2024年7月25日(木)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

1.経済指標
・米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数
・米国実質GDP速報値
・米国耐久財受注速報値
・米国7年債入札

2.要人発言
・米国バイデン大統領、大統領選撤退演説
・政府、日銀円安牽制発言
・FEDウォッチャー、WSJ紙のニック氏(Twitter):FRBブラックアウト期間(7/20~8/1)につき

3.その他
・G20財務相、中央銀行総裁会議(7/25~7/26)
・五十日仲値
・米国主要企業決算
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア、台中)

4.参考情報
来週の円相場はじり高、キャリー取引巻き戻し-日銀利上げ観測は後退(Bloomberg
【債券週間展望】長期金利上昇か、決定会合控え日銀の情報発信を警戒(Bloomberg
【日本株週間展望】反発、企業決算で銘柄選別-半導体に押し目買いも(Bloomberg

5.本日の注目材料

(1)前日マーケット影響
7/23同様、7月日銀会合の金融政策正常化観測から投機筋円売りポジション調整(推測)、日本・欧米株下落(円キャリー巻き戻し)に伴う強い円買い主導で終日ドル円下落が続きました。

従いまして、本日も投機筋円売りポジション調整や株下落が続くならドル円下落、調整一服なら押し目買い上昇ですが、通貨強弱・株の動き(円キャリー)・クロス円で判断が必要と考えます。

一方、7/17に河野デジタル相が円安是正・利上げ発言が出た後、2日後の7/19に河野デジタル相から火消し発言と、鈴木財務相から河野デジタル相へ牽制発言がありました。この時は、巻き戻しのドル円上昇発生。

よって、本日も下記発言があるか注目したい。
・茂木幹事長の火消し発言
・鈴木財務相の茂木幹事長への牽制発言

(2)ウォール街の資産家、ハリス氏売り込みに奔走-巨額資金調達を目指す(Bloomberg
7/24から7/25取引開始時点のReal Clear Politicsの大統領勝利確率は、トランプ氏58から56%へ連日低下、ハリス副大統領が33から36%へ連日急上昇しました。

ここで、考えられるのは2点。
①ハリス副大統領の知名度や実績はトランプ氏に遠く及ばないと判断され、トランプトレード(株高、ドル高、金利高)加速
②バイデン大統領よりハリス副大統領の当選確率が高く、59歳と大幅な若返りにもなることから、米国政情不安リスクオフになりやすい。

トランプ氏の当選確率低下の一方、ハリス副大統領の当選確率の急上昇が続いていることから、下記(a)トランプトレードになりにくく、(b)政情不安からドル円下落に繋がっています。

7/23,7/24はポジション調整と推測される強い円買い発生しましたが、調整が落ち着けば根強い円売り材料(c)~(e)から、ドル円上昇しやすいと考えます。

(a)トランプ氏の大統領返り咲き確率増→インフレ懸念、株上昇(円キャリー促進)→ドル円上昇
(b)トランプ氏の大統領返り咲き確率減→巻き戻しのドル円下落

(c)7/17ドル円急落を好機とした、安値ドル調達需要(日本実需、新NISA等の米国投資目的)
(d)7月日銀会合では景気悪化懸念から追加利上げできないとの見方
(e)恒常的円売り材料の影響

(3)米国経済指標
最近の指標はインフレ鈍化・景気減速傾向ありますが、米国パウエルFRB議長を始め、FRB要人は総じて「利下げ前に追加データ必要」のスタンスが目立つようになりました。

インフレ鈍化・景気減速傾向を踏まえて基本は(c)(d)を想定します。
強い数値となればサプライズですが、7/24米国PMI速報値(強)でもドル円下落継続でしたが、相場環境が円ポジション調整主導だったため。

つまり、現状の日足下降ダウが崩れるまで、(a)ドル円上昇しても一時的になりやすいです。
従って、弱い結果は素直にドル円下落しやすいですが、強い数値は判断が難しい。少なくとも発表前の4H足や日足抵抗との位置関係から上げ余地の把握が必要と考えます。

