2024年7月18日(木)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

(1)経済指標
・日本通関ベース貿易収支
・米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数
・米国フィラデルフィア連銀景況指数
・米国景気先行指数
・ECB理事会

(2)要人発言
・政府、日銀円安牽制発言
・FRB要人発言
・ラガルドECB総裁

(3)その他
・安値ドル調達需要(国内実需、新NISA等の米国投資目的)
・台湾主要企業決算
・米国主要企業決算
・欧州政情不安リスクオフ
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア、台中)

(4)参考情報
来週の円は上昇か、介入警戒やリスク環境悪化-祝日と米指標に注意(Bloomberg
【債券週間展望】長期金利は低下か、円安一服で7月利上げ観測が後退(Bloomberg
【日本株週間展望】弱含み、為替の円高を警戒-企業決算は下支え(Bloomberg

(5)本日の注目材料

①前日NYマーケットの影響
(a)米国トランプ次期大統領候補のドル高牽制、円安牽制→ドル売り、円買い
(b)河野デジタル相の円安是正、利上げ発言→投機筋円売りポジション巻き戻し→円買い
(c)米国バイデン政権の対中規制強化→リスクオフ株下落→キャリー巻き戻し円買い
(d) (a)~(c)に乗じた政府・日銀為替介入観測(未確定)
の影響が終日続いたことで、約2.5円急落しました。
日足レベルで下落トレンドに転換したことで、戻り売りが入りやすい相場環境に変化しました。
一方で、安値でドルを調達したい需要(国内実需、新NISA等の投資目的)も強いことから押し目買いも入りやすい。
よって、本日は乱高下しながらレンジを形成しやすいと推測します。

②トランプトレード(株高、ドル高、金利高)影響
7/13トランプ氏銃撃事件から大統領返り咲き確率増を受けて、7/15からトランプラリーが相場の材料になりました。
Real Clear Politicsの掛けオッズでは、7/17時点の大統領勝利確率はトランプ氏64%、バイデン大統領15%と圧倒的な差は変わらず、市場ではトランプ氏の当選織り込みが進んでいます。トランプラリーの織り込みが一旦収束するまではドル円上昇の支援材料と考えます。

(a)トランプ氏の大統領返り咲き確率増→インフレ懸念→ドル買い
(b)海外投資家の安全資産米国債買い需要→リスクオフ自国通貨売り・ドル買い
(c)トランプ氏の大統領返り咲き確率増→株上昇(円キャリー促進)→円売り

一方で、前日は、①トランプ発言(9月利下げ牽制、ドル高牽制、円安牽制等)が相場材料となりました。この材料消化までトランプトレードは一旦停滞するかも知れません。

トランプ氏が政権構想明かす、経済・防衛・外交網羅-FRB議長運命は(Bloomberg

③米国経済指標
最近の指標はインフレ鈍化・景気減速傾向ありますが、米国パウエルFRB議長を始め、FRB要人は総じて「利下げ前に追加データ必要」のスタンスが目立つようになりました。

本日も注目度の高い指標ありますが、インフレ鈍化・景気減速傾向を踏まえて基本は(c)(d)を想定します。
強い数値となればサプライズですが、7/16米国小売売上高(強)でもドル円上昇は初動のみ。よって、(a)ドル円上昇しても一時的になりやすいと考えます。

(a)強い数値→初回9月利下げ期待織り込み剥落→巻き戻しのドル円上昇
(b)強い数値→リスクオフ株下落(円キャリー巻き戻し)ならドル円上げ止まりから下落
(c)弱い数値→初回7月利下げ・年内3回利下げ観測高進→ドル円下落
(d)弱い数値→リスクオン株上昇(円キャリー促進)→ドル円下げ止まりから上昇

④FRB要人発言
7/15米国パウエルFRB議長発言を含め、FRB要人は総じて「利下げ前向きのハト派発言、追加データ必要とするタカ派発言」のスタンスが目立つようになりました。
既に市場は初回9月利下げを完全に織り込んでいることから、同様の発言であればドル円反応は小さく、以下の発言であればドル円は動きやすいと考えます。

