2024年8月5日(月)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

1.経済指標
・日銀、政策委員会・金融政策決定会合議事要旨(6月13・14日分)
・米国PMI確報値(サービス業、総合)
・米国ISM非製造業景気指数

2.要人発言
・政府、日銀
・FRB

3.その他
・TOM効果:株式投資の月末安・月初高アノマリー。期間は営業日ベースでの月末3日間程度、月初3日間程度。月末の損益確定、毎月一定額を積み立てる投資信託などの購入が月末・月初に集中する傾向があります。「株買い→円売り材料」、「株売り→円買い材料」の傾向。特に2024年1月から新NISAが始まり全世界株への資金流入が一気に進んでおり、「株買い→円売り→ドル円上昇」しやすいと推測されます。
・五十日仲値
・米国主要企業決算
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア、台中)

4.参考情報
来週の円相場は上昇か、米景気後退懸念でリスク回避の流れ継続も(Bloomberg
【債券週間展望】長期金利上昇か、賃上げ確認し追加利上げ織り込みへ(Bloomberg
【日本株週間展望】日本株は上昇へ、大幅安から一服し個別選別が進む(Bloomberg

5.本日の注目材料

(1)前日マーケット影響
8/2(金)米国雇用統計は、雇用インフレ全てサプライズ弱となり、景気悪化懸念(株安・ドル安・金利安、円高)の典型的なリスクオフの動きから約2円急落しました。
加えて、7/31(水)植田日銀総裁の追加利上げ示唆タカ派発言の影響もリスクオフを後押ししたと推測されます。

日銀会合やFOMC公表前までは「経済指標弱→FRB早期利下げ観測→米国株上昇(円キャリー促進)→ドル円上昇」も生じていましたが、公表以降は「経済指標弱→景気悪化懸念→米国株下落(円キャリー巻き戻し)→ドル円下落」へと相場環境が一変しました。

日経平均先物やサンデーダウ(NYダウ平均株価 リアルタイム チャート 米国株 ヒートマップ)が大きく下落していることからも、本日はドル円下落スタートを想定します。

(2)米国経済指標
本日の注目は、米国ISM非製造業景気指数(2024年、米国ISM非製造業景気指数発表日のドル円動きまとめ)です。

7/31FOMC公表声明では従来インフレリスクのみへの焦点から、「インフレ・雇用両面のリスクに留意」へと修正されました。また、パウエルFRB議長会見では、従来のデータ次第としつつも9月利下げ示唆のハト派発言でした。従って、インフレ指標だけでなく雇用指標への注目度が更に高まったと言えます。

そこで、FOMC以降の注目指標とドル円の動きを見ると、景気・雇用・インフレ弱に素直な反応を示し、インフレ強は材料視されませんでした。つまり、市場はインフレよりも、景気・雇用リスクへより警戒していることが伺えます。

8/1(木)
・米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数(雇用弱)→初動ドル円下落から全戻し→再下落
・米国ISM製造業景気指数(景気弱、雇用弱、インフレ強)→ドル円下落
8/2(金)
・米国雇用統計(雇用弱、インフレ弱)→ドル円急落

先週の流れから、米国ISM非製造業景気指数(弱)の(c)ドル円下落を想定します。
一方で連日のドル円や株急落を安値で拾える機会と捉える長期目線投資家も多いです*。

従って、(a),(d)ドル円上昇の可能性もありますが、週足や日足レベルで下げ止まりが見えるまでは戻り売りに押されやすいと考えます。

(a)強い数値→FRB9月利下げ期待織り込み剥落、リスクオン株上昇(円キャリー促進)→ドル円上昇
(b)強い数値→リスクオフ株下落(円キャリー巻き戻し)→ドル円下落
(c)弱い数値→景気後退懸念、FRB9月大幅利下げ観測→ドル円下落
(d)弱い数値→FRB9月大幅利下げ観測→リスクオン株上昇(円キャリー促進)→ドル円上昇

*日銀利上げで急落した日本株、長期的見通しへの投資家の期待変わらず(Bloomberg

(3)中東地政学リスクオフ
7/30以降、急激に中東情勢が悪化し、週末の報道からも全面戦争が勃発するリスクが一気に高まりました*
*米国防総省、中東に艦船や戦闘機派遣へ-イスラエルにイランの脅威(Bloomberg
イランの報復攻撃に備えるイスラエル、米国はガザ停戦合意を迫る(Bloomberg

