2024年8月28日(水)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

1.経済指標
・日銀、国債買入オペ通知
・米国5年債入札

2.要人発言
・政府、日銀
・FRB

3.その他
・TOM効果:株式投資の月末安・月初高アノマリー。期間は営業日ベースでの月末3日間程度、月初3日間程度。月末の損益確定、毎月一定額を積み立てる投資信託などの購入が月末・月初に集中する傾向があります。「株買い→円売り材料」、「株売り→円買い材料」の傾向。特に2024年1月から新NISAが始まり全世界株への資金流入が一気に進んでおり、「株買い→円売り→ドル円上昇」しやすいと推測されます。
・スポット応当日
・米国エヌビディア決算
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)
・月末最終週、大口投資家のポジション調整
・スワップ4倍デー

4.参考情報
最近の相場を動かす主な材料は、①円キャリー取引(促進or巻き戻し)、②米国労働市場、③米国経済成長、④インフレ、⑤地政学リスクに分類できます。
・来週は円下落か、米利下げ織り込み過ぎの修正でドルに上昇余地(Bloomberg
・【債券週間展望】長期金利上昇か、日銀正常化姿勢崩さず-米金利支え(Bloomberg
・【日本株週間展望】一進一退、市場を左右するエヌビディア決算を注視(Bloomberg

5.本日の注目材料
(1)8/27(火)マーケット影響
・クルスク原子力発電所が事故の恐れとのIAEA警告→リスクオフ米国債買い、円買い
・リビア石油生産停止の影響が過大評価だったことで巻き戻しの原油先物価格急落→ドル売り、円買い
・米国住宅価格指数、米国S&Pケースシラー住宅価格指数、米国リッチモンド連銀製造業指数(弱)、米国2年債入札(強)→ドル売り

本日もこの影響を引き継いでドル円下落優勢と考えますが、上値145.00付近はFRB9月利下げ期待を背景とする戻り売りが参入していることから、引き続き戻り売りが低リスクと考えます。

(2)地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)
7/30以降は中東情勢が悪化し、8/7以降はウクライナ情勢も一気に緊張が高まりました。
・米、イスラエルを防衛 イランが攻撃なら=大統領補佐官(Reuters
・ウクライナ大統領、ロシアとの戦争終結計画をバイデン氏に提示へ(Bloomberg

下記材料が想定されますが、最近の傾向は(a)ドル売り主導のドル円下落が生じており、中東戦争勃発となればドル円急落の可能性が高いと推測します。

(a)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
(b)他国から安全資産米国債買い需要→ドル買い
(c)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)→円売り
(d)世界的景気悪化懸念→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
(e)原油先物価格上昇→インフレ懸念→ドル買い
(f)原油先物価格上昇→日本貿易収支悪化→円売り

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

東京マーケット(9:00~15:00)

9:55 仲値
仲値に向けて実需勢のドル買い円売り、仲値通過後にドル売り円買いの傾向多いものの、逆の動きになることもあり。年末・月末スポット応当日は仲値に向けて売買交錯しやすい。

*スポット:直物為替(直物取引)。原則、売買を契約した日(約定日)から2営業日後に受け渡しをする外国為替取引のことです。

*スポット応当日:スポットの受け渡し日のこと。年末、月末や四半期末には仲値に向けた実需勢等の売買が交錯しやすく荒い値動きが生じる可能性があります。

10:10 経済指標
日銀、国債買入オペ通知(日本銀行)(日銀、オペレーション
(発表日:7/37/107/177/237/298/28/78/15, 8/21, 8/28)
3~5年債:前回3750億円、予想3750億円、結果3750億円(○)
5~10年債:前回4000億円、予想4000億円、結果4000億円(○)
10~25年債:前回1500億円、予想1500億円、結果1500億円(○)
25年超債:前回750億円、予想750億円、結果750億円(○)
物価連動債:前回600億円、予想600億円、結果600億円(○)

【考察】
発表前:据え置き期待の織り込み上昇。直前144.14
発表後:据え置き。上昇継続。

10:33~要人発言
氷見野日銀副総裁
高い緊張感で市場注視、見通し実現の確度高まれば緩和度調整=氷見野日銀副総裁(Reuters

【考察】ハト・タカ派のバランスを取った発言。但し、8/27(火)日銀基調的なインフレ率を捕捉するための指標(弱)のため、物価見通し実現の確度は低い。つまり、日銀早期追加利上げの可能性も低いと判断されドル円上昇。

14:15~要人発言
氷見野日銀副総裁
当面は高い緊張感で市場注視、やるべき最初の仕事-氷見野日銀副総裁(Bloomberg

【考察】ハト・タカ派のバランスを取った発言。日銀早期追加利上げの可能性は低いと判断されドル円上昇。

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

26:00 経済指標
米国5年債入札(Upcoming Auctions
「最高落札利回り低い、応札倍率高い、テールが短い→入札好調→国債価格上昇→利回り低下→ドル売り材料」
「最高落札利回り高い、応札倍率低い、テールが長い→入札不調→国債価格低下→利回り上昇→ドル買い材料」
「国債入札→市場へ国債供給イベント→国債価格下落→利回り上昇」にもなりやすいことから、「入札前から織り込み→利回り上昇→ドル買い」や「入札通過→Sell the factドル売り」が生じることもあります。

発行額(Offering Amount):700億ドル
最高落札利回り(High Yield):前回4.121%、結果3.645%(◎)
応札倍率(Bid to Cover Ratio, 応札額/発行額):前回2.40倍、結果2.41倍(◎)
外国中銀など間接入札者の落札比率(Indirect Bidder):前回67.25%、結果70.5%(◎)
テール(Bid利回りと落札利回りの差):前回+1.1 bps、結果-0.3bps(◎)。3.642-3.645=-0.003
WI:3.642%

