2024年8月1日(木)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

1.経済指標
・米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数
・米国非農業部門労働生産性指数、単位労働コスト速報値
・米国PMI確報値(製造業)
・米国建設支出
・米国ISM製造業景気指数
・米国アトランタ連銀GDP Now
・BOE金融政策委員会

2.要人発言
・政府、日銀円安牽制発言

3.その他
・TOM効果:株式投資の月末安・月初高アノマリー。期間は営業日ベースでの月末3日間程度、月初3日間程度。月末の損益確定、毎月一定額を積み立てる投資信託などの購入が月末・月初に集中する傾向があります。「株買い→円売り材料」、「株売り→円買い材料」の傾向。特に2024年1月から新NISAが始まり全世界株への資金流入が一気に進んでおり、「株買い→円売り→ドル円上昇」しやすいと推測されます。
・米国主要企業決算(特にアップル、アマゾン)
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア、台中)

4.参考情報
来週の円相場は下落か、日米金融政策決定後に円売り再開の可能性(Bloomberg
【債券週間展望】日銀利上げでも長期金利上昇は限定か、一定織り込み(Bloomberg
【日本株週間展望】値固め、日米金融政策発表後に買いも-円高は警戒(Bloomberg

5.本日の注目材料

(1)前日マーケット影響
①植田日銀総裁のタカ派発言(追加利上げ示唆)→円買い
②中東地政学リスクオフ悪化→原油先物価格急上昇→ドル買い円売り
③-1 米国パウエルFRB議長会見:声明文になかったインフレと雇用にサプライズ強い数字が出ない限り9月利下げ示唆のハト派→米国債利回り低下→ドル売り
③-2 米国パウエルFRB議長会見:ハト派→米国株上昇(円キャリー促進)→円売り
④イラン指導者ハメネイ師→イスラエルへの報復攻撃命令→中東全面戦争の中東地政学リスクオフ→米国株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い

総じて、①円買い、③-1ドル売り、④円買いの影響が強くドル円急落を生じました。本日スタートもこの影響を引き継ぎやすいと推測します。

(2)米国経済指標
本日最大の注目は、米国ISM製造業景気指数ですがその他も要注目。(2024年、米国ISM製造業景気指数発表日のドル円動きまとめ
前日FOMC声明では従来インフレリスクのみへの焦点から、「インフレ・雇用両面のリスクに留意」へと修正されました。
また、パウエルFRB議長会見では、従来のデータ次第としつつも9月利下げ示唆のハト派発言でした。従って、インフレ指標だけでなく雇用指標への注目度が更に高まったと言えます。
FOMC公表の翌日であることから、本日は結果に対して素直にドル円反応しやすいと考えます。

(a)強い数値→初回9月利下げ期待織り込み剥落→巻き戻しのドル円上昇
(b)強い数値→リスクオフ株下落(円キャリー巻き戻し)ならドル円上げ止まりから下落
(c)弱い数値→年内3回利下げ観測高進→ドル円下落
(d)弱い数値→リスクオン株上昇(円キャリー促進)→ドル円下げ止まりから上昇

(3)中東地政学リスクオフ
7/30、7/31から急速に中東情勢が悪化し、全面戦争が勃発するリスクが一気に高まりました。
下記のドル・円材料が想定されますが、市場織り込みが完了までは、ドル買い・円買いが交錯してドル円も乱高下しやすいと考えます。

(a)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
(b)他国から安全資産米国債買い需要→ドル買い
(c)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)→円売り
(d)世界的景気悪化懸念→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
(e)原油先物価格上昇→インフレ懸念→ドル買い
(f)原油先物価格上昇→日本貿易収支悪化→円売り

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

東京マーケット(9:00~15:00)

11:03 要人発言
神田前財務官を内閣官房参与に任命、金融・国際経済を担当-政府(Bloomberg

11:18~要人発言
林官房長官
為替市場の動向をしっかり注視=円高巡り林官房長官(Reuters

【考察】投機筋(事実上の円売り)牽制発言。ドル円下落も全戻し。

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

20:00 経済指標
BOE金融政策委員会
政策金利:前回5.25%、予想5.00%、結果5.00%(○)
MPC議事要旨:インフレ見通し下方修正、経済見通し上方修正。タカ派声明

20:07~要人発言
英国ベイリーBOE総裁
英中銀が約4年ぶり利下げ、5対4で決定-次の一手の時期示さず(Bloomberg

【考察】予想通り政策金利引き下げ。しかし、タカ派声明、ベイリー総裁は利下げ慎重のタカ派発言を受けて、「英国債利回り上昇→米国債利回り上昇波及→ポンド買い・円売り(ドル買い弱)」によりドル円上昇。Buy the factの動き。

21:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数
失業者が初めて申請した失業保険給付の申請件数を示す指標。失業率や非農業部門雇用者数の先行指標として注目されます。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回23.5万件(改定)、予想23.6万件、結果24.9万件(×)

米国失業保険継続申請件数
新規申請後に失業保険の申請を継続している人数を示す指標。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回185.1万件(改定184.4)、予想185.6万件、結果187.7万件(×)

21:30 経済指標
米国非農業部門労働生産性指数速報値
農業部門を除いたモノとサービスを生産する労働者の生産性を把握する指標。
前期比:前回0.2%(改定0.4)、予想1.6%、結果2.3%(◎)

米国単位労働コスト
前期比:前回4.0%(改定3.8)、予想2.0%、結果0.9%(×)

【考察】強弱混在。

22:45 経済指標
米国PMI確報値
(速報値発表日:1/242/223/214/235/236/21, 7/24
基準50。景気先行性高いため注目度高い。速報値は確報値より注目度高い。
製造業:前回49.5、予想49.6、結果49.6(○)

23:00 経済指標
米国建設支出
前月比:前回-0.1%(改定-0.4)、予想0.2%、結果-0.3%(△)

23:00 経済指標
米国ISM製造業景気指数:景気先行指標として注目度大(Institute for Supply Management)
(発表日; 1/32/13/14/15/16/3, 7/1, 8/1)
基準50、前回48.5(改定)、予想49.0、結果46.8(×)

・仕入価格:前回52.1、予想51.2、結果52.9(◎)
・新規受注:前回49.3、予想49.0、結果47.4(×)
・雇用:前回49.3、予想49.2、結果43.4(×)
米ISM製造業景況指数、8カ月ぶりの大幅な活動縮小-生産低調(Bloomberg

【考察】
発表前:米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数、米国単位労働コスト(弱)を受けた株上昇(円キャリー促進)の円売り主導でドル円上昇継続。直前150.55
発表後:総じてサプライズの弱い数値。米国債利回り低下かつ景気悪化懸念(ハードランディング)から米国株も下落(円キャリー巻き戻し)に転じてドル円急落。これほど弱い数値だとFRB大幅利下げ期待の米国株上昇にはならない様子。

23:30 経済指標
米国アトランタ連銀GDP Now(US Atlanta Fed)(Investing.com
米国アトランタ連銀が各種経済指標を基に算出した米国実質GDPの先行指標です。比較的精度が高いことから市場の注目度が上がっています。
(発表日; 7/17/37/107/167/17, 7/24, 7/26, 8/1, 8/6, 8/8, 8/15, 8/16, 8/26, 8/30)
Q2:前回2.8%、予想2.8%、結果2.5%(×)

27:57 報道
ヒズボラ、イスラエルに大規模ロケット弾攻撃開始

【考察】中東地政学リスクオフ

29:03 米国主要企業決算
アマゾン
売上高:前回1433.1億ドル、予想1487.8億ドル、結果1479.8億ドル(△)
EPS:前回0.98ドル、予想1.04ドル、結果1.26ドル(◎)
アマゾン、営業利益見通しが市場予想下回る-AIコストの増加示唆(Bloomberg

29:33 米国主要企業決算
アップル
売上高:前回907.5億ドル、予想億844.6ドル、結果857.8億ドル(○)
EPS:前回1.53ドル、予想1.35ドル、結果1.40ドル(○)
アップル、売上高が予想上回る-新型iPadとサービス事業が押し上げ(Bloomberg

<まとめ>
東京マーケット:
【材料】
①安値ドル調達需要(日本実需、新NISA等の米国投資目的)→ドル買い円売り
②-1 7/31植田日銀総裁のタカ派発言影響、追加利上げ観測→日本国債利回り上昇→円買い
②-2 7/31植田日銀総裁のタカ派発言影響、追加利上げ観測→日本株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
③7/31米国パウエルFRB議長のハト派発言影響、9月利下げ観測→米国債利回り下落→ドル売り
④林官房長官の投機筋牽制発言(事実上、円売り牽制)→円買い

【動向】
日足始値149.96
取引開始直後は、①ドル需要から日通し高値150.32へ上昇するも、7/31材料②,③の影響強く、東京オープン後には日通し安値148.51へ急落。
しかし、切番149.00や日足押し安値ヒゲ先148.91へ一気に下抜けて、ロング勢損切巻き込みが急減したためか下げ止まり。①ドル需要再燃や②-2下落一服が支えとなり、押し目買い入り150.05まで急上昇しました。
東京終値149.76