下記のドル・円材料が想定されますが、市場織り込みが完了までは、ドル買い・円買いが交錯してドル円も乱高下しやすいと考えます。

(a)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
(b)他国から安全資産米国債買い需要→ドル買い
(c)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)→円売り
(d)世界的景気悪化懸念→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
(e)原油先物価格上昇→インフレ懸念→ドル買い
(f)原油先物価格上昇→日本貿易収支悪化→円売り

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

8:50 経済指標
政策委員会・金融政策決定会合議事要旨(6月13・14日分)(日本銀行
日銀 6月の議事要旨 “円安で物価上振れリスクも利上げ理由”(NHK

【考察】円安で物価上振れ懸念。6月会合内容で本日の市場の注目材料ではなし。

東京マーケット(9:00~15:00)

9:55 五十日仲値
仲値に向けて実需勢のドル買い円売り、仲値通過後にドル売り円買いの傾向多いものの、逆の動きになることもあり。

11:03~要人発言
緊張感もって市場動向を注視=株安で林官房長官(Reuters

【考察】株価急落注視。

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

16:32~要人発言
日銀とも連携し、緊張感持って市場動向を注視-株価急落で鈴木財務相(Bloomberg

【考察】株価急落注視。

17:46~要人発言
株価は冷静な判断重要、為替動向しっかり注視=林官房長官(Reuters

【考察】為替、株価急落注視

21:35~要人発言
米国グールズビー・シカゴ連銀総裁(メスター・クリーブランド連銀総裁退任により2024年7月FOMC投票代行)
(発言:7/27/47/117/127/18, 8/2, 8/5)
:政策スタンスは中立。前回8/2タカ派発言
シカゴ連銀総裁、FRBは過剰反応しない-市場の方がはるかに不安定(Bloomberg

【考察】8/2米国雇用統計(弱)を受けても景気後退否定、追加データ必要とするタカ派発言。

22:45 経済指標
米国PMI確報値
(速報値発表日:1/242/223/214/235/236/21, 7/24
基準50。景気先行性高いため注目度高い。速報値は確報値より注目度高い。
サービス業:前回56.0、予想56.0、結果55.0(×)
総合:前回55.0、予想55.0、結果54.3(×)

23:00 経済指標
米国ISM非製造業景気指数(ISM Report On Business
(過去の発表日; 1/52/53/54/35/36/5, 7/3, 8/5)
景気の先行指標として注目度大。
基準50、前回48.8(改定)、予想51.1、結果55.0(◎)

・仕入価格:前回56.3、予想55.1、結果57.0(◎)
・新規受注:前回47.3、予想49.8、結果52.4(◎)
・雇用:前回46.1、予想46.4、結果51.1(◎)
米ISM非製造業総合景況指数、7月は活動拡大を示唆-受注回復(Bloomberg

【考察】
発表前:切番144.00や1H足戻り高値ヒゲ先143.99付近で乱高下。直前142.74。
発表後:対前回、対予想全て強い数値のサプライズ。初動143.86へ上昇。しかし、8/2米国雇用統計(サプライズ弱)の影響強く、切番144.00や1H足戻り高値ヒゲ先143.99付近からの戻り売りに押され142.34へ急落。
ところが、米国ISM非製造業景気指数(サプライズ強)を好感したリスクオン米国株上昇(円キャリー促進)、巻き戻しの米国債利回り上昇により再びドル円急上昇に転じました。

