ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
注目材料
1. 前日NYマーケットの流れ引継ぎ
1/27は、1/26の米国FOMCタカ派内容による米国債利回り上昇や、1/27米国経済指標(GDP等)良好だったことで、強いドル買いとなりました。
一方で、株先物や株価指数下落になりましたが強い円買いにはならず、総じてドル円上昇。
更に、NYクローズ直後のビザやアップル決算が良好だったことから、本日もドル買いは続きやすいと想定します。
しかし、懸念点は2つ。
①日本株が更に下落して「日経平均株価下落→強い円買い」
②米国債利回り2年が上昇、10年が低下。つまり、長短金利差が縮小しました。
これらの影響で、円買い、ドル売りが生じればドル円下落の可能性があります。
2.ウクライナ情勢緊迫化
ロシア外務省アレクセイ・ザイツェフ報道官会見「ロシアはウクライナとの戦争は想定外だと考えている」、また、2週間以内に開催予定のウクライナおよび仏独との4カ国協議までは、大規模な軍事衝突が発生するリスクは低いと考えます。
しかし、協議が難航する可能性は高く、引き続き「地政学リスク→強い円買い→ドル円下落」の可能性に注意すべきと判断します。
マーケットの動き
東京マーケット前
- ドル円:115.339、ギャップスタート。しかし15M足20MAを下ヒゲピンバーで反発しており、直ぐに上昇して窓埋め。
東京マーケット(9:00~15:00)
- ドル円:オープン115.352、仲値時115.450、クローズ115.388
- 1/26FOMCタカ派内容や1/27米国経済指標良好だったことで期待のあった強いドル買い、または、懸念していた米国債長短金利差縮小よる強いドル売り、リスクオフ日本株売りは見られませんでした。
- 「米国債利回り2年,10年小動き→弱ドル売り」、「日経平均株価やダウ先物上昇→円売り」、通貨強弱「ドル>円」で、仲値にかけてドル円上昇しましたが、ドル買いが入ったわけではないためドル円レンジ推移で終えました。
- 日経平均株価:26717.34円(前日比△547.04円)
- TOPIX:1876.89(前日比△34.45)
欧州マーケット(17:00~1:30)
17:00 オープン
- ドル円
- スタート115.654。
- 東京クローズ後、アーリーロンドン勢参入による「米国債利回り2年,10年上昇→ドル買い」、「株先物(ダウ、日経)下落→円買いでなく円売り」、「ドル買い円売り」で欧州オープンまでにドル円急騰したと考えられます。
22:30 経済指標
(指標結果)前回かつ予想より良い◎、予想以上〇、予想より悪い△、前回かつ予想より悪い×
米国PCEデフレータ12月度:
(PCEデフレータ前年比)前回5.7%、予想5.8%、結果5.8%(○)
(PCEコアデフレータ前月比)前回0.5%、予想0.5%、結果0.5%(○)
(PCEコアデフレータ前年比)前回4.7%、予想4.8%、結果4.9%(◎)
【見通し】米国インフレターゲットの対象として注目度は高い指標です。
22:30 経済指標
米国個人所得12月度:前回0.4%、予想0.5%、結果0.3%(✕)
米国個人支出12月度:前回0.6%、予想-0.6%、結果-0.6%(○)
【見通し】
PCEデフレータに比べて重要度は低い指標ですがサプライズあればドル円は動きやすいため要確認。
22:30 経済指標
米国雇用コスト指数第4四半期:前回1.3%、予想1.2%、結果1.0%(✕)
【見通し】
インフレ高進に伴い賃金も上昇しているため、通常よりは注目度が高い指標と考えます。
【考察】
- 指標結果は強弱入り混じっていましたが、「米国債利回り2年,10年急落→強いドル売り」、「先物(ダウ、日経)上昇→円売りでなく強い円買い」、ドル売り円買いでドル円急落。
- FOMC後のパウエル議長会見で注目されていたのは、米国PCEデフレータより米国雇用コスト指数だったよう。よって、米国雇用コスト指数低下に市場が反応して、インフレ期待が後退したと推測します。
- また、指標発表前には、週足実体上限115.555を上抜けておりレンジ形成中。週足勢からの売りが入りやすい状況でした。115.587からトレンドライン下抜けて4H足押し安値115.330まで急落。115.330以下で引けると日足下ヒゲ陰線となるため注目されやすいレートだと思われます。
- この指標結果だけでFRB金融政策が変わることないため、115.330付近からは押し目買い勢も入ってきやすいと推測。
22:30 米国2021年度第4四半期決算発表
キャタピラー
売上:予想131.5億ドル、結果138億ドル(○)
