2024年7月16日(火)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

(1)経済指標
・米国輸入、輸出物価指数
・米国小売売上高
・米国アトランタ連銀GDP Now
・カナダ消費者物価指数(CPI):6/25はドル円波及あり

(2)要人発言
・政府、日銀円安牽制発言
・FRB要人発言

(3)その他
・米国主要企業決算
・欧州政情不安リスクオフ
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア、台中)

(4)参考情報
来週の円は上昇か、介入警戒やリスク環境悪化-祝日と米指標に注意(Bloomberg
【債券週間展望】長期金利は低下か、円安一服で7月利上げ観測が後退(Bloomberg
【日本株週間展望】弱含み、為替の円高を警戒-企業決算は下支え(Bloomberg

(5)本日の注目材料

①トランプ相場(銃撃事件)影響
7/米国政情不安リスクオフの材料交錯ですが、(a)~(c)ドル買い、(f)円売りによるドル円上昇が想定されます。

(a)銃撃直後にも関わらずトランプ氏の力強さ→ドル買い
(b)海外投資家の安全資産米国債買い需要→リスクオフ自国通貨売り・ドル買い
(c)11月大統領選挙トランプ氏の当選後押し→インフレ懸念→米国債利回り上昇→ドル買い
(d)リスクオフ安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り

(e)リスクオフ株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
(f)銃撃直後にも関わらずトランプ氏の力強さ→株上昇(円キャリー促進)→円売り

安全資産と「トランプ」取引を投資家注視-ビットコイン6万ドル突破(Bloomberg

②政府・日銀円安牽制発言、為替介入
前日は警戒されていた日本祝日中の為替介入はありませんでしたが、7/11(木)実介入(ほぼ確定)、7/12(金)実介入観測(未確定)・対ユーロレートチェックから、介入警戒感は根強く、ドル円は上値が重い展開となりました。
本日は円安牽制発言も加わる見込みであり警戒感は続きそうです。
但し、前日米国株上昇を受けた日本株上昇(円キャリー促進)に連れてドル円上昇しやすいことから、上昇チャネル状でのドル円上昇を想定します。

②米国経済指標(特に小売売上高)
7/15米国パウエルFRB議長のインフレに自信を深めたとのハト派発言あるも、「データ次第」のスタンスは変わっていませんでした。

最近の指標はインフレ鈍化・景気減速傾向があることから、基本は(c)(d)を想定します。強い数値となればサプライズであり(a)(b)にも警戒したい。
一方、(a)(d)ドル円上昇しても、政府・日銀為替介入警戒感から上値が抑えられやすいことにも要注意。

(a)強い数値→FRB利下げ期待織り込み剥落→巻き戻しのドル円上昇
(b)強い数値→リスクオフ株下落(円キャリー巻き戻し)ならドル円上げ止まりから下落
(c)弱い数値→初回7月FOMC利下げ・年内3回利下げ観測高進→ドル円急落
(d)弱い数値→リスクオン株上昇(円キャリー促進)→ドル円下げ止まりから上昇

③FRB要人発言
7/15米国パウエルFRB議長のインフレに自信を深めたとのハト派発言あるも、「データ次第」のスタンスは変わっていませんでした。
本日の米国経済指標を受けて、「市場の初回7月FOMC利下げ・年内3回利下げ観測」を後押しするか注目したい。
最近指標のインフレ鈍化・景気減速傾向を受けてハト派発言が見込まれますが、ドル円下落よりも(c)ドル円上昇優位と想定します。

(a)タカ派発言→市場利下げ織り込み剥落→ドル円上昇
(b)ハト派発言→市場の初回7月FOMC利下げ・年内3回利下げ観測高進ならドル円下落
(c)ハト派発言→リスクオン株上昇(円キャリー促進)→円売り→ドル円上昇

0.5ポイントもレーダー内、9月の米利下げに備え始めた米国債市場(Bloomberg
米利下げ、年内3回を織り込む動き強まる-ゴールドマンの分析受け(Bloomberg

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

6:00~要人発言
米国デイリー・サンフランシスコ連銀総裁(2024年FOMC投票権あり)
(過去の発言:5/95/206/246/28, 7/11, 7/16)
:政策スタンスは中立。前回7/11派発言。
SF連銀総裁、インフレ目標に近づく確信強まる-到達はまだ(Bloomberg