【日本市況】円一時4カ月ぶり高値、日銀利上げ継続を意識-株は急落(Bloomberg

欧米マーケット:
【材料】
①安値ドル調達需要→ドル買い円売り
②-1 BOE金融政策決定会合控えたポジション調整(推測)の欧州通貨(ポンド・ユーロ)売り→ドル買い
②-2 BOEタカ派声明、ベイリーBOE総裁のタカ派発言→英国債利回り上昇→米国債利回り上昇波及→ポンド買い・円売り
③-1 米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数、米国単位労働コスト(弱)→米国債利回り低下→ドル売り
③-2 米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数、米国単位労働コスト(弱)→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)→円売り
④-1 米国ISM製造業景気指数(総じて弱)→米国債利回り低下→ドル売り
④-2 米国ISM製造業景気指数(総じて弱)→景気悪化懸念から米国株下落→円買い。
⑤ ⓪や④の欧州波及→欧州通貨(ポンド・ユーロ)売り、欧州株下落→ドル買い・円買い
原油先物価格下落→インフレ懸念低下、日本貿易収支改善→ドル売り、円買い

【動向】
欧州オープン後も、切番149.00や日足押し安値ヒゲ先148.91からの押し目買い続き、①ドル需要と②調整(推測)により日通し高値更新150.34へ上昇。

BOE会合は予想通り政策金利引き下げでしたが、②-2のタカ派を受けてドル円上昇継続。
注目の米国雇用指標③-1受けてドル円下落するも一瞬で、③-2が支えが強く、日足高値150.89へ上昇しました。

注目の米国ISM製造業景気指数は総じてサプライズの弱い数値。米国経済ハードランディング観測から④-1,④-2に、⑤も加わりドル円急落続き引けました。

日足終値149.34

【米国市況】株は急落し国債が急伸、雇用統計控え-ドルは149円台後半(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル買い優勢>
買い材料:
・安値ドル調達需要(日本実需、新NISA等の米国投資目的)

売り材料:
・7/31米国パウエルFRB議長のハト派発言影響、9月利下げ観測
・米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数、米国単位労働コスト(弱)
・米国ISM製造業景気指数(総じて弱)
・米国アトランタ連銀GDP Now(弱)
・原油先物価格下落→インフレ懸念低下

<円売買交錯>
買い材料:
・7/31植田日銀総裁のタカ派発言影響、追加利上げ観測→日本国債利回り上昇
・7/31植田日銀総裁のタカ派発言影響、追加利上げ観測→日本株下落(円キャリー巻き戻し)
・米国ISM製造業景気指数(総じて弱)→景気悪化懸念→米国株下落(円キャリー巻き戻し)
・原油先物価格下落→日本貿易収支改善

売り材料:
・安値ドル調達需要(日本実需、新NISA等の米国投資目的)
・BOEタカ派声明、ベイリーBOE総裁のタカ派発言→ポンド買い・円売り
・米国新規失業保険申請件数、米国失業保険継続申請件数、米国単位労働コスト(弱)→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)
・恒常的円売り(日米金融政策差[日本実質金利マイナスで金融緩和環境継続]、新NISA等海外投資急増[特に夏ボーナス買い]、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念)

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回9月18日公表:25bps引き下げ85.5→73.5%、50bps引き下げ14.5→26.5%
年内利下げ観測:25bps×3回=75bps → 政策金利450~475bps相当

米利下げは年内3回、国債トレーダーが完全に織り込む-雇用統計控え(Bloomberg

テクニカル分析

Trade

  • 月足:7月陰線確定。上昇トレンド。ダウ高値151.86付近から反発上昇
  • 週足:7/29週、陰線形成中。上昇トレンド。押し安値ヒゲ先151.86到達から反発上昇
  • 日足:7/31陰線。下降トレンド。
  • 4H足:下降トレンド。
  • 1H足:レンジ。
  • 15M足:レンジ。

【シナリオ】
①Long
(A)4H足ダウ安値150.294かつ1H足20MAをダウ上昇→目標1H足レンジ高値150.815
(B)4H足レンジ高値149.276付近へ下落→転換上昇→目標日足安値149.610

②Short
(C)4H足ダウ安値150.294付近へ上昇→転換下落→日足安値149.610
(D)日足安値149.610をダウ下落→目標4H足レンジ高値149.276

8月通算:1勝0敗、+32.6pips

(Trading View)

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