2024年8月13日(火)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

1.経済指標
・日本国内企業物価
・米国生産者物価指数(PPI)

2.要人発言
・政府、日銀
・FRB

3.その他
・米国主要企業決算
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)

4.参考情報
最近の相場を動かす主な材料は、①円キャリー取引(促進or巻き戻し)、②米国労働市場、③米国経済成長、④インフレ、⑤地政学リスクに分類できます。

・来週の円相場は下落か、米景気指標で過度な利下げ期待が後退の可能性(Bloomberg
・【債券週間展望】長期金利は上昇か、市場大混乱によるリスク回避反動(Bloomberg
・【日本株週間展望】反発、米経済への過度の悲観和らぐ-様子見も強い(Bloomberg

5.本日の注目材料

(1)8/12(月)マーケット影響
①8/11ボウマンFRB理事タカ派発言→ドル買い
②IMM通貨先物8/6時点で円売りポジションほぼ解消下、桜井元日銀審議委員の日銀年内利上げ無理発言→新規円売りポジション構築観測→円売り
③地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)→原油先物価格上昇→ドル買い、円売り
④イラン、24h以内のイスラエル攻撃可能性報道→中東地政学リスクオフ→安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り

前日は、①,②,③で日足安値146.63から日足高値148.23へ急上昇しましたが、④を受けて日足安値147.20へ急落。

本日は日本三連休明け。地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)や注目の米国生産者物価指数(PPI)を控えて、前日の様なドル円急上昇は起きにくく、ドル円下落継続もしくは様子見の小幅レンジスタートを想定します。

(2)米国経済指標
本日最大の注目は、米国生産者物価指数です。(2024年、米国生産者物価指数発表日のドル円動きまとめ)。

7/31FOMC公表声明において、従来インフレリスクのみへの焦点から、「インフレ・雇用両面のリスクに留意」へと修正されました。また、パウエルFRB議長会見では、従来のデータ次第としつつも9月利下げ示唆のハト派発言でした。従って、インフレ指標だけでなく雇用指標への注目度が更に高まっています。

そこで、FOMC以降の注目指標とドル円の動きを見ると、景気・雇用・インフレ弱に素直な反応を示し、インフレ強は材料視されませんでした。

8/1(木)
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数(雇用弱)→初動ドル円下落から全戻し→再下落
・米国ISM製造業景気指数(景気弱、雇用弱、インフレ強)→ドル円下落
8/2(金)
・米国雇用統計(雇用弱、インフレ弱)→ドル円急落
8/5(月)
・米国ISM非製造業景気指数(景気強、雇用強、インフレ強)→ドル円上昇
8/8(木)
・米国新規失業保険申請件数(雇用強)→ドル円上昇

(a)が材料視されにくいと仮定すると、(b)~(e)が想定されます。一方、最近のドル円は株価(円キャリー取引)と高相関であることから、株先物・株指数の動向とセットでドル円の方向性を判断する必要があります。

また、指標発表前水準と、切番・日足・4H足位置関係は重要です。これら抵抗に一気に達すると半値戻しや全戻しが頻繁に生じます。よって、上げ余地や下げ余地の事前把握が必要となります。

(a)前回や予想同程度の強い数値:ドル円反応薄 or 小幅上昇
(b)前回かつ予想を大きく上回るサプライズ強い数値→FRB9月利下げ期待織り込み剥落、株上昇(円キャリー促進)→ドル円上昇
(c)前回かつ予想を大きく上回るサプライズ強い数値→FRB高金利維持長期化嫌気→株下落(円キャリー巻き戻し)→ドル円下落
(d)弱い数値→FRB9月大幅利下げ観測、株上昇→ドル円下落
(e)弱い数値→米国景気減速懸念後退→株上昇(円キャリー促進)→ドル円上昇

(3)地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)
7/30以降は中東情勢が悪化し、8/7以降はウクライナ情勢も一気に緊張が高まりました。
・米軍が中東に空母急行、イスラエル防衛へ増援-ガザ停戦協議に先立ち(Bloomberg
・Iran could attack Israel in less than 24 hours, sources say, as Western powers issue Tehran a warning(FOX NEWS
・ウクライナ軍のロシア越境攻撃、ゼレンスキー大統領が公に認める(Bloomberg

下記材料が想定されますが、前日はイラン24h以内のイスラエル攻撃報道を受けると、(a)ドル売り主導のドル円急落が生じました。従って、中東戦争勃発となればドル円急落の可能性が高いと推測します。

(a)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
(b)他国から安全資産米国債買い需要→ドル買い
(c)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)→円売り
(d)世界的景気悪化懸念→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
(e)原油先物価格上昇→インフレ懸念→ドル買い
(f)原油先物価格上昇→日本貿易収支悪化→円売り

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

8:50 経済指標
日本国内企業物価
前月比:前回0.2%(改定)、予想0.4%、結果0.3%(△)
前年比:前回2.9%(改定)、予想3.2%、結果3.0%(△)

東京マーケット(9:00~15:00)

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

21:30 経済指標
米国生産者物価指数(PPI)
(発表日; 1/122/163/144/115/146/13, 7/12, 8/13)
国内生産者が販売する商品やサービスの価格を把握する指標。FRBが金融政策を決定する上でインフレ変動を把握する重要指標。コア指数が特に重要。PPIは米国消費者物価指数(CPI)の川上に相当する指標でCPIより注目度は低い。「予想より高い数値→ドル買い材料」、「予想より低い数値→ドル売り材料」

