2024年8月21日(水)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

1.経済指標
・日本通関ベース貿易収支
・日銀、国債買入オペ通知
・米国雇用者数,基準改定値公表
・米国20年債入札
・米国FOMC議事要旨

2.要人発言
・政府、日銀(特に円安牽制、追加利上げ示唆)
・FRB

3.その他
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)
・スワップ3倍デー

4.参考情報
最近の相場を動かす主な材料は、①円キャリー取引(促進or巻き戻し)、②米国労働市場、③米国経済成長、④インフレ、⑤地政学リスクに分類できます。
・来週は円下落か、緩和織り込み修正でドル高余地-日米中銀トップ発言(Bloomberg
・【債券週間展望】長期金利は上昇か、リスク資産選好の流れが重しに(Bloomberg
・【日本株週間展望】上昇、米景気懸念が緩和-日米金融当局者が発言(Bloomberg

5.本日の注目材料
(1)8/20(火)マーケット影響
①カナダ消費者物価指数(前年比の対前回値弱)→カナダインフレ鈍化と判断→米国債利回り低下へ波及→ドル円下落
②本日公表の米国雇用者数・基準改定値大幅下方修正への警戒感→リスクオフ(株下落、債券買い)→ドル円下落

本日は米国雇用者数・基準改定値公表までは、織り込みドル円下落もしくは手控え小幅推移を想定します。但し、公表前にはショート勢の決済からドル円急上昇に注意したい。

(2)米国経済指標
本日注目は、米国雇用者数・基準改定値です。
普段は材料視されない改定値ですが、8/19に出た噂や8/20市場予想をきっかけに注目度が一気に上がりました。
大幅下方修正となればFRB利下げ観測に拍車が掛かる可能性があります。
市場予想の下方修正は36~100万人と幅広いですが、50.1万より下方修正なら過去15年で最大となり、サプライズとなりそうです。

ジャクソンホール講演に影響か-米雇用者数、基準改定で100万人減も(Bloomberg

し、(a),(b),(c)大幅下方修正となっても、ドル円下落・上昇が交錯する可能性があるため、株先物・株指数の動向とセットでドル円の方向性を判断したい。

(a)50.1万人より下方修正(サプライズ)→米国労働市場減速懸念→FRB9月大幅利下げ観測→ドル円急落
(b)50.1万人より下方修正(サプライズ)→FRB9月大幅利下げ観測好感の株上昇(円キャリー促進→ドル円上昇
(c)50.1万人より下方修正(サプライズ)→但し、前日のドル円下落で織り込み済み→Buy the factのドル円上昇
(d)市場予想下限36~50.1万人の下方修正→ドル円小幅下落か
(e)市場予想下限36万人よりも小さい下方修正(サプライズ)→8/19,8/20の騒ぎが無意味→米国労働市場堅調、ソフトランディング期待→ドル円急騰

(3)地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)
7/30以降は中東情勢が悪化し、8/7以降はウクライナ情勢も一気に緊張が高まりました。
・イラン、イスラエルへの報復急がない考え示唆-ハマス指導者殺害巡り(Bloomberg
・ロシア兵が大量投降、戦争開始後で最多-ウクライナ軍の越境攻撃続く(Bloomberg

下記材料が想定されますが、最近の傾向は(a)ドル売り主導のドル円下落が生じており、中東戦争勃発となればドル円急落の可能性が高いと推測します。

(a)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
(b)他国から安全資産米国債買い需要→ドル買い
(c)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)→円売り
(d)世界的景気悪化懸念→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
(e)原油先物価格上昇→インフレ懸念→ドル買い
(f)原油先物価格上昇→日本貿易収支悪化→円売り

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

8:50 経済指標
日本通関ベース貿易収支(輸出額から輸入額を差し引いた収支)
貿易赤字拡大は実需の円売り材料。
季調前:前回2240億円(改定-)、予想-3500億円、結果-6218億円(×)
季調済:前回-8168億円(改定-8196)、予想-7480億円、結果-7552億円(△)
輸出額9.6兆円、7月で過去最高 アジア向け半導体伸びる(日本経済新聞