(a)初回9月利下げ否定のタカ派発言→ドル円上昇
(b)初回7月利下げ、年内3回利下げ示唆のハト派発言→ドル円下落

米利下げ、年内3回を織り込む動き強まる-ゴールドマンの分析受け(Bloomberg

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

7:07 要人発言
バイデン米大統領、コロナ検査で陽性-ラスベガスでの演説取りやめ(Bloomberg

【考察】米国政情不安。ドル円下落。

8:50 経済指標
日本通関ベース貿易収支(輸出額から輸入額を差し引いた収支)
貿易赤字拡大は実需の円売り材料。
季調前:前回-12213億円(改定-12201)、予想-1870億円、結果2240億円(◎)
季調済:前回-6182億円(改定-6443)、予想-8200億円、結果-8168億円(○)
貿易収支、6月は2240億円の黒字 3カ月ぶり(日本経済新聞

東京マーケット(9:00~15:00)

14:34 台湾主要企業決算
TSMC
売上高:前回188.7億ドル、予想201.6億ドル、結果208.2億ドル(◎)
EPS:前回1.38ドル、予想1.40ドル、結果1.48ドル(◎)

15:19 要人発言
神山日銀大阪支店長
月末の決定会合「非常に重要」 国債購入の減額幅決定―日銀大阪支店長(時事通信

【考察】ハト派発言

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

21:15 経済指標
ECB理事会
(過去の速報発表日:6/157/279/1410/2612/141/253/74/11, 6/6, 7/18)
政策金利:前回4.25%、予想4.25%、結果4.25%(○)
ECB声明:タカ派

21:50~要人発言
ラガルドECB総裁
ECB、金利据え置き 9月会合巡り「何も決まっていない」と総裁(Reuters

21:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数
失業者が初めて申請した失業保険給付の申請件数を示す指標。失業率や非農業部門雇用者数の先行指標として注目されます。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回22.2万件(改定22.3)、予想22.9万件、結果24.3万件(×)

米国失業保険継続申請件数
新規申請後に失業保険の申請を継続している人数を示す指標。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回185.2万件(改定184.7)、予想185.5万件、結果186.7万件(×)

21:30 経済指標
米国フィラデルフィア連銀景況指数
米国ISM製造業購買担当者景気指数の先行指標。「予想より高い数値→ドル買い材料」、「予想より低い数値→ドル売り材料」
基準0、前回1.3(改定-)、予想3.0、結果13.9(◎)

【考察】
発表前:直前156.45
発表後:強弱混在。米国新規失業保険申請件数・米国失業保険継続申請件数(弱)で初動156.18へ下落。しかし、米国フィラデルフィア連銀景況指数(強)で1H足20MA付近からの押し目買い入り上昇。

23:00 経済指標
米国景気先行指数
前月比:前回-0.5%(改定-0.4)、予想-0.3%、結果-0.2%(◎)

23:04~要人発言
米国グールズビー・シカゴ連銀総裁(メスター・クリーブランド連銀総裁退任により2024年7月FOMC投票代行)
(発言:7/27/47/11, 7/12, 7/18)
:政策スタンスは中立。前回7/12ハト派発言
シカゴ連銀総裁、FRBは「黄金の道」危険にさらす-利下げなければ(Bloomberg

【考察】早期利下げ支持のハト派発言。但し、利下げ時期提示なし。

23:39 報道
米民主党幹部、バイデン氏が近く撤退表明すると予想-アクシオス(Bloomberg

【考察】Real Clear Politicsの掛けオッズでは、7/18時点の大統領勝利確率はトランプ氏63%で前日とほぼ変わらず、バイデン大統領は15から11%低下。代わりに、ハリス副大統領が17%へ急伸しました。

29:03 米国主要企業決算
ネットフリックス
売上高:前回93.78億ドル、予想95.3億ドル、結果95.6億ドル(◎)
EPS:前回5.28ドル、予想4.74ドル、結果4.88ドル(○)

<まとめ>
東京マーケット:
日足始値156.17
取引開始直後から前日ドル円下落材料(米国トランプ大統領候補のドル高牽制・円安牽制発言、河野デジタル相の円安是正・利上げ発言、米国バイデン政権の対中規制強化リスクオフ)の引き継ぎ、かつ米国バイデン大統領の新型コロナ陽性(米国政情不安リスクオフ)を受けてドル円急落し、日通し安値155.37を付けました。

一方で、安値でドル調達したい需要(日本実需、新NISA等の米国投資目的)、7月日銀会合では景気悪化懸念から追加利上げできないとの見方、恒常的円売り材料の継続から押し目買い意欲は強い。
そのためか、東京始値155.67を付けてからは、週足・日足押し安値155.61・日足20MA付近からの押し目買い入り一気に上昇して、日通し・東京高値156.58を付けました。

