ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
(1)経済指標
・日銀、国債買入オペ通知
・米国住宅着工、米国住宅建築許可
・米国鉱工業生産指数、米国設備稼働率
・米国アトランタ連銀GDP Now
・米国20年債入札
・米国ベージュブック(地区連銀経済報告)
(2)要人発言
・政府、日銀円安牽制発言
・FRB要人発言
(3)その他
・スワップ3倍デー
・米国主要企業決算
・欧州政情不安リスクオフ
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア、台中)
(4)参考情報
来週の円は上昇か、介入警戒やリスク環境悪化-祝日と米指標に注意(Bloomberg)
【債券週間展望】長期金利は低下か、円安一服で7月利上げ観測が後退(Bloomberg)
【日本株週間展望】弱含み、為替の円高を警戒-企業決算は下支え(Bloomberg)
(5)本日の注目材料
①トランプトレード(株高、ドル高、金利高)影響
7/13トランプ氏銃撃事件から大統領返り咲き確率増を受けて、7/15からトランプラリーが相場の材料になりました。
Real Clear Politicsの掛けオッズでは、7/16時点の大統領勝利確率はトランプ氏66.8%、バイデン大統領17.8%と圧倒的な差になっており、市場ではトランプ氏の当選織り込みが進んでいます。トランプラリーの織り込みが一旦収束するまではドル円上昇の支援材料と考えます。
(a)トランプ氏の大統領返り咲き確率増→インフレ懸念→ドル買い
(b)海外投資家の安全資産米国債買い需要→リスクオフ自国通貨売り・ドル買い
(c)トランプ氏の大統領返り咲き確率増→株上昇(円キャリー促進)→円売り
②政府・日銀為替介入
7/11(木)だけでなく7/12(金)も実介入がほぼ確定しました(介入観測起点:7/11は160.77、7/12は158.65)。
従って、まずは7/12介入観測起点158.65付近からの介入警戒感は続く見込みです。
但し、前日の小売売上高(強)やトランプラリーに連れて159円台乗せをキープ出来れば、7/11介入観測起点161.77を目指す流れを想定します。
②米国経済指標
7/15米国パウエルFRB議長のインフレに自信を深めたとのハト派発言あるも、「データ次第」のスタンスは変わっていません。
最近の指標はインフレ鈍化・景気減速傾向があることから、基本は(c)(d)を想定します。強い数値となればサプライズであり(a)(b)にも警戒したい。
一方、前日の米国小売売上高(強)でドル円上昇しても、政府・日銀為替介入警戒感から159円台目前で上値が抑えられました。よって、(a)(d)ドル円上昇しても一時的になりやすい環境だと考えます。
(a)強い数値→FRB利下げ期待織り込み剥落→巻き戻しのドル円上昇
(b)強い数値→リスクオフ株下落(円キャリー巻き戻し)ならドル円上げ止まりから下落
(c)弱い数値→初回7月FOMC利下げ・年内3回利下げ観測高進→ドル円急落
(d)弱い数値→リスクオン株上昇(円キャリー促進)→ドル円下げ止まりから上昇
③FRB要人発言
7/15米国パウエルFRB議長のインフレに自信を深めたとのハト派発言あるも、「データ次第」のスタンスは変わらず。
本日の米国経済指標を受けて、「市場の初回7月FOMC利下げ・年内3回利下げ観測」を後押しするか注目したい。
最近指標のインフレ鈍化・景気減速傾向を受けてハト派発言が見込まれますが、ドル円下落よりも(c)ドル円上昇優位と想定します。
(a)タカ派発言→市場利下げ織り込み剥落→ドル円上昇
(b)ハト派発言→市場の初回7月FOMC利下げ・年内3回利下げ観測高進ならドル円下落
(c)ハト派発言→リスクオン株上昇(円キャリー促進)→円売り→ドル円上昇
米利下げ、年内3回を織り込む動き強まる-ゴールドマンの分析受け(Bloomberg)
マーケット動向
経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)
東京マーケット前
6:02~要人発言