EPS:予想2.26ドル、結果2.69ドル(○)
【考察】
米国経済指標結果でのインフレ懸念後退もあり、ダウ先物急騰。よって、NYオープンからの株価指数上昇に期待あり。
NYマーケット(23:30~6:00)
23:30 オープン
- ドル円:115.417。22:30米国指標後の下落は一時的と考え、115.330付近から押し目買いが入る可能性を考えましたが、「米国債利回り2年,10年下落→ドル売り」が止まらず、ドル円下落継続しました。
- 米国主要3指数:米国経済指標結果とキャタピラー決算良好後にダウ先物急騰したため、米国株価指数上昇期待ありましたが、オープン直後から急落。
0:00 経済指標
米国ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)1月度:前回68.8、予想68.8、結果67.2(✕)
【見通し】確報値は500人対象で結果の調査変動が大きいため確認のみ。
1:30 欧州クローズ
- ドル円:115.167
- 「米国債利回り2年,10年下落→ドル売り」、「米国主要3指数オープンの下落で底を打って上昇→円売りでなく円買い」、ドル売り円買いでドル円下落推移となりました。
- 東京マーケットでは「株上昇→円売り」だったものが、アーリー欧州勢参入からは「株上昇→円買い」に転換し分かりにくい動きでした。
6:00 クローズ
- ドル円:115.242
- 欧州クローズ以降は小幅推移
- 米国主要3指数
- 全て引け1時間前から急激に上昇。最近は引けが近づくにつれて急落が多かったですが、今回は逆の動きでした。
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
通貨強弱
NYマーケットクローズ時点の通貨強弱
- JPY(リスクオフ通貨):前日2位
- GBP(リスクオン通貨):前日3位→連日強い。利上げ観測か。
- EUR(リスクオン通貨):前日6位
- USD(基軸通貨):2日連続1位→米国経済指標悪化(特に雇用コスト指数), 米国債利回り低下
- CHF(リスクオフ通貨):前日5位
- CAD(資源国リスクオン通貨):前日4位→前日のBOC総裁発言で今後の利上げ期待継続、原油先物WTI堅調推移
- NZD(資源国リスクオン通貨):前日7位
- AUD(資源国リスクオン通貨):前日8位
特徴的なのは2点
①2日連続一人勝ちだったドルが低下。米国雇用コスト指数悪化で米国債利回り低下が原因と推測
→次週もドル売りスタートしやすいかも知れません。
②資源国通貨が軒並み弱かった。
米国債イールドカーブ
- 1/28は1/27に対して、ややブルフラットニング(全体的に利回り低下)となりました。但し、利回り差は0.63で変わらず。
- 1/28は1/26FOMCに対して、ツイストフラットニング(短期利回り上昇し、長期利回り低下してイールドカーブが平坦化)しました。
- ブルフラットニングとツイストフラットニングは共に景気減速を示唆していますので、ドル売り材料かも知れません。
材料まとめ
ドル買い材料
- 金融政策
- 1/25~26 FOMC:政策金利据え置き、但し、金融引き締めに前向きな見解
- 日米金利差拡大:米国は金融引き締め、日本は金融緩和継続
- 政治、経済
- 暖房用と米経済回復による原油需要拡大→需要ひっ迫警戒感→原油価格上昇→インフレ高進懸念→米利上げ織り込み→米国債金利上昇
- 米国インフレが一時的(transitory)でなく持続的:エネルギー需要増&供給不足、労働賃金上昇→利上げ観測前進
- 米国雇用統計(1/7):失業率(ほぼ完全雇用)と平均時給が良好。→インフレ懸念
- 米企業決算総じて良好
- 要人発言
- 1/26 パウエルFRB議長会見:「利上げとバランスシート縮小可能」「毎回のFOMC会合で、利上げする可能性を排除しない」「金利を引き上げる余地はかなりある」→タカ派
- 新型コロナ
- オミクロン株はデルタ株に比べて重症化事例が少ない→経済活動回復期待
- ワクチンや経口薬開発が進んでいる→経済活動回復期待
- FDAワクチン諮問委員:オミクロン株のピークは2~3週間の見込み
ドル売り材料
- 金融政策
- 政治、経済
- 米国貿易赤字が過去最大規模
- 世界経済が回復する中、欧州株、アジア新興市場株や債券、資源国通貨、金や銀に資産を移すべきとのマネーマネージャーが増えているとの報道(1/13, Bloomberg)
- 気候変動・社会保障関連歳出法案:マンチン上院議院反対で採決先送り