しかし、前日ドル円下落材料の影響は続き、4H足戻り高値156.57からの戻り売りに押されて引け。
東京終値156.04

【日本市況】円一時1カ月ぶり高値、日銀利上げ意識し債券安-株急落(Bloomberg

欧米マーケット:
7/15から続いていた中国景気減速波及が和らぎ、欧州株上昇(円キャリー促進)に連れてドル円上昇スタートし、日通し高値156.59付け。東京マーケットで一度弾かれた4H足戻り高値156.57であり、注目のECB理事会公表前の手控えから揉み合い。

米国新規失業保険申請件数・米国失業保険継続申請件数(弱)で初動156.18へ下落。しかし、米国フィラデルフィア連銀景況指数(強)で1H足20MA付近からの押し目買い入り全戻しから上昇継続。

NYマーケットオープン後、米国景気先行指数(強)で上昇継続。
また、米民主党幹部からバイデン氏が近く撤退表明予想が伝わると、大統領勝利確率はトランプ氏63%で前日とほぼ変わらず、バイデン大統領は15から11%低下。代わりに、ハリス副大統領が17%へ急伸しました。

トランプトレードのドル高・金利高ですが、米国株はポートフォリオ調整のためか急落。しかし、リスクオフ株下落の円キャリー巻き戻しみられず、ドル買い・円売り強く引けに掛けてドル円上昇継続し、日足高値157.40を付けなりました。

これは東京マーケット中にもみられた、「安値でドル調達したい需要(日本実需、新NISA等の米国投資目的)、7月日銀会合では景気悪化懸念から追加利上げできないとの見方、恒常的円売り材料の継続」が材料となったと推測します。

日足終値157.36(日足高値157.40-日足安値155.37=2.03)

再び勢い増すトランプトレード、注目すべき取引・銘柄-QuickTake(Bloomberg
【米国市況】株下落、ローテーションの動き一服-ドル157円台前半(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル買い優勢>
買い材料:
・7/13~トランプ氏銃撃事件からの復活→トランプ大統領返り咲き確率増→トランプトレード活発化→財政支出拡大、減税、規制緩和、対中関税増、不法移民抑制→インフレ懸念、米国景気浮揚→株高、ドル高、金利高)
・7/17~米国トランプ次期大統領候補のFRB9月利下げ牽制発言
・米国バイデン大統領、新型コロナ陽性→米国政情不安
・安値ドル調達需要(日本実需、新NISA等の米国投資目的)
・米国フィラデルフィア連銀景況指数、米国景気先行指数(強)
・米民主党幹部、バイデン氏が近く撤退表明報道:トランプトレード後押し

売り材料:
・7/17~米国トランプ次期大統領候補のドル高牽制発言
・米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数(弱)

<円売り優勢>
買い材料:
・7/17~米国トランプ次期大統領候補の円安牽制発言
・7/17~河野デジタル相の円安是正、利上げ発言
・米国バイデン大統領、新型コロナ陽性→米国政情不安リスクオフ
・日本通関ベース貿易収支(強)
・リスクオフ日本株下落(円キャリー巻き戻し)

売り材料:
・神山日銀大阪支店長のハト派発言
・恒常的円売り(日米金融政策差、新NISA等海外投資急増[特に夏ボーナス買い]、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足起因インバウンド関連の旅行収支悪化懸念)

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回7月31日公表:据え置き95.3→95.3%
初回利下げ観測9月18日公表:25bp引き下げ95.3→93.5%
年内利下げ観測:25bps×3回=75bps → 政策金利450~475bps相当

米利下げ、年内3回を織り込む動き強まる-ゴールドマンの分析受け(Bloomberg

テクニカル分析

Trade

  • 月足:7月陰線形成中。上昇トレンド。
  • 週足:7/15週、陰線形成中。上昇トレンド。
  • 日足:7/17大陰線。下降トレンド。
  • 4H足:下降トレンド。
  • 1H足:下降チャネル。
  • 15M足:レンジ。

【シナリオ】
①Long
(A)1H足戻り高値156.744かつ1H足20MAをダウ上昇→目標4H足レンジ安値157.164
(B)4H足レンジ安値157.164かつ4H足20MAをダウ上昇→目標4H足レンジ安値157.705

②Short
(C)1H足戻り高値156.744付近へ上昇→転換下落→目標日足安値156.060
(D)日足安値156.060をダウ下落→目標日足押し安値155.608

7月通算:11勝5敗、勝率68.8%、+155.1pips

(Trading View)

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