ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
(1)経済指標
・東京消費者物価指数
・日銀、国債買入オペ通知
・日銀、7~9月度国債買入れ予定公表
・外国為替平衡操作の実施状況
・米国PCE、PCEデフレータ
・米国シカゴ購買部協会景気指数
・米国ミシガン大学消費者信頼感指数確報値、インフレ予測
・米国アトランタ連銀GDP Now
(2)要人発言
・政府、日銀円安牽制発言
・FRB要人発言
(3)その他
・財務官人事公表(未確定)。任期は一般的には2~3年で神田財務官は現在3年目。同氏退任なら、為替介入警戒後退から円売り材料と見込まれています(財務省、人事情報)
・TOM効果:株式投資の月末安・月初高アノマリー。期間は営業日ベースでの月末3日間程度、月初3日間程度。月末の損益確定、毎月一定額を積み立てる投資信託などの購入が月末・月初に集中する傾向があります。「株買い→円売り材料」、「株売り→円買い材料」の傾向。
特に2024年1月から新NISAが始まり全世界株への資金流入が一気に進んでおり、「株買い→円売り→ドル円上昇」しやすいと推測されます。
・実質五十日仲値(6/30休場につき)
・米国大統領選候補者第1回テレビ討論会
・月末ロンドンフィックス
・IMM通貨先物円売りポジション
・欧州政情不安リスクオフ
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア、台中)
(4)本日の注目材料
①月末・四半期末最終週ポジション調整
前日は月末・四半期末最終週ポジション調整と推測される欧州通貨(ポンド・ユーロ)買い・ドル売りが発生し、欧州序盤にドル円乱高下する場面もありました。
今週、心理的節目として意識される160円付近は、需給要因で突発的な乱高下が続く可能性が出てきたことから上値追いはリスク高く、急落後の押し目狙いのみが適切かもしれません。
②日銀早期金融政策正常化観測、政府・日銀為替介入観測
6/26一気に161円台目前へ急上昇したことで、政府・日銀為替介入警戒感、強い円安牽制発言が続くことが想定されます。
一方で、恒常的円売り(日米金融政策差、新NISA等海外投資急増、日本デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)は留まらないことから押し目買い狙いが適切と考えます。
③米国経済指標
最大の注目材料は米国PCEデフレータ(2024年、米国PCEデフレータ発表日のドル円動きまとめ)
6/12米国消費者物価指数と6/13米国生産者物価指数が低下しており、PCEデフレータも鈍化が見込まれています。
従って、基本は(c)弱い数値かドル円下落ですが、(a)強い数値サプライズによるドル円急騰も要警戒。
市場初回利下げ観測9月に対して、後押しするか、織り込み剥落するかがポイントです。
(a)強い数値→6/25カナダ, 6/26豪消費者物価指数(強)に続いて世界的なインフレ再加速確定→米国債利回り上昇→ドル円急騰(161円台突破から162円台乗せか)
(b)強い数値→リスクオフ株下落→「円買い>>ドル買い」ならドル円下落
(c)弱い数値→市場コンセンサス通りで米国債利回り低下→ドル円急落。但し、単発データではFRB利下げないため下落トレンド続きにくい→ドル円上昇下げ止まりから上昇
(d)弱い数値→米国債利回り低下よりリスクオン株上昇の影響強→ドル円上昇
FRB重視インフレ指標、緩やかな上昇か-利下げ開始の足掛かりにも(Bloomberg)
④FRB要人発言
6/12FOMC公表・パウエルFRB議長会見はタカ派以降、複数のFRB要人からタカ派発言が相次いでいましたがハト派寄りの発言も出てきました。
引き続き基本は(a)ですが、ハト派発言増から(c)や(d)も要警戒。いずれにせよドル円下落が生じても一時的で押し目買い機会と考えます。
(a)タカ派発言→米国債利回り上昇→ドル円上昇
(b)タカ派発言→リスクオフ株下落→ドル円下落
(c)ハト派発言→米国債利回り低下→ドル円下落
(d)ハト派発言→リスクオン株上昇→ドル円上昇
⑤米国大統領選候補者第1回テレビ討論会
経済対策、移民政策、対中政策、地政学リスク(中東、ウクライナ・ロシア、台中)などへの論戦で株や債券利回りの動きに注目したい。2020年討論会の様な罵声合戦になれば失望ドル売りが起きる可能性もあります。
バイデン・トランプ両氏直接対決、24年大統領選初回討論前の予習復習(Bloomberg)