- 中国春節の7連休(1/31~2/6):中国国内での消費のためにドル保有投資家や企業がドルを人民元に両替。中国の経済規模は大きいたドル売り人民元買いの影響が大きいと推測。高インフレに伴うバイデン政権支持率低下
- 新型コロナ
- オミクロン株の感染拡大や重症化リスクが払拭されていない→経済活動停滞や景気回復鈍化懸念
- オミクロン株はデルタ株より入院率は低いが医療システム逼迫懸念
- 米国内のワクチン接種率向上しない、マスクをしない人も多い→感染拡大で人員不足
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係悪化
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化:
- ロシア、米国、NATOの協議不調。
- ラブロフ露外務相(1/27)「米国から主要問題について前向きな回答はなかった」「安全保障の提案への米国とNATOの回答について、プーチン露大統領が次のステップを決定するだろう」
- ロシアのウクライナ侵攻の懸念増大→ロシア制裁でドル決済が使えなくなったら、ロシアはドル売り中国人民元買いの可能性
円買い材料
- 金融政策
- 日銀、量的緩和じわり修正 国債保有残高13年ぶり減少(1/5, 日経新聞):弱いながらも実質的なテーパリング。
- 要人発言
- 岸田首相発言「新しい資本主義」:投資家軽視→リスクオフ株価下落
- 地政学リスク
- 台湾情勢を巡る米中関係
- ウクライナ情勢を巡る露・欧米関係の緊迫化
- 北朝鮮の軍事行動:ミサイル発射は1月に6回
- IMM通貨先物
- 1/18時点、円ショート縮小(ネット-80,879、前週比+6,646)
円売り材料
- 金融政策
- 2021.12.17 に引き続き、2022.1.18日銀金融政策決定会合で、政策金利-0.1%維持、金融緩和継続、必要なら追加緩和方針。
- 日本以外でテーパリングや利上げ実施する国が増加→円を売って海外通貨買って利回りが良い海外国債などに投資した方が良い。
- 要人発言
- 2022.1.18 日銀金融政策決定会合で、黒田総裁「利上げや緩和的な政策変える必要ないし議論もない」
- 政治、経済
- 原油など資源価格高騰→輸入物価上昇→資源輸入への支払い増→日本の経常収支悪化
- 新型コロナ
- 日本国内での新型コロナ感染急拡大(1/28, 全国で新規感染者8万人超、4日連続過去最多)
- 日本政府 「まん延防止等重点措置」 13都県に1/21から適用。期間は1月21日から2月13日の約3週間。27日に18都府県追加。合計34都道府県→日本経済停滞
- トヨタ、コロナ拡大で工場稼働停止を延長-減産規模は計6万5000台に(1/24, Bloomberg)
テクニカル分析
ドル円チャート
- 月足: トレンドラインで反発し上昇トレンド継続中。下値目処は月足押し安値113.051。上値目処は2017年1月の118円台前半。
- 週足: 上値目処115.555直前まで上昇。115.555到達後は反発の可能性あり。下値目処は日足20MA付近114.787。115.555上抜ければ上値目処ヒゲ先の116.334。
- 日足: 連日大陽線。戻り高値115.285も超えており、本日も上昇狙いやすい。上値目処は週足実体上限115.555、その上は日足実体上限付近116.085。
戻り高値115.285下抜ければ下値目処20MA付近114.787。 - 4H足: 強い上昇トレンドでトレンドライン下抜けるまでは上目線。戦略は日足と同じ。
- 1H足: 上昇トレンド中の調整波形成中。日足と4H足が強い上昇であるため、1H足三角持ち合い上抜けならロング狙いやすい。上値と下値目処は日足同様。
- 15M足: ボリンジャーバンドスクイーズしながら三角持ち合い形成中。戦略は1H足と同じ。
【シナリオ】
(A) 1H足と15M足が三角持ち合い形成しているため、上抜けたらロング狙い。上値目処は週足実体上限115.555。
(B) 1H足と15M足が三角持ち合い下抜ければショート狙い。下値目処は日足20MA付近114.787。
日足と4H足が強い上昇中なため、優先はシナリオ(A)のロング狙い。
【考察】
シナリオ(A)通り、週足実体上限115.55超えで止まり急落しました。しかし、週足実体上限で止まることが予想できていれば、週足売り勢力を見越して115.555下抜けからのショートシナリオも立てておくべきでした。
具体的には、115.555付近で1H足や15M足レンジを形成した後に、レンジ下抜けるなら週足売り勢力に合流できたはず。
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