<まとめ>
【材料】
①-1 7/31植田日銀総裁のタカ派発言(追加利上げ示唆)影響→日本国債利回り上昇→円買い
①-2 7/31植田日銀総裁のタカ派発言(追加利上げ示唆)影響→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
①-3 7/31植田日銀総裁のタカ派発言(追加利上げ示唆)影響→株下落→日銀追加利上げ観測後退→安全資産日本国債買い→円売り
②-1 8/2米国雇用統計(サプライズ弱)影響→安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
②-2 8/2米国雇用統計(サプライズ弱)影響→景気悪化懸念→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
③-1 中東地政学リスクオフ→日本株下落→安全資産日米国債買い→国債利回り低下→ドル売り・円売り
③-2 中東地政学リスクオフ→日本株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
④2024年6月調査想定為替レート上期144.96(日本銀行、短観)下抜け→日本業績悪化懸念→日本株下落→円買い
⑤米国グールズビー・シカゴ連銀総裁のタカ派発言→ドル買い
⑥-1 米国ISM非製造業景気指数(サプライズ強)→米国債利回り上昇→ドル買い
⑥-2 米国ISM非製造業景気指数(サプライズ強)→景気悪化懸念後退→株上昇(円キャリー促進)→円売り

東京マーケット:
日足始値146.50
取引開始直後に日足高値146.65を付けてからは、先週①日銀追加利上げ観測、②米国雇用統計サプライズ弱による景気後退懸念の流れを引き継いで、ドル円急落。更にサプライズ④2024年6月調査想定為替レート上期144.96下抜けも加わり、日本株パニック売り主導により日通し安値142.20へと暴落しました。
東京終値142.65

【日本市況】日経平均下げ幅史上最大、米景気懸念で質逃避-債券上昇(Bloomberg

欧米マーケット:
東京クローズ直後に日足安値141.69を付けて、約5.0円暴落となりました。(日足高値-日足安値=146.65-141.69=4.96)

欧州オープン直後は約5.0円暴落したことや、切番141.00・日足三尊右肩141.86付近からの押し目買いにより143.99へ急反発。

しかし、②米国雇用統計サプライズ弱による景気後退懸念は根強く、切番144.00や1H足戻り高値ヒゲ先143.99付近からの戻り売りに押され、切番141.00・日足三尊右肩141.86付近へ下落から約3円幅のレンジ推移。

NYオープン直前の⑤米国グールズビー・シカゴ連銀総裁のタカ派発言、NYオープン後の⑥米国ISM非製造業景気指数(サプライズ強)により、強いドル円上昇発生すると、1H足戻り高値ヒゲ先143.99を実体ベースでブレイクし144.90へ値を戻しました。
一方、②も引き続き交錯したことで、引けに掛けて乱高下となりました。
日足終値144.20

【米国市況】株続落、S&P500種は2年ぶり大幅安-ドル144円台前半(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル売り優勢>
買い材料:
・米国ISM非製造業景気指数(サプライズ強)

売り材料:
・ 8/2米国雇用統計(サプライズ弱)影響
・米国PMI確報値(サービス業、総合)(弱)

<円買い優勢>
買い材料:
・7/31植田日銀総裁のタカ派発言(追加利上げ示唆)影響
・8/2米国雇用統計(サプライズ弱)影響→景気悪化懸念→日本、欧米株下落(円キャリー巻き戻し)

売り材料:
・米国ISM非製造業景気指数(サプライズ強)→リスクオン欧米株上昇(円キャリー促進)
・恒常的円売り(日米金融政策差[日本実質金利マイナスで金融緩和環境継続]、新NISA等海外投資急増[特に夏ボーナス買い]、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念)

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回9月18日公表:25bps引き下げ31.0→15.5%、50bps引き下げ69.0→84.5%
年内利下げ観測:25bps×5回=125bps → 政策金利400~425bps相当

テクニカル分析

Trade

  • 月足:8月陰線形成中。上昇トレンドからレンジ移行中。
  • 週足:7/29週、陰線確定。レンジ。押し安値付近
  • 日足:8/2陰線。下降トレンド。
  • 4H足:下降トレンド。
  • 1H足:上昇トレンド。
  • 15M足:レンジ。

【シナリオ】
①Long
(A)日足押し安値ヒゲ先145.898付近へ下落→転換上昇→目標1H足戻り高値146.989
(B)日足押し安値実体144.909付近へ下落→転換上昇→目標日足押し安値ヒゲ先145.898

②Short
(D)日足安値146.420をダウ下落→目標日足押し安値ヒゲ先145.898
(E)日足押し安値ヒゲ先145.898をダウ下落→目標日足押し安値実体144.909

8月通算:3勝1敗、勝率75.0%、+113.9pips

(Trading View)

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