【考察】利下げ前向きのハト派、追加データ必要のタカ派発言。

東京マーケット(9:00~15:00)

11:05~要人発言
林官房長官
為替介入について具体的に申し上げるのは控える=林官房長官(Reuters

【考察】円安牽制発言。従来通りでサプライズなくドル円反応薄。

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

18:03 要人発言
日銀当座預金増減要因と金融調節 (7月17日<水>分)(日本銀行
政府・日銀、12日に2.1兆円の円買い介入実施した可能性-2日連続(Bloomberg

【考察】7/11から2日連続で政府・日銀為替介入実施の可能性が濃厚となりました。7/12実介入は東京オープン直前と米国生産者物価指数発表直後の2回と推測されます。この発表を受けて、本日注目の米国小売売上高発表後の介入警戒感が高まりドル円揉み合い下落。
つまり、7/11と同様、為替介入は閑散相場だけでなくいつでもできるという政府・日銀の主張が読み取れます。正確な介入額は7/31外国為替平衡操作の実施状況で判明予定。

19:48 米国主要企業決算
バンク・オブ・アメリカ
売上高:前回258.0億ドル、予想252.4億ドル、結果254.0億ドル(○)
EPS:前回0.83ドル、予想0.80ドル、結果0.83ドル(○)

20:32 米国主要企業決算
モルガン・スタンレー
売上高:前回151.0億ドル、予想143.2億ドル、結果150.0億ドル(○)
EPS:前回2.02ドル、予想1.65ドル、結果1.82ドル(○)

21:30 経済指標
カナダ消費者物価指数(CPI)
米国と貿易関係等で密接な関係であり、サプライズの数値は米国インフレの先行指標となり得ることから注目されます。
特に注目度の高い米国経済指標発表がない日は米国債利回りに波及しやすい。但し、あくまでカナダ指標であり短期的な影響に留まりやすい。
前月比:前回0.6%、予想0.1%、結果-0.1%(×)
前年比:前回2.9%、予想2.8%、結果2.7%(×)
6/25発表は米国債利回り上昇波及あり

【考察】弱い数値。

21:30 経済指標
米国輸入物価指数
前月比:前回-0.4%(改定-0.2)、予想-0.2%、結果0.0%(◎)
前年比:前回1.1%(改定1.4)、予想1.0%、結果1.6%(◎)

米国輸出物価指数
前月比:前回-0.6%(改定-0.7)、予想%、結果-0.5%(◎)
前年比:前回0.6%(改定0.5)、予想-%、結果0.7%(◎)

【考察】全て強い数値。

21:30 経済指標
米国小売売上高
個人消費が米国GDPの約2/3を占めており、その動向を表す小売売上高の注目は高い。米国個人消費や米国消費者信頼感とも相関性があることからも重要な指標。特にコア指数が重要視されます。
(過去の発表日; 7/188/159/1410/1711/1512/141/172/153/144/155/15, 6/18, 7/16)
前月比:前回0.1%(改定0.3)、予想-0.2%、結果0.0%(◎)
コア前月比:前回-0.1%(改定0.1)、予想0.2%、結果0.4%(◎)

【考察】対予想かつ対前回で全て強い数値。前回値の上方修正あり。米国輸入物価指数・輸出物価指数(強)と併せてドル円急騰し、日足高値158.86付け。
しかし、6/25ドル円に影響を及ぼした同刻発表のカナダ消費者物価指数(CPI)は弱い数値もあり、FRB9月利下げ観測確率に変化なくドル円下落転換。

22:00~要人発言
IMF
今年の日本成長0.7%に下げ、世界据え置き-IMFが高金利長期化警告(Bloomberg

25:00 経済指標
米国アトランタ連銀GDP Now(US Atlanta Fed)(Investing.com
米国アトランタ連銀が各種経済指標を基に算出した米国実質GDPの先行指標です。比較的精度が高いことから市場の注目度が上がっています。
(発表日; 7/1, 7/3, 7/10, 7/16, 7/17, 7/24, 7/26)
Q2:前回2.0%、予想2.0%、結果2.5%(◎)