マーケット動向
経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)
東京マーケット前
8:30 経済指標
東京消費者物価指数(CPI)(政府統計の総合窓口)
全国消費者物価指数の先行指標で日本国内のインフレが進んでいる中で注目度が高まっています。
日銀物価目標2.0%。日銀政策金利0.0-0.1%
前年比:前回2.2%(改定)、予想2.3%、結果2.3%(○)
コア前年比:前回1.9%(改定)、予想2.0%、結果2.1%(◎)
コアコアCPI前年比:前回1.7%(改定)、予想1.7%、結果1.8%(◎)
6月の都区部物価2.1%上昇、伸び拡大 電気代は1割増(日本経済新聞)
【考察】ドル円小幅下落
東京マーケット(9:00~15:00)
9:55 実質五十日仲値(6/30休場につき)
仲値に向けて実需勢のドル買い円売り、仲値通過後にドル売り円買いの傾向多いものの、逆の動きになることもあり。
10:00~要人発言
米国大統領選候補者第1回テレビ討論会
バイデン氏の失点目立つ、与党内でも憂慮深まるか-米大統領選討論会(Bloomberg)
ドルがじり高-トランプ氏が米大統領選挙討論で優位との見方(Bloomberg)
【考察】トランプ氏優勢でドル円上昇。
10:10 経済指標
日銀、国債買入オペ通知(日本銀行)
(発表日:5/7, 5/13, 5/17, 5/23, 5/31, 6/7, 6/12, 6/18, 6/24, 6/28, 7/3, 7/10, 7/17, 7/23, 7/29)
3~5年債:前回4250億円、結果4250億円(○)
10~25年債:前回1500億円、結果1500億円(○)
25年超債:前回750億円、結果750億円(○)
物価連動債:前回600億円、結果600億円(○)
【考察】
発表前:月末五十日仲値に向けたドル買い需要や、下記の神田財務官後任報道前の織り込みと推測されるドル円急騰発生。
発表後:据え置き。下記の神田財務官後任報道前の織り込みと併せて日足高値高値161.29(1986年12月以来高値)到達。
10:38 報道
神田財務官後任に三村国際局長 次官は新川主計局長(日本経済新聞)
【考察】前日6/27には神田財務官退任が市場コンセンサスと見られていました。
従って、東京オープン直前からのドル円急騰は「神田財務官退任→為替介入警戒感後退→円売り材料」を当て込んで、財務省発表や報道前の織り込みもあったと推測されます。
報道直後に日足高値161.29へ上昇。
報道後は、後任の三村国際局長は知名度も高く安心感や、懸念材料通過からSell the factで160.84へ下落したと考えます。
11:25~要人発言
鈴木財務相
(過去の発言:6/4, 6/7, 6/18, 6/21, 6/24, 6/25, 6/27, 6/28)
:前回6/27円安牽制発言
急激で一方的な変動「深く懸念」=為替で鈴木財務相(Reuters)
【考察】円安牽制発言。ドル円下落。
欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)
16:23~要人発言
林官房長官
為替市場しっかり注視し、過度な変動には適切な対応取る=官房長官(Reuters)
【考察】円安牽制発言。ドル円下落。
17:00 経済指標
日銀、7~9月度国債買入れ予定公表(日本銀行)
【考察】7月日銀会合で国債買入れ減額公表のため、7月予定のみ記載。
19:00 経済指標
外国為替平衡操作の実施状況(財務省)
【考察】5/30-6/26介入額ゼロ
19:18~要人発言
米国バーキン・リッチモンド連銀総裁(2024年FOMC投票権あり)
(過去の発言:4/4, 4/10, 4/11, 4/16, 4/19, 5/6, 5/10, 5/16, 6/18, 6/21, 6/28)
:政策スタンスはタカ派。前回6/21タカ派発言。
米経済、利上げによく持ちこたえている-リッチモンド連銀総裁(Bloomberg)
【考察】タカ派発言。
21:30 経済指標
米国PCE
個人所得:前回0.3%(改定)、予想0.4%、結果0.5%(◎)
個人支出:前回0.2%(改定0.1)、予想0.3%、結果0.2%(△)
米国PCEデフレータ(過去の発表日:6/30, 7/28, 8/31, 9/29, 10/27, 11/30, 12/22, 1/26, 2/29, 3/29, 4/26, 5/31, 6/28)
