2024年8月22日(木)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

1.経済指標
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数
・米国PMI速報値
・米国中古住宅販売件数

2.要人発言
・政府、日銀(特に円安牽制、追加利上げ示唆)
・米国ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム、8/22~24)

3.その他
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)

4.参考情報
最近の相場を動かす主な材料は、①円キャリー取引(促進or巻き戻し)、②米国労働市場、③米国経済成長、④インフレ、⑤地政学リスクに分類できます。
・来週は円下落か、緩和織り込み修正でドル高余地-日米中銀トップ発言(Bloomberg
・【債券週間展望】長期金利は上昇か、リスク資産選好の流れが重しに(Bloomberg
・【日本株週間展望】上昇、米景気懸念が緩和-日米金融当局者が発言(Bloomberg

5.本日の注目材料
(1)8/21(水)マーケット影響
米国雇用者数,基準改定値の大幅下方修正を受けて、
①米国雇用市場減速懸念リスクオフ→欧米国株下落、米国債利回し低下、日米金利差縮小→ドル円下落
②FRB9月大幅利下げ観測好感→米国株上昇(円キャリー促進)→ドル円上昇

懸念材料通過して欧米株上昇で終えたことから、本日スタートは、この影響を引き継いでドル円上昇優勢と考えます。
一方で、明日注目の植田日銀総裁発言、パウエルFRB議長発言を控えてポジション調整からのドル円乱高下に警戒したい。

(2)米国経済指標
本日は米国新規失業保険申請件数,失業保険継続申請件数、米国PMI速報値の注目度が高いです。
7/31FOMC公表声明において、従来インフレリスクのみへの焦点から、「インフレ・雇用両面のリスクに留意」へと修正されました。従って、インフレ指標だけでなく雇用指標への注目度が更に高まっています。

先週はIMM通貨先物の円ロング転換から株先物・株指数とドル円の相関性が崩れていましたが、今週に入ると再び株価(円キャリー取引)とドル円の相関を示すようになりました。よって、指標発表後の株先物・株指数の動向でもドル円の方向性が判断しやすくなったと言えます。

(a)強い数値→FRB9月利下げ期待織り込み剥落→ドル円急上昇
(b)強い数値→FRB高金利維持長期化嫌気→株下落(円キャリー巻き戻し)→ドル円下落
(c)弱い数値→FRB9月大幅利下げ観測、株上昇→ドル円下落
(d)弱い数値→米国景気減速懸念後退→株上昇(円キャリー促進)→ドル円上昇

(3)地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)
7/30以降は中東情勢が悪化し、8/7以降はウクライナ情勢も一気に緊張が高まりました。
・米国務長官、ガザ停戦合意確保できずに中東訪問終了-「時間が重要」(Bloomberg
・モスクワ接近の無人機10機、ロシア軍が撃ち落とす-全地域で45機撃墜(Bloomberg

下記材料が想定されますが、最近の傾向は(a)ドル売り主導のドル円下落が生じており、中東戦争勃発となればドル円急落の可能性が高いと推測します。

(a)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
(b)他国から安全資産米国債買い需要→ドル買い
(c)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)→円売り
(d)世界的景気悪化懸念→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
(e)原油先物価格上昇→インフレ懸念→ドル買い
(f)原油先物価格上昇→日本貿易収支悪化→円売り

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

東京マーケット(9:00~15:00)

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)
20:30~要人発言
米国シュミッド・カンザスシティ連銀総裁(2024年FOMC投票権なし)
(過去の発言:4/125/15, 8/9, 8/22)
:政策スタンスはタカ派。前回8/9タカ派発言
米利下げ前にさらなるデータ見てみたい-カンザスシティー連銀総裁(Bloomberg

【考察】利下げ慎重のタカ派発言

21:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数
失業者が初めて申請した失業保険給付の申請件数を示す指標。失業率や非農業部門雇用者数の先行指標として注目されます。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回22.7万件(改定22.8)、予想23.0万件、結果23.2万件(×)

米国失業保険継続申請件数
新規申請後に失業保険の申請を継続している人数を示す指標。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回186.4万件(改定185.9)、予想186.5万件、結果186.3万件(○)

【考察】強弱混在。ドル円乱高下。

21:47~要人発言
米国コリンズ・ボストン連銀総裁(2024年FOMC投票権なし)
(過去の発言:5/85/226/18, 8/9, 8/22)
:政策スタンスは中立。前回8/9ハト、タカ派発言
ボストン連銀総裁、「漸進的で整然としたペース」での利下げが適切に(Bloomberg

【考察】利下げ支持のハト派発言。

22:40~要人発言
米国ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁(2024年FOMC投票権なし)
(過去の発言:4/45/16, 6/17, 8/22)
:政策スタンスはハト派。前回6/17タカ派発言
フィラデルフィア連銀総裁、さらなるデータが必要-利下げ幅の判断で(Bloomberg

【考察】利下げ支持のハト派発言。

22:45 経済指標
米国PMI速報値
(速報値発表日:1/242/223/214/235/236/217/24
基準50。景気先行性高いため注目度高い。速報値は確報値より注目度高い。
製造業:前回49.6、予想49.7、結果48.0(×)
サービス業:前回55.0、予想54.1、結果55.2(◎)
総合:前回54.3、予想53.1、結果54.1(○)