【考察】弱い数値。

東京マーケット(9:00~15:00)

10:10 経済指標
日銀、国債買入オペ通知(日本銀行
(発表日:7/37/107/177/237/298/28/7, 8/15, 8/21, 8/28)
1~3年債:前回3500億円、予想3500億円、結果3500億円(○)
3~5年債:前回3750億円、予想3750億円、結果3750億円(○)
5~10年債:前回4000億円、予想4000億円、結果4000億円(○)

【考察】
発表前:据え置き期待織り込み入るも、1H足戻り高値145.48付近からの戻り売りと交錯し揉み合い。直前145.43
発表後:据え置き。揉み合いながらも1H足戻り高値145.48ブレイクし、ドル円上昇。

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

23:33 経済指標
米国雇用者数、基準改定値(U.S. Bureau of Labor Statistics
予想36~100万人、結果81.8万人(×)
米雇用者数、年間81万8000人下方修正へ-年次基準改定の速報値(Bloomberg

【考察】
発表前:1H足レンジ安値146.08や切番146.00付近への上昇後、弱い数値への警戒感からロング勢決済が入りドル円急落。予定の23:00になっても発表されず、アルゴリズム暴走、SNS上でデマも飛び交い、145.54~日足高値146.90の乱高下発生。直前145.61
発表後:50.1万より下方修正につき過去15年で最大のサプライズ。
初動はFRB9月大幅利下げ観測から株上昇(円キャリー促進)に連れて146.16へ上昇。しかし、米国雇用市場減速懸念のリスクオフ(米国債利回し低下→日米金利差縮小)を受けてドル円じり下げ。

26:00 経済指標
米国20年債入札(Upcoming Auctions
「最高落札利回り低い、応札倍率高い、テールが短い→入札好調→国債価格上昇→利回り低下→ドル売り材料」
「最高落札利回り高い、応札倍率低い、テールが長い→入札不調→国債価格低下→利回り上昇→ドル買い材料」
「国債入札→市場へ国債供給イベント→国債価格下落→利回り上昇」にもなりやすいことから、「入札前から織り込み→利回り上昇→ドル買い」や「入札通過→Sell the factドル売り」が生じることもあります。
発行額(Offering Amount):160億ドル
最高落札利回り(High Yield):前回4.466%、結果4.160%(◎)
応札倍率Bid to Cover Ratio, 応札額/発行額):前回2.68倍、結果2.54倍(×)
外国中銀など間接入札者の落札比率(Indirect Bidder):前回77.2%、結果71.0%(×)
テール(Bid利回りと落札利回りの差):前回-0.1bps、結果-0.1bps(○)。4.160-4.161=-0.001
WI:4.161%

【考察】総じて入札好調。ドル円下落

27:00 経済指標
米国FOMC議事要旨
(過去の発表日:1/32/214/105/22, 7/3, 8/21)
FOMC議事要旨、「幾人か」の当局者は7月利下げの論拠を指摘(Bloomberg

【考察】9月会合で複数人利下げ支持のハト派内容。ドル円下落

<まとめ>
東京マーケット:
日足始値145.23
取引開始後は前日欧米マーケットのリスクオフ(株下落、利回り低下)と日本通関ベース貿易収支(弱)が交錯しドル円乱高下から、東京オープン直後には日通し安値144.93を付けました(1H足レンジ形成)。

しかしながら、前日と同じく145円台は「2024年6月調査想定為替レート上期144.96(日本銀行、短観)」付近のためか強い材料出なければ下値目途と意識されている様子で、日銀国債買い入れオペ控えた織り込みや予想通り据え置きを受けた押し目買いが入り、ドル円上昇(1H足戻り高値145.49をブレイクし1H足上昇トレンド発生)。