(a)強い数値→初回9月利下げ期待織り込み剥落→巻き戻しのドル円上昇
(b)強い数値→リスクオフ株下落(円キャリー巻き戻し)ならドル円上げ止まりから下落
(c)弱い数値→初回7月利下げ・年内3回利下げ観測高進→ドル円下落
(d)弱い数値→リスクオン株上昇(円キャリー促進)→ドル円下げ止まりから上昇

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

東京マーケット(9:00~15:00)

9:55 五十日仲値
仲値に向けて実需勢のドル買い円売り、仲値通過後にドル売り円買いの傾向多いものの、逆の動きになることもあり。

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

16:02~要人発言
林官房長官
引き続き緊張感持ち動向注視と官房長官、日経平均が今年最大の下落(Reuters

【考察】ドル円急落でも従来通りの発言のため、事実上の円安牽制発言。ドル円下落継続

19:00 報道
日銀、追加利上げの時期模索 7月論も浮上(日本経済新聞

【考察】前日ロイター報道と同じ内容のためか、ドル円反応薄。

21:30 経済指標
米国耐久財受注速報値:設備投資の先行指標
前月比:前回0.1%(改定)、予想0.6%、結果-6.6%(×)
コア前月比:前回-0.1%(改定-)、予想0.2%、結果0.5%(◎)

21:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数
失業者が初めて申請した失業保険給付の申請件数を示す指標。失業率や非農業部門雇用者数の先行指標として注目されます。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回24.3万件(改定24.5)、予想24.0万件、結果23.5万件(◎)

米国失業保険継続申請件数
新規申請後に失業保険の申請を継続している人数を示す指標。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回186.7万件(改定186.0)、予想186.8万件、結果185.1万件(◎)

21:30 経済指標
米国実質GDP速報値(過去の発表日:1/252/283/284/255/30, 6/27, 7/25)
速報値は改定値や確報値に比べて注目度高いですが、改定値や確報値でもドル円が大きく動くことあり。「予想より高い数値→ドル買い材料」、「予想より低い数値→ドル売り材料」

【6/12米国FOMC公表2024年見通し:実質GDP2.1%、コアPCE2.6%】
実質GDP(=名目GDP-物価変動):前回1.4%、予想2.0%、結果2.8%(◎)
個人消費:前回1.5%、予想2.0%、結果2.3%(◎)
GDPデフレータ(=名目GDP/実質GDP):前回3.1%、予想2.6%、結果2.3%(×)
PCEコアデフレータ(FRB目標2.0%):前回3.7%、予想2.7%、結果2.9%(○)
米GDP、4-6月に予想を上回る伸び-堅調な需要浮き彫り(Bloomberg

【考察】
発表前:直前152.85。
発表後:総じて強い数値(対予想:GDPデフレータのみ弱い。対前回:GDPデフレータとPCEコアデフレータが弱い)
かつ、米国新規失業保険申請件数・米国失業保険継続申請件数(強)も加わり、初動153.72へ急騰。

24:17~要人発言
米国イエレン財務長官
イエレン米財務長官、G7の約束事を指摘-トランプ氏のドル高批判に(Bloomberg

【考察】ドル高容認、為替介入牽制発言

26:00 経済指標
米国7年債入札(Upcoming Auctions
「最高落札利回り低い、応札倍率高い、テールが短い→入札好調→国債価格上昇→利回り低下→ドル売り材料」
「最高落札利回り高い、応札倍率低い、テールが長い→入札不調→国債価格低下→利回り上昇→ドル買い材料」
「国債入札→市場へ国債供給イベント→国債価格下落→利回り上昇」にもなりやすいことから、「入札前から織り込み→利回り上昇→ドル買い」や「入札通過→Sell the factドル売り」が生じることもあります。

発行額(Offering Amount):440億ドル
最高落札利回り(High Yield):前回4.276%、結果4.162%(◎)
応札倍率(Bid to Cover Ratio, 応札額/発行額):前回2.58倍、結果2.64倍(◎)
外国中銀など間接入札者の落札比率(Indirect Bidder):前回69.7%、結果74.4%(◎)
テール(Bid利回りと落札利回りの差):前回-0.3 bps、結果-0.4bps(◎)。4.162-4.166=-0.004
WI:4.166%

