中国の経済規模は大きいたドル売り人民元買いの影響が大きいと推測。
- 新型コロナ
- オミクロン株の感染拡大や重症化リスクが払拭されていない→経済活動停滞や景気回復鈍化懸念→利上げ時期後退の可能性
- オミクロン株はデルタ株より入院率は低いが医療システム逼迫懸念
- 米国内のワクチン接種率向上しない、マスクをしない人も多い→感染拡大で人員不足
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係悪化
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化:
- ロシア、米国、NATOの協議不調。
- ラブロフ露外務相(1/27)「米国から主要問題について前向きな回答はなかった」「安全保障の提案への米国とNATOの回答について、プーチン露大統領が次のステップを決定するだろう」
- ロシアのウクライナ侵攻の懸念増大→ロシア制裁でドル決済が使えなくなったら、ロシアはドル売り中国人民元買いの可能性
円買い材料
- 金融政策
- 日銀、量的緩和じわり修正 国債保有残高13年ぶり減少(1/5, 日経新聞):弱いながらも実質的なテーパリングとも考えられます。
- 1/25~26FOMC予想:3月利上げ開始、利上げ0.5%以上、2022年利上げ回数4回以上。一部金融関係者から強烈なタカ派予想あり。もし、その通りになれば「トリプル安(株、債券、ドル)→ドル売り→リスクオフ円買い」の可能性高い。
- 要人発言
- 山際経済再生大臣「新しい資本主義は株価を意識しません」(1/13, プライムニュース)
- 新型コロナ
- 世界中で新型コロナのオミクロン株感染拡大:英国やドイツでもロックダウンが実施されるようなら株価下落でリスクオフ円買いあり得る。
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係やウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化。1/18 ホワイトハウス「ロシアはいつでもウクライナを攻撃する可能性がある」「非常に危険な状況」
- 北朝鮮の軍事行動:ミサイル発射は1月に6回
- IMM通貨先物
- 1/18時点、円ショート縮小(ネット-80,879、前週比+6,646)
円売り材料
- 金融政策
- 2021.12.17 に引き続き、2022.1.18日銀金融政策決定会合で、政策金利-0.1%維持、金融緩和継続、必要なら追加緩和方針。
- 日本以外でテーパリングや利上げ実施する国が増加→円を売って海外通貨買って利回りが良い海外国債などに投資した方が良い。
- 要人発言
- 2022.1.18 日銀金融政策決定会合で、黒田総裁「利上げや緩和的な政策変える必要ないし議論もない」
- 経済
- 原油など資源価格高騰→輸入物価上昇→資源輸入への支払い増→日本の経常収支悪化
- 新型コロナ
- 日本国内での新型コロナ感染急拡大(1/27, 全国で新規感染者7万人超、3日連続過去最多)
- 日本政府 「まん延防止等重点措置」 13都県に1/21から適用。期間は1月21日から2月13日の約3週間。27日に18都府県追加。合計34都道府県→日本経済停滞
- トヨタ、コロナ拡大で工場稼働停止を延長-減産規模は計6万5000台に(1/24, Bloomberg)
テクニカル分析
ドル円チャート
- 月足: トレンドラインで反発し上昇トレンド継続中。下値目処は月足押し安値113.051。上値目処は2017年1月の118円台前半。
- 週足: トレンドライン上まで急反発上昇。上値目処は115.555、下値目処は押し安値112.818。
- 日足: トレンドライン抜けて大陽線。戻り高値114.604も超えており、本日も上昇しやすい。上値目処20M付近114.814、その上は115.252。
114.604下抜ければ下値目処は日足レジサポ114.128。 - 4H足: ボリンジャーバンド+2σ超える強い上昇トレンド。上値目処は4H足直近高値114.814、その上は日足20M付近114.814。
114.604下抜ければ下値目処は日足レジサポ114.128。 - 1H足: ボリンジャーバンド+2σ超える強い上昇トレンド。戦略は4H足と同じ。
- 15M足: ボリンジャーバンド+1σ下抜けてレンジ推移中。戦略は4H足や1H足と同じ。
【シナリオ】
(A) 15M足がややレンジ推移しているため、レンジ上抜けや20MAまで下落からの反発あればロング狙い。上値目処は4H足直近高値114.814、その上は日足20M付近114.814。
(B) 日足抵抗114.604下抜ければ下値目処は日足レジサポ114.128。
優先はシナリオ(A)のロング狙い。
【考察】
優先度が高いシナリオ(A)で上昇しましたが、ここまで一気に上昇するとは想定しておらず、気付いた時にはラウンドナンバー115.000手前に達しており、押し目買い待ちで終了。
タイミングが悪かったとは言え、14:30 1H足トレンドラインで反発し15M足ダウ転換して114.604をレジサポした後は狙いたい位置でした。
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