米国トランプ次期大統領候補
トランプ氏、FRB議長の任期満了前の解任は目指さず-円安にも言及(Bloomberg)
【考察】FRB9月利下げ牽制、ドル高牽制と円安牽制発言交錯
東京マーケット(9:00~15:00)
10:10 経済指標
日銀、国債買入オペ通知(日本銀行)
(発表日:6/7, 6/12, 6/18, 6/24, 6/28, 7/3, 7/10, 7/17, 7/23, 7/29)
1~3年債:前回3750億円、結果3750億円(○)
5~10年債:前回4250億円、結果4250億円(○)
10~25年債:前回1500億円、結果1500億円(○)
【考察】
発表前:米国トランプ次期大統領候補のFRB9月利下げ牽制・ドル高牽制・円安牽制発言交錯するも、7月日銀会合まで据え置き織り込み優勢となりドル円上昇。直前158.53
発表後:据え置き。リスクオン株上昇(円キャリー促進)に日通し・東京高値158.63付け。
しかし、米国トランプ次期大統領候補の円安牽制発言が再び意識され、加えて下記の河野デジタル相の円安是正・利上げ発言、米国バイデン政権の対中規制で同盟国へ警告が伝わると、リスクオフ日本株下落(円キャリー巻き戻し)に連れてドル円急落に転じました。
11:41 要人発言
日銀は円安是正のため利上げを-河野デジタル相単独インタビュー(Bloomberg)
【考察】海外では次期首相候補と認識されている河野氏の発言であるためか、影響大きくドル円下落。
12:42 報道
米、対中半導体規制でさらに厳しいルール検討と同盟国に警告-関係者(Bloomberg)
【考察】リスクオフ日本株下落(円キャリー巻き戻し)に連れてドル円下落。
欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)
17:26~要人発言
神田財務官
(過去の発言:6/20, 6/21, 6/24, 6/26, 7/2, 7/11, 7/12, 7/17)
:前回7/12円安牽制発言。為替介入有無コメント拒否
為替介入、今後も辞さず 回数や頻度制限なし、神田財務官(共同通信)
【考察】円安牽制発言。ドル円下落。
18:31~要人発言
米国ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁(2024年FOMC投票権あり)
(過去の発言:5/6, 5/16, 5/30, 6/18, 7/1, 7/3, 7/5, 7/17)
:政策スタンスは中立。前回7/5タカ派発言
NY連銀総裁、インフレ低下さらに多くのデータで確認したい-WSJ(Bloomberg)
NY連銀総裁、数カ月以内に利下げ妥当となる可能性指摘=WSJ(Reuters)
【考察】ディスインフレから利下げ前向きのハト派発言と、追加データ必要とするスタンスのタカ派発言。最近のFRB要人ハト派発言が増えてきた中で、タカ派発言が材料視されドル円下げ止まりから上昇。
21:30 経済指標
米国住宅着工
住宅購入に伴い家電などの耐久消費財も購入されることが多く、個人消費への波及効果が大きいため注目されます。また、最近はFRB当局者が住宅関連指標をインフレ把握のために注目していることから重要度が上がっています。
件数:前回127.7万件(改定131.4)、予想131.0万件、結果135.3万件(◎)
前月比:前回-5.5%(改定-4.6)、予想1.8%、結果3.0%(◎)
米国住宅建築許可
件数:前回138.6万件(改定139.9)、予想140.0万件、結果144.6万件(◎)
前月比:前回-3.8%(改定-2.8)、予想-0.3%、結果3.4%(◎)
【考察】強い数値。ドル円上昇。
22:15 経済指標
米国鉱工業生産指数
鉱工業部門の生産動向を数値化したもので景気実態を把握する速報性に優れることから注目度が高い。
前回0.9%(改定)、予想0.4%、結果0.6%(○)
米国設備稼働率
生産能力に対する実際の生産量の比率。設備投資とインフレの先行指標であることから注目度高い。
前回78.7%(改定78.3)、予想78.5%、結果78.8%(◎)
【考察】強い数値。