【考察】入札好調。ドル円下落。

<まとめ>
東京マーケット:
日足始値153.89
取引開始直後はスワップ3倍デーの決済が入ったためか153.53へ下押し。
一方、前日は5/16以来の153円台到達、かつ複数の日足押し安値を一気にブレイクして切番154.00付近で引けたことから、五十日仲値に向けて安値ドル調達需要(日本実需、新NISA等の米国投資目的)の押し目買い入り、東京始値153.91、日通し・東京高値153.97付け。

しかしながら、7/23、7/24同様、7月日銀会合の金融政策正常化観測から投機筋円売りポジション調整(推測)、株下落(円キャリー巻き戻し)に伴う強い円買いは収まらずドル円下落が続いて東京安値152.23付け。
ただ、4H足押し安値152.19付近への急落で押し目買いも入り引けに掛けて上昇しました。
東京終値152.74

【日本市況】決算警戒で日経平均1200円超下落、円152円台に上昇(Bloomberg

欧米マーケット:
欧州オープン直後、152.94付けるも153台乗せ失敗。日足レンジ安値152.98に対して1H足ダウで下抜け完成。
欧州株下落(円キャリー巻き戻し)に連れて、日足安値151.94付けの152円台割れ。

米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数、米国実質GDP速報値(強)を受けるとソフトランディング期待から米国株上昇(円キャリー促進)、初動153.72から日通し高値154.20へ急騰し、米国イエレン財務長官のドル高容認・為替介入牽制発言も後押しして日足高値154.32を付け。
その後、米国7年債入札(強)を受けて下押しから揉み合いで引けました。
日足終値153.90

総じて、7/23~7/25欧州序盤まで、7月日銀会合の金融政策正常化観測から投機筋円売りポジション調整(推測)、株下落(円キャリー巻き戻し)に伴う強い円買いが続いていましたが、切番152.00、月足・週足抵抗151.86付近でドル円急落ストップ。
つまり、152.00付近が円キャリー巻き戻しが防衛水準だったことで、米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数、米国実質GDP速報値(強)に素直に反応してドル円急騰したと推測します。

【米国市況】ハイテク株中心に売り、中長期債上昇-ドル154円近辺(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル売買交錯>
買い材料:
・安値ドル調達需要(日本実需、新NISA等の米国投資目的)
・米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数、米国実質GDP速報値(強)
・米国イエレン財務長官のドル高容認発言
・原油先物価格上昇

売り材料:
・米国7年債入札(強)

<円売買交錯>
買い材料:
・米国バイデン氏の米大統領選撤退からハリス氏の当選確率大幅上昇を受けた米国政情不安リスクオフ、トランプトレード(株高、ドル高、金利高)の一部巻き戻し
・7/24、7月日銀会合で追加利上げ、向こう数年間に債券購入額ほぼ半減報道の影響継続
・日本株下落(円キャリー巻き戻し)
・林官房長官の円安牽制発言
・日銀、追加利上げの時期7月論報道

売り材料:
・リスクオン米国株上昇(円キャリー促進)
・米国イエレン財務長官の為替介入牽制発言
・原油先物価格上昇
・恒常的円売り(日米金融政策差、新NISA等海外投資急増[特に夏ボーナス買い]、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念)

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回7月31日公表:据え置き93.3→93.3%
初回利下げ観測9月18日公表:25bp引き下げ91.4→89.6%
年内利下げ観測:25bps×3回=75bps → 政策金利450~475bps相当

テクニカル分析

Trade

  • 月足:7月陰線形成中。上昇トレンド。
  • 週足:7/22週、陰線形成中。レンジ。
  • 日足:7/24大陰線。下降トレンド。
  • 4H足:下降トレンド。
  • 1H足:下降トレンド。
  • 15M足:レンジ。

【シナリオ】
①Long
(A)1H足レンジ高値154.019かつ1H足20MAをダウ上昇→目標4H足ダウ安値154.568
(B)日足安値153.106付近へ下落→転換上昇→目標4H足ダウ安値153.470

②Short
(C)4H足ダウ安値154.568付近へ上昇→転換下落→1H足レンジ高値154.019
(D)日足安値153.106をダウ下落→目標4H足押し安値152.185

7月通算:15勝8敗、勝率65.2%、+269.9pips

(Trading View)

コメント

タイトルとURLをコピーしました