一方、リスクオフ日本株下落も交錯したことで、強い上昇にはならず揉み合いながら日通し高値145.78を付けました。

【日本市況】株式下落、一時144円台へ円高進み業績懸念-債券は上昇(Bloomberg

欧米マーケット:
欧州オープン直後には、欧州株上昇に連れて日通し高値146.23を付けるも、4H足レンジ安値146.08到達で4H足下降ダウ完成や、切番146.00からの戻り売りも入り再び揉み合い。

本日注目の米国雇用者数・基準改定値発表が近づくとロング勢決済が入り、切番146.00付近からの戻り売りが強まって、1H20MA付近145.50へ急落(1H足上昇トレンドライン割れてレンジ形成)。

予定の23:00になっても米国雇用者数・基準改定値が発表されず、アルゴリズム暴走、SNS上ではデマも飛び交い、145.54~日足高値146.90の乱高下が発生。
約30分遅れての発表80.1万人下方修正は過去15年で最大のサプライズ。初動はFRB9月大幅利下げ観測から株上昇(円キャリー促進)に連れて146.16へ上昇。

しかし、米国雇用市場減速懸念のリスクオフ(米国株下落、米国債利回し低下→日米金利差縮小→ドル売り円買い)を受けてドル円急落。

更に、米国20年債入札(強)と米国FOMC議事要旨のハト派内容を受けて日足安値144.45を付けました。
一方、FRB9月大幅利下げ観測を好感した米国株上昇(円キャリー促進)の影響が強まり、ドル円急上昇し、145円台回復(1H足レンジ形成)。
日足終値145.29

【米国市況】株反発、9月利下げ観測強まる-ドル一時144円台半ば(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル売買交錯>
買い材料:

売り材料:
・米国雇用者数,基準改定値大幅下方修正→FRB9月大幅利下げ観測、米国景気減速懸念のリスクオフ(米国株下落、米国債利回し低下)
・米国20年債入札(強)
・米国FOMC議事要旨のハト派内容。
・原油先物価格下落→インフレ懸念後退

<円売買交錯>
買い材料:
・米国雇用者数,基準改定値大幅下方修正→FRB9月大幅利下げ観測、米国景気減速懸念のリスクオフ(米国株下落、米国債利回し低下)→日米金利差縮小
・原油先物価格下落→日本貿易収支改善

売り材料:
・日本通関ベース貿易収支(弱)→日銀早期追加利上げ観測後退
・2024年6月調査想定為替レート上期144.96(日本銀行、短観)以上→日本企業業績改善期待
・米国雇用者数,基準改定値大幅下方修正→FRB9月大幅利下げ観測好感→欧米株上昇
・恒常的円売り(日米金融政策差[日本実質金利マイナスで金融緩和環境継続]、新NISA等海外投資急増、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念)

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回9月18日公表:25bps引き下げ67.5→61.5%、50bps引き下げ32.5→38.5%
年内利下げ観測:25bps×4回=100bps → 政策金利425~450bps相当

テクニカル分析

Trade

  • 月足:8月陰線形成中。上昇チャネル。20MAから上昇中。
  • 週足:8/19週、陰線形成中。下降トレンド。
  • 日足:8/20陰線。20MA付近から下落しレンジ。
  • 4H足:下降トレンド。
  • 1H足:下降トレンド。
  • 15M足:下降トレンド。

【シナリオ】
①Long
(A)日足安値145.200をダウ上昇→目標1H足戻り高値145.488
(B)4H足押し安値144.310付近へ下落→転換上昇→目標1H足押し安値144.731

②Short
(C)切番145.00をダウ下落→目標1H足押し安値144.731
(D)1H足押し安値144.731をダウ下落→目標4H足押し安値144.310

本日トレードなし。
8月通算:16勝9敗、勝率64.0%、RR 1.94、+402.7pips

(Trading View)

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