22:21~要人発言
米国バーキン・リッチモンド連銀総裁(2024年FOMC投票権あり)
(過去の発言:6/18, 6/21, 6/28, 7/17)
:政策スタンスはタカ派。前回6/28タカ派発言。
バーキン総裁、ディスインフレの広がりを歓迎ー持続の証左求める(Bloomberg)
【考察】ディスインフレから利下げ前向きのハト派発言と、追加データ必要とするスタンスのタカ派発言。米国ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁と同じスタンス。
22:35~要人発言
米国ウォラーFRB理事(Fed News & Events, Calendar)
(過去の発言:3/1, 6/24, 7/17)
:政策スタンスは中立。前回6/24金融政策や経済についてコメントなし。
ウォラーFRB理事、利下げが可能になる地点に「近づきつつある」(Bloomberg)
【考察】利下げ前向きのハト派発言、追加データ必要とするタカ派発言。米国ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、米国バーキン・リッチモンド連銀総裁と同じスタンス。
24:10 経済指標
米国アトランタ連銀GDP Now(US Atlanta Fed)(Investing.com)
米国アトランタ連銀が各種経済指標を基に算出した米国実質GDPの先行指標です。比較的精度が高いことから市場の注目度が上がっています。
(発表日; 7/1, 7/3, 7/10, 7/16, 7/17, 7/24, 7/26)
Q2:前回2.5%、予想2.5%、結果2.7%(◎)
【考察】強い数値。
26:00 経済指標
米国20年債入札(Upcoming Auctions)
「最高落札利回り低い、応札倍率高い、テールが短い→入札好調→国債価格上昇→利回り低下→ドル売り材料」
「最高落札利回り高い、応札倍率低い、テールが長い→入札不調→国債価格低下→利回り上昇→ドル買い材料」
「国債入札→市場へ国債供給イベント→国債価格下落→利回り上昇」にもなりやすいことから、「入札前から織り込み→利回り上昇→ドル買い」や「入札通過→Sell the factドル売り」が生じることもあります。
発行額(Offering Amount):130億ドル
最高落札利回り(High Yield):前回4.452%、結果4.466%(×)
応札倍率Bid to Cover Ratio, 応札額/発行額):前回2.74倍、結果2.68倍(×)
外国中銀など間接入札者の落札比率(Indirect Bidder):前回77.89%、結果77.2%(×)
テール(Bid利回りと落札利回りの差):前回-2.8bps、結果-0.1bps(×)。4.466-4.467=-0.1
WI:4.467%
【考察】入札不調。ドル円上昇。
27:00 要人発言
米国ベージュブック(地区連銀経済報告)
FOMC開催の2週間前に公表。政策金利決定の材料とされるため注目度大
米地区連銀経済報告:経済はわずかに拡大-物価は総じて緩慢な伸び(Bloomberg)
【考察】景気減速懸念。ドル円下落。
<まとめ>
東京マーケット:
日足始値158.33
米国トランプ次期大統領候補のFRB9月利下げ牽制、ドル高牽制と円安牽制発言交錯するも、日銀国債買入オペ据え置き織り込みが強くドル円上昇し東京始値158.36スタート。
日銀国債買入オペ通知は予想通り据え置きとなり、リスクオン株上昇(円キャリー促進)に日通し・東京高値158.63付け
しかし、市場のFRB9月利下げ織り込み変化なく、米国トランプ次期大統領候補の円安牽制発言が再び意識され、加えて河野デジタル相の円安是正・利上げ発言、米国バイデン政権の対中規制強化が伝わると、リスクオフ日本株下落(円キャリー巻き戻し)に連れてドル円下落に転じました。また、この急落に乗じた政府・日銀為替介入観測もありますが不明。
東京終値157.90
【日本市況】TOPIXが続伸、債券は中長期債中心に下落-円は上昇(Bloomberg)