【考察】総じて強い数値。

23:00 経済指標
米国中古住宅販売件数
住宅市場は消費に大きな影響を与えることから景気の先行指標として米国新築住宅販売件数とともに重要。
件数:前回389万件(改定390)、予想393万件、結果395万件(◎)
前月比:前回-5.4%(改定-5.1)、予想1.0%、結果1.3%(◎)

【考察】強い数値。ドル円上昇。

<まとめ>
東京マーケット:
日足始値145.26
取引開始直後は、前日スワップ3倍デー狙いのロング勢決済が入ったためか、日通し安値144.85へ下落(4H足下降チャネル内の1H足レンジ継続)。

しかし、前日までと同じく145円台は「2024年6月調査想定為替レート上期144.96(日本銀行、短観)」付近のためか強い材料出なければ下値目途と意識されている様子であり、8/21米国雇用者数,基準改定値大幅下方修正や米国FOMC議事要旨ハト派内容を受けた日本株上昇(円キャリー促進)に連れて、日通し高値145.65へ上昇、1H足20MA付近(1H足レンジ上限145.29ブレイクし、上昇トレンド発生)。

その後、明日の植田日銀総裁の閉会中審査を控えて、日本国債売りが優勢となり利回り上昇に連れた日本株下落を受けて144.99へ下押しするも、切番145.00付近は相変わらず固く下値支えて東京引けとなりました(1H足上昇トレンドから上昇チャネルへ移行)。

【日本市況】株反発し日経平均3週ぶり高値、米利下げ観測強まる(Bloomberg

欧米マーケット:
欧州オープンすると、再び8/21米国雇用者数,基準改定値大幅下方修正や米国FOMC議事要旨ハト派内容が材料視され欧州株上昇(円キャリー促進)。
更に、リスクオン(国債売り株買い)や米国シュミッド・カンザスシティ連銀総裁のタカ派発言も加わり、一気に日通し高値146.22の146円台へ乗せ(4H足下降チャネルブレイク、4H足戻り高値・1H足上昇チャネル上限付近)。

米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数(強弱混在)、米国コリンズ・ボストン連銀総裁,米国ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁のハト派発言、米国株上昇を受けてドル円乱高下するも、米国PMI速報値・米国中古住宅販売件数(強)で日足高値146.53へ上昇(1H足上昇チャネルブレイク)

一方、米国PMI速報値・米国中古住宅販売件数(強)や、8/23パウエルFRB議長講演で積極的な利下げ示唆はないとの見方が広がったことでFRB9月大幅利下げ観測後退を嫌気した米国株下落が生じました。
そのため、ドル円揉み合いから145.88へ下押し、揉み合いで引けました(1H足レンジ形成)。
日足終値146.31

【米国市況】株反落、FRB議長の講演控え慎重ムード-146円台前半(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル買い優勢>
買い材料:
・米国シュミッド・カンザスシティ連銀総裁のタカ派発言
・米国PMI速報値、米国中古住宅販売件数(強)
・原油先物価格上昇

売り材料:
・8/21米国雇用者数,基準改定値大幅下方修正→FRB9月大幅利下げ観測、米国労働市場減速懸念のリスクオフ(米国株下落、米国債利回し低下)
・8/21米国FOMC議事要旨のハト派内容影響→FRB9月利下げ観測
・米国コリンズ・ボストン連銀総裁、米国ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁のハト派発言

<円売り優勢>
買い材料:

・8/22パウエルFRB議長講演で積極的な利下げ示唆はないとの見方→米株下落

売り材料:
・8/21米国雇用者数,基準改定値大幅下方修正影響→FRB9月大幅利下げ観測好感→日本株、欧州株上昇(円キャリー促進)
・2024年6月調査想定為替レート上期144.96(日本銀行、短観)以上→日本企業業績改善期待
・米国PMI速報値、米国中古住宅販売件数(強)
・原油先物価格上昇
・恒常的円売り(日米金融政策差[日本実質金利マイナスで金融緩和環境継続]、新NISA等海外投資急増、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念)

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回9月18日公表:25bps引き下げ61.5→75.5%、50bps引き下げ38.5→24.5%
年内利下げ観測:25bps×4回=100bps → 政策金利425~450bps相当

テクニカル分析

Trade

  • 月足:8月陰線形成中。上昇チャネル。20MAから上昇中。
  • 週足:8/19週、陰線形成中。下降トレンド。
  • 日足:8/21コマ足。レンジ。BB-1σ付近。
  • 4H足:下降チャネル。
  • 1H足:レンジ。
  • 15M足:上昇トレンド。

【シナリオ】
①Long
(A)1H足レンジ高値145.292をダウ上昇→転換上昇→目標1H足戻り高値145.770
(B)日足安値144.454付近へ下落→転換上昇→目標1H足レンジ高値145.292

②Short
(C)1H足戻り高値145.770付近へ上昇→転換下落→目標1H足レンジ高値145.292
(D) (C)後、1H足レンジ高値145.292かつ1H足20MAをダウ下落→目標1H足レンジ安値144.731

本日:1勝1敗、+27.4pips
8月通算:17勝10敗、勝率63.0%、RR 1.95、+430.1pips

(Trading View)

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