総合指数より基調的なインフレを反映するコア指数がより注目されます。
強い数値なら、「インフレへの警戒感→FF金利上昇する可能性→ドル買い材料」
【6/12米国FOMC公表2024年見通し:コアPCE2.6%】
前年比(FRB目標2.0%):前回2.7%(改定)、予想2.6%、結果2.6%(○)
前月比:前回0.3%(改定)、予想0.0%、結果0.0%(○)
コア前年比:前回2.8%(改定)、予想2.6%、結果2.6%(○)
コア前月比:前回0.2%(改定0.3)、予想0.1%、結果0.1%(○)
米PCEコア価格指数、5月は伸び減速-年内利下げの論拠補強(Bloomberg)
【考察】
発表前:休場中6/30仏下院選挙第1回投票を警戒したと推測されるリスクオフ欧州株下落や、6/12米国消費者物価指数(弱)・6/13米国生産者物価指数(弱)を受けたPCEデフレータ鈍化織り込みのためかドル円下落。直前160.60。
発表後:米国PCE(強弱)。米国PCEデフレータ(強)、但し予想と一致だが前回より低下。初動は米国PCEデフレータが前回より低下を受けて日足安値160.38(4H足押し安値160.34付近)へ下落(下落幅=160.60-160.38=0.22)。但し、FRB目標2.0%超えには変わりなし。
21:48~要人発言
米国デイリー・サンフランシスコ連銀総裁(2024年FOMC投票権あり)
(過去の発言:3/1, 3/6, 4/2, 4/12, 4/16, 5/9, 5/20, 6/24, 6/27)
:政策スタンスは中立。前回6/24タカ、ハト派発言。
米PCEデータ、金融政策が機能していること示す-SF連銀総裁(Bloomberg)
【考察】米国PCEデフレータ鈍化を受けてもタカ派発言。しかし米国PCEデフレータの影響強く下落継続。
22:45 経済指標
米国シカゴ購買部協会景気指数
米国ISM製造業景気指数の前営業日に発表される同指標の先行指標。
基準50、前回35.4(改定)、予想40、結果47.4(◎)
【考察】強い数値。ドル円下げ止まりから上昇。
23:00 経済指標
米国ミシガン大学消費者信頼感指数確報値(速報値発表日; 6/16, 7/14, 8/11, 9/15, 10/13, 11/10, 12/8, 1/19, 2/16, 3/15, 4/12, 5/10, 6/14)
米国コンファレンスボード消費者信頼感指数に先行して発表されるため注目度は高い。米国GDPの約70%を占める個人消費の動向を確認できる。
前回65.6、予想65.6、結果68.2(◎)
米国ミシガン大学インフレ予測
1年先:前回3.3%、予想3.2%、結果3.0%(×)
5年先:前回3.1%、予想3.1%、結果3.0%(×)
【考察】米国ミシガン大学消費者信頼感指数確報値(強)、インフレ予測(弱)の強弱混在。米国ミシガン大学消費者信頼感指数確報値(強)の影響強くドル円上昇継続。
23:30 経済指標
米国アトランタ連銀GDP Now(US Atlanta Fed)(Investing.com)
米国アトランタ連銀が各種経済指標を基に算出した米国実質GDPの先行指標です。比較的精度が高いことから市場の注目度が上がっています。
(発表日; 5/24, 5/31, 6/3, 6/6, 6/7, 6/18, 6/20, 6/27, 6/28)
Q2:前回2.7%、予想2.7%、結果2.2%(×)
【考察】前日から0.5%ダウン。
24:00 月末ロンドンフィックス
前後の時間帯でポジション調整によって不規則な乱高下生じやすい。
25:39~要人発言
米国ボウマンFRB理事(Fed News & Events, Calendar)
(過去の発言:4/2, 4/5, 4/10, 4/18, 5/3, 5/10, 5/17, 5/28, 6/25, 6/28)
:政策スタンスは中立。前回6/25タカ派発言。
【考察】タカ派発言。ドル円上昇
28:30 経済指標
IMM通貨先物6/25時点(ポジション推移)
円ショート大幅増
【考察】円ショート大幅増。ドル円上昇
<まとめ>
東京マーケット:
日足始値160.78
東京始値160.71を付けると、東京オープン前から月末五十日仲値に向けたドル買い需要、日銀国債買入オペ通知、神田財務官退任報道を受け日足・東京高値161.29へ急騰しました(1986年12月以来高値)。
ここで、前日には神田財務官退任が市場コンセンサスと見られていました。