【考察】入札好調。ドル円下落。

29:20 米国主要企業決算
NVIDIA
売上高:前回260.8億ドル、予想288.6億ドル、結果300億ドル(◎)
EPS:前回0.59ドル、予想0.65ドル、結果0.68ドル(◎)
エヌビディアの売上高見通し、高い市場予想には届かず(Bloomberg

【考察】強い数値。しかし、一部の過大な期待から材料出尽くしSell the factの株価下落が生じ、ドル円も小幅下落。

<まとめ>
東京マーケット:
日足始値143.97
取引開始直後から、前日影響(クルスク原子力発電所が事故の恐れとのIAEA警告、リビア石油生産停止の影響が過大評価だったことで巻き戻しの原油先物価格急落、米国住宅価格指数・米国S&Pケースシラー住宅価格指数・米国リッチモンド連銀製造業指数(弱)・米国2年債入札(強))を引き継いで、日通し安値143.68へ下落。
(4H足下降チャネル内、1H足下降トレンド形成)

一方、月末スポット応当日のドル買いフローの発生、日銀国債買いオペ通知期待の織り込み・予想通り据え置き、氷見野日銀副総裁の発言から日銀早期追加利上げの可能性低い(8/27(火)日銀基調的なインフレ率を捕捉するための指標(弱)のため、物価見通し実現の確度は低い)と判断され、日本株上昇(円キャリー促進)に連れて日通し高値144.54へ上昇して引けました。
(1H足下降トレンドから上昇トレンドへ転換)

【日本市況】円下落、日銀副総裁が市場配慮-エヌビディア控え様子見(Bloomberg

欧米マーケット:
欧州オープン直前、日通し高値144.61へ上昇。
しかし、欧州オープン後は、再び前日影響(クルスク原子力発電所が事故の恐れとのIAEA警告、リビア石油生産停止の影響が過大評価だったことで巻き戻しの原油先物価格急落、米国経済指標(弱))が材料視されたためか、日足戻り高値144.55かつ4H足20MAからの戻り売りに押されて144.06へ急落。(1H足下降トレンドから1H足レンジ形成)

ところが、原油先物価格が上昇に転じると米国債利回り急騰に連れて日足高値145.04へ上昇。
(1H足レンジブレイクして上昇チャネル形成。1H足レベルで上下に振らされる展開ですが、4H足レンジ内の動き)

NYオープンすると、本日引け後に控えるエヌビディア決算を前にポジション調整と推測される米国株下落(円キャリー巻き戻し)、米国債利回り上昇、前日同様に切番145.00付近はFRB9月利下げ期待を背景とする戻り売り交錯し、ドル円乱高下。
(1H足上昇チャネル内推移)

注目のエヌビディア決算は強い数値。しかし、一部の過大な期待から材料出尽くしSell the factの株価下落が生じ、ドル円も小幅下落となり引けました。
日足終値144.59
(4H足三角持ち合い形成)

【米国市況】株反落、エヌビディア決算控え荒い値動き-144円台後半(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル買い優勢>
買い材料:
・8/23米国パウエルFRB議長発言で過剰に織り込んだFRB9月0.5%利下げ期待一部剥落
・月末スポット応当日のドル買いフロー

売り材料:
・8/27リビア石油生産停止の影響過大評価→巻き戻し原油先物価格急落→インフレ懸念後退
・8/27米国住宅価格指数、米国S&Pケースシラー住宅価格指数、米国リッチモンド連銀製造業指数(弱)
・8/27米国2年債入札(強)
・米国5年債入札(強)
・原油先物価格下落→インフレ懸念後退

<円売り優勢>
買い材料:
・8/27IAEA:クルスク原子力発電所、事故の恐れ→地政学リスクオフ
・8/27リビア石油生産停止の影響過大評価→巻き戻し原油先物価格急落→日本貿易収支改善
・原油先物価格下落→日本貿易収支改善

売り材料:
・日銀国債買いオペ通知据え置き
・氷見野日銀副総裁のハト・タカ派のバランスを取った発言(日銀早期追加利上げの可能性は低いと判断)→日本株上昇(円キャリー促進)
・構造的円売り(日米金融政策差[日本実質金利マイナスで金融緩和環境継続]、新NISA等海外投資急増、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足・パイロット不足・クレジットカード利用赤字によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念)

日本の観光立国化阻むパイロット不足、即戦力の外国人には給与の壁(Bloomberg
カード各社、訪日客増え赤字拡大 300億円規模に(日本経済新聞

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回9月18日公表:25bps引き下げ65.5→63.5%、50bps引き下げ34.5→36.5%
年内利下げ観測:25bps×4回=100bps → 政策金利425~450bps相当

テクニカル分析

Trade

  • 月足:8月陰線形成中。上昇チャネル。20MA付近。
  • 週足:8/26週、陰線形成中。下降トレンド。押し安値付近。
  • 日足:8/27陰線。レンジ下限付近。BBスクイーズ。
  • 4H足:下降チャネル。BB-1σ付近
  • 1H足:下降トレンド。4H足レンジ内。
  • 15M足:下降チャネル。

【シナリオ】
①Long
(A)日足レンジ安値144.225をダウ上昇→目標日足戻り高値144.548
(B)日足戻り高値144.548かつ4H足20MAをダウ上昇→目標4H足レンジ高値145.048

②Short
(C)日足戻り高値144.548付近へ上昇→転換下落→目標4H足押し安値143.710
(D)日足安値143.918をダウ下落→目標4H足押し安値ヒゲ先143.446

本日:1勝2敗、-13.0pips
8月通算:21勝15敗、勝率58.3%、RR 1.97、+456.4pips

(Trading View)

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