前月比:前回0.2%(改定)、予想0.2%、結果0.1%(×)
前年比:前回2.6%(改定2.7)、予想2.3%、結果2.2%(×)
コア前月比:前回0.4%(改定0.3)、予想0.2%、結果0.0%(×)
コア前年比:前回3.0%(改定)、予想2.7%、結果2.4%(×)
米PPI、市場予想を下回る伸び-サービス価格が今年初の低下(Bloomberg

【考察】
発表前:地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)や欧州株下落(円キャリー巻き戻し)に連れて)ドル円下落。直前147.43。
発表後:全て対前回かつ対予想より弱い数値のサプライズ。
初動147.08へ下落(米国債利回り低下、日米金利差縮小→ドル売り・円買い)。しかし、インフレ低下を好感して株上昇(円キャリー促進)し、ドル売り・円買い・円売り交錯。直後のイスラエル爆発報道で日通し安値146.85付け。

22:12 報道
イスラエル、テルアビブで爆発

【考察】中東地政学リスクオフ。ドル円下落。

26:44~要人発言
米国ボスティック・アトランタ連銀総裁(2024年FOMC投票権あり)
(過去の発言:6/27, 7/11, 8/13)
:政策スタンスはハト派。前回7/11金利見通しへのコメントなし。
アトランタ連銀総裁、「年内に」利下げ支持へ-「もう少しデータ」見たい(Bloomberg

【考察】利下げ前向きのハト派発言ですが、更にデータ必要・年末利下げは市場観測9月利下げと比較してタカ派発言。

<まとめ>
東京マーケット:
日足始値147.21
取引開始後は、8/12地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)、特にイランの24h以内イスラエル攻撃可能性報道の影響を引き継いで、日通し安値146.92へ下落。
一方、欧米各国は中東全面戦争回避に向けた協議を継続しており、ややリスクオフ後退のためか、切番147.00や4H足20MA付近で下げ止まり。

日本三連休明けは、8/12同様にIMM通貨先物8/6時点で円売りポジションがほぼ解消されたことが判明した状況下で、普段は何の影響力もない桜井元日銀審議委員の日銀年内利下げ無理発言(日銀追加利上げ観測後退)が、新規円売りポジションの材料として利用されたためか、日本株急上昇(円キャリー促進)に連れて、一気に日通し高値147.83へ上昇して引けました。
東京終値147.65

【日本市況】日経平均1200円高で暴落前水準回復、円安に振れ不安後退(Bloomberg

欧米マーケット:
欧州オープン直前、日足高値147.95を付けるも148円台乗せ失敗すると、ロング勢失望の決済、地政学リスクオフかつ欧州景気減速懸念を嫌気した欧州株下落(円キャリー巻き戻し)に連れてドル円揉み合いから下落。

注目の米国生産者物価指数は全て対前回かつ対予想より弱い数値のサプライズ。初動147.08へ下落し、直後のイスラエル爆発報道で日通し安値146.85付け。

NYオープンすると、米国生産者物価指数(サプライズ弱)を受けた米国債利回り低下、日米金利差縮小のドル売り・円買い初動下落。しかし、インフレ低下を好感して株上昇(円キャリー促進)し、ドル売り・円買い・円売り交錯。直後のイスラエル爆発報道で中東地政学リスクオフ悪化。
材料交錯しながらもドル売り主導で日足安値146.59へ下落し、引けに掛けて円売り主導で上昇となりました。
日足終値146.86

【米国市況】S&P500、4日間では今年最大の上げ-ドル146円台後半(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル売り優勢>
買い材料:

売り材料:
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)→安全資産米国債買い→米国債利回り低下
・米国生産者物価指数(サプライズ弱)
・原油供給超過観測→原油先物価格下落

<円売り優勢>
買い材料:
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)、欧州景気減速懸念→欧州株下落(円キャリー巻き戻し)
・原油供給超過観測→原油先物価格下落

売り材料:
・8/12桜井元日銀審議委員の日銀年内利上げ無理発言、IMM通貨先物8/6時点で円売りポジションほぼ解消→新規円売りポジション構築観測→日本株上昇(円キャリー促進)
・米国生産者物価指数(サプライズ弱)→株上昇
・恒常的円売り(日米金融政策差[日本実質金利マイナスで金融緩和環境継続]、新NISA等海外投資急増、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念)

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回9月18日公表:25bps引き下げ48.5→45.5%、50bps引き下げ51.5→54.5%
年内利下げ観測:25bps×4回=100bps → 政策金利425~450bps相当

テクニカル分析

Trade

  • 月足:8月陰線形成中。レンジ。
  • 週足:8/12週、陽線形成中。押し安値到達から反発上昇中。
  • 日足:8/12陽線。下降トレンド。BB+1σ付近で戻り売りの下落か20MAへ上昇の分岐点
  • 4H足:レンジ。アセンディングトライアングル形成。
  • 1H足:レンジ。
  • 15M足:レンジ。

【シナリオ】
①Long
(A)1H足レンジ高値147.301かつ1H足20MAをダウ上昇→目標4H足レンジ高値147.717
(B)4H足レンジ高値145.510付近へ下落→転換上昇→目標4H足レンジ安値146.004

②Short
(C)4H足押し安値146.625をダウ下落→目標4H足レンジ安値146.004
(D)4H足レンジ安値146.004をダウ下落→目標4H足レンジ高値145.510

本日:1勝0敗、+34.5pips
8月通算:11勝3敗、勝率78.6%、RR 1.89、+365.7pips

(Trading View)

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