【考察】強い数値。

27:45~要人発言
米国クーグラーFRB理事(Fed News & Events, Calendar
(過去の発言:2/73/14/3, 6/18, 7/16)
:政策スタンスは中立。6/18タカ派発言
米インフレ、目標に向け低下 年内利下げ適切=クーグラーFRB理事(Reuters

【考察】利下げ前向きのハト派発言、最近のインフレ鈍化・景気減速経済指標を受けても金利維持で具体的な利下げ時期の示唆なしのタカ派発言。

<まとめ>
東京マーケット:
日足始値158.05
日本3連休明けは前日NYマーケットのトランプトレードの影響を受け、日本株上昇(円キャリー促進)、国内実需筋や米国商品投資買い用のドル需要を背景に、東京始値158.15から日通し・東京高値158.79へ一気に上昇。
一方で、上昇速度の勢いから、政府・日銀為替介入への警戒感も徐々に高まり、159円台手前では揉み合い。
東京終値158.73

【日本市況】株反発、トランプ氏勝利シナリオ意識し円下落-債券上昇(Bloomberg

欧米マーケット:
前日同様、中国景気減速波及のリスクオフ欧州株下落(円キャリー巻き戻し)に加え、日銀当座預金見通しが発表されると7/12政府・日銀為替介入実施の可能性が濃厚となり、本日米国小売売上高発表後の介入警戒感が高まりドル円揉み合い下落となりました。

米国輸入、輸出物価指数、米国小売売上高のサプライズ(強)を受けてドル円急騰し、日足高値158.86を付け。

しかし、米国小売売上高のサプライズ(強)ではFRB9月利下げ観測後退材料とはみなされず、6/25ドル円に影響を及ぼした同刻発表のカナダ消費者物価指数(CPI)も弱い数値もあって、引けに掛けて全戻しとなりました。
日足終値158.41

【米国市況】株続伸、小型株が群抜く10年ぶり快挙-ドル158円台前半(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル買い優勢>
買い材料:
・7/13トランプ氏銃撃事件からの復活→トランプ大統領返り咲き確率増→トランプトレード活発化→財政支出拡大、減税、規制緩和、対中関税増、不法移民抑制→インフレ懸念、米国景気浮揚→株高、金利高、ドル高)
・米国輸入、輸出物価指数、米国小売売上高(強)

売り材料:
・中国景気減速波及のリスクオフ欧州株下落→安全資産米国債買い→米国債利回り低下
・米国9月利下げ観測維持
・カナダ消費者物価指数(弱)
・原油先物価格下落

<円売り優勢>
買い材料:
・7/11政府、日銀為替介入警戒感継続
・7/12政府、日銀為替介入実施(ほぼ確定)、対ユーロレートチェックの影響
・林官房長官の円安牽制発言
・中国景気減速波及のリスクオフ欧州株下落(円キャリー巻き戻し)
・・原油先物価格下落

売り材料:
・トランプトレード波及:株上昇(円キャリー促進)
・恒常的円売り(日米金融政策差、新NISA等海外投資急増[特に夏ボーナス買い]、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念)
航空燃料の輸入拡大や輸送体制強化へ、供給不足で政府が行動計画案(Bloomberg

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回7月31日公表:据え置き91.2→93.3%
初回利下げ観測9月18日公表:25bp引き下げ89.4→89.6%
年内利下げ観測:25bps×3回=75bps → 政策金利450~475bps相当

米利下げ、年内3回を織り込む動き強まる-ゴールドマンの分析受け(Bloomberg

テクニカル分析

Trade

  • 月足:7月陰線形成中。上昇トレンド。
  • 週足:7/15週、陰線形成中。上昇トレンド。
  • 日足:7/15陰線コマ足。レンジ。
  • 4H足:レンジ。
  • 1H足:レンジ。
  • 15M足:下降チャネル。

【シナリオ】
①Long
(A)4H足戻り高値158.121ダウ上昇→目標1H足戻り高値158.339
(B)4H足レンジ安値ヒゲ先157.364付近へ下落→転換上昇→目標4H足レンジ安値157.705

②Short
(C)1H足戻り高値158.339付近へ上昇→転換下落→目標4H足戻り高値158.121
(D)4H足レンジ安値157.705をダウ下落→目標4H足レンジ安値ヒゲ先157.364

7月通算:8勝5敗、勝率61.5%、+84.8pips

(Trading View)

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