従って、東京オープン直前からのドル円急騰は「神田財務官退任→為替介入警戒感後退→円売り材料」を当て込んで、財務省発表や報道前の織り込みもあったと推測されます。
そして報道後、後任の三村国際局長は知名度も高く安心感や、懸念材料通過からSell the factで160.84へ下落したと考えます。
その後、米国大統領選候補者第1回テレビ討論会でトランプ氏優勢が見られると161.13へ上昇し、東京引けに掛けて揉み合い。
東京終値160.94
【日本市況】円38年ぶり安値、債券上昇-TOPIX一時バブル後高値(Bloomberg)
欧米マーケット:
欧州オープンすると、休場中6/30仏下院選挙第1回投票を警戒したと推測されるリスクオフ欧州株下落や、6/12米国消費者物価指数(弱)・6/13米国生産者物価指数(弱)を受けた米国PCEデフレータ鈍化織り込みのためか下落。米国バーキン・リッチモンド連銀総裁タカ派発言あるも下落に呑まれました。
米国PCE(強弱)。米国PCEデフレータ(強)、但し予想と一致でも前回より低下。初動は米国PCEデフレータが前回から低下を受けて日足安値160.38(4H足押し安値160.34付近)へ下落。
しかしながら、米国PCEデフレータを受けても米国デイリー・サンフランシスコ連銀総裁のタカ派発言、米国シカゴ購買部協会景気指数(強)でドル円下げ止まりから上昇に転じると、米国ミシガン大学消費者信頼感指数確報値(強)、月末ロンフィク向けてのポジション調整ドル買いに連れて160.97へ一気に切り返し。その後、揉み合いで引けました。
(今年の米国PCEデフレータ発表日の動きをトレースするような流れ)
日足終値160.87
【米国市況】株反落、大統領選の行方も意識-円は160円台後半(Bloomberg)
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
通貨強弱
<ドル売り優勢>
買い材料:
・米国大統領選候補者第1回テレビ討論会:トランプ氏優勢の見方
・米国バーキン・リッチモンド連銀総裁、米国デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、米国ボウマンFRB理事のタカ派発言
・米国ミシガン大学消費者信頼感指数確報値(強)
売り材料:
・米国PCEデフレータ(対前回値、弱)
・米国ミシガン大学インフレ予測(弱)
・米国アトランタ連銀GDP Now(弱)
<円売り優勢>
買い材料:
・東京消費者物価指数(強)
・神田財務官後任の三村国際局長:知名度も高く安心感
・鈴木財務相、林官房長官の円安牽制発言
売り材料:
・神田財務官後任
・日銀、国債買入オペ通知
・リスクオン日本株上昇
・恒常的円売り(日米金融政策差、新NISA等海外投資急増、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・自動車認証不正問題→日本経済悪化→日銀政策修正観測後退
・インバウンド関連の旅行収支悪化懸念
成田空港 燃料確保できず 1週間に57便 新規就航や増便見合わせ(NHK)
38年ぶり安値の円相場、もはや日本株の支援者にならず-相関関係示唆(Bloomberg)
政策金利市場織り込み
現行FRB政策金利525~550bps
2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool)
次回7月31日公表:据え置き89.7%
初回利下げ観測9月18日公表:25bp引き下げ56.3%
年内利下げ観測:25bps×2回=50bps → 政策金利475~500bps相当
テクニカル分析
Trade
- 月足:6月陽線形成中。上昇トレンド。
- 週足:6/24週、陽線形成中。上昇トレンド。
- 日足:6/27陰線。上昇トレンド。
- 4H足:レンジ。
- 1H足:レンジ。
- 15M足:レンジ。
【シナリオ】
①Long
(A)4H足ダウ高値160.555付近へ下落→転換上昇→目標日足高値160.825
(B) (A)後、日足高値160.825をダウ上昇→目標切番161.500
(C)4H足ダウ高値159.820付近へ下落→転換上昇→目標4H足ダウ安値160.335
②Short
(D)4H足ダウ安値160.335かつ4H足20MAをダウ下落→目標4H足ダウ高値159.820
6月通算:18勝8敗、勝率69.2%、+300.0pips
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