円が1%余り上昇、河野大臣の利上げ要求で全面高-156円台前半(Bloomberg)
欧米マーケット:
欧州オープン後には、7/15から続く中国景気減速波及によるリスクオフ欧州株下落(円キャリー巻き戻し)も加わり、日通し安値156.10へ急落。
その後、FRB要人ハト・タカ派発言、米国住宅着工・米国住宅建築許可(強)、米国鉱工業生産指数・米国設備稼働率(強)、米国バイデン政権の対中規制強化による米国株下落(円キャリー巻き戻し)が交錯すると、切番156.00や日足ダウ高値156.10付近からの押し目買いも入りドル円揉み合い。
引け前の米国ベージュブックで景気減速懸念が示唆されると日足安値156.06を付けました。
【米国市況】円が1カ月ぶり高値、156円台前半-半導体株は大幅下落(Bloomberg)
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
通貨強弱
<ドル売り優勢>
買い材料:
・7/13~トランプ氏銃撃事件からの復活→トランプ大統領返り咲き確率増→トランプトレード活発化→財政支出拡大、減税、規制緩和、対中関税増、不法移民抑制→インフレ懸念、米国景景気浮揚→株高、ドル高、金利高)
・米国トランプ次期大統領候補のFRB9月利下げ牽制発言
・米国ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、米国バーキン・リッチモンド連銀総裁・米国ウォラーFRB理事のタカ派発言
・米国住宅着工、米国住宅建築許可、米国鉱工業生産指数、米国設備稼働率(強)
・米国アトランタ連銀GDP Now(強)
・米国20年債入札(弱)
・原油先物価格上昇
売り材料:
・米国トランプ次期大統領候補のドル高牽制発言
・米国ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、米国バーキン・リッチモンド連銀総裁・米国ウォラーFRB理事のハト派発言
・米国ベージュブック:景気減速懸念
・FRB9月利下げ観測
<円買い優勢>
買い材料:
・米国トランプ次期大統領候補の円安牽制発言
・河野デジタル相の円安是正、利上げ発言
・神田財務官の円安牽制発言
・米国バイデン政権の対中規制強化で同盟国へ警告:リスクオフ日本株下落(円キャリー巻き戻し)
・7/15から続く中国景気減速波及によるリスクオフ欧州株下落
・米国バイデン政権の対中規制強化による米国株下落
売り材料:
・日銀、国債買い入れオペ通知:据え置き
・原油先物価格上昇
・恒常的円売り(日米金融政策差、新NISA等海外投資急増[特に夏ボーナス買い]、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足起因インバウンド関連の旅行収支悪化懸念)
政策金利市場織り込み
現行FRB政策金利525~550bps
2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool)
次回7月31日公表:据え置き93.3→95.3%
初回利下げ観測9月18日公表:25bp引き下げ89.6→95.3%
年内利下げ観測:25bps×3回=75bps → 政策金利450~475bps相当
米利下げ、年内3回を織り込む動き強まる-ゴールドマンの分析受け(Bloomberg)
テクニカル分析
Trade
- 月足:7月陰線形成中。上昇トレンド。
- 週足:7/15週、陽線形成中。上昇トレンド。
- 日足:7/16上長ヒゲ陽線。レンジ。
- 4H足:下降チャネル。
- 1H足:レンジ。
- 15M足:レンジ。
【シナリオ】
①Long
(A)1H足レンジ高値158.753をダウ上昇→目標4H足戻り高値159.111
(B)4H足押し安値157.705付近へ下落→転換上昇→目標日足安値158.014
②Short
(C)1H足押し安値158.339をダウ下落→目標日足安値158.014
7月通算:9勝5敗、勝率64.3%、+103.4pips
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