ファンダメンタルズ分析
本日のシナリオ
1.経済指標
・米国住宅着工、米国住宅建築許可
・米国ミシガン大学消費者信頼感指数速報値、インフレ予測
・米国アトランタ連銀GDP Now
・IMM通貨先物円ポジション
2.要人発言
・政府、日銀(特に円安牽制、追加利上げ示唆)
・FRB
3.その他
・米国主要企業決算
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)
4.参考情報
最近の相場を動かす主な材料は、①円キャリー取引(促進or巻き戻し)、②米国労働市場、③米国経済成長、④インフレ、⑤地政学リスクに分類できます。
5.本日の注目材料
(1)8/15(木)マーケット影響
米小売売上高、米新規失業保険・失業保険継続申請件数等の強い数値を受け、月初指標で生じたハードランディング払拭し、ソフトランディング期待高進。
リスクオン(株高、金利高、ドル高、円安)で日足高値149.40へ約2.2円急騰しました。
本日はこの影響を引き継いでドル円上昇を想定しますが、休場中の地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)の急速な悪化懸念を嫌気してロング勢決済も入りやすいことから、ドル円急落にも警戒したい。
(2)米国経済指標
本日は米国ミシガン大学消費者信頼感指数速報値,インフレ予測の注目度が高いです。
7/31FOMC公表声明において、従来インフレリスクのみへの焦点から、「インフレ・雇用両面のリスクに留意」へと修正されました。従って、インフレ指標だけでなく雇用指標への注目度が更に高まっています。
FOMC以降の注目指標とドル円の動きを見ると、8/14(木)米国消費者物価指数(インフレ強弱、ほぼ予想通り)を除き、結果に対して素直なドル円の反応を示しています。
8/1(木)
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数(雇用弱)→初動ドル円下落から全戻し→再下落
・米国ISM製造業景気指数(景気弱、雇用弱、インフレ強)→ドル円下落
8/2(金)
・米国雇用統計(雇用弱、インフレ弱)→ドル円急落
8/5(月)
・米国ISM非製造業景気指数(景気強、雇用強、インフレ強)→ドル円上昇
8/8(木)
・米国新規失業保険申請件数(雇用強)→ドル円上昇
8/13(火)
・米国生産者物価指数(インフレ弱)→ドル円下落
8/14(水)
・米国消費者物価指数(インフレ強弱、ほぼ予想通り)→ドル円乱高下から上昇
8/15(木)
・米国小売売上高(景気強)、米国新規失業保険申請件数,失業保険継続申請件数(雇用強)、米国輸入,輸出物価指数(インフレ強)→ドル円急騰
・米国鉱工業生産指数,米国設備稼働率(景気&インフレ弱)→ドル円下落
最近のドル円は株価(円キャリー取引)と高相関であることから、株先物・株指数の動向とセットでドル円の方向性を判断する必要があります。
(a)強い数値→FRB9月利下げ期待織り込み剥落→ドル円急上昇
(b)強い数値→FRB高金利維持長期化嫌気→株下落(円キャリー巻き戻し)→ドル円下落
(c)弱い数値→FRB9月大幅利下げ観測、株上昇→ドル円下落
(d)弱い数値→米国景気減速懸念後退→株上昇(円キャリー促進)→ドル円上昇
(3)地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)
7/30以降は中東情勢が悪化し、8/7以降はウクライナ情勢も一気に緊張が高まりました。
・ガザ停戦交渉がドーハで開始、イスラエルとイランの緊張激化の中で(Bloomberg)
・ロシア兵が大量投降、戦争開始後で最多-ウクライナ軍の越境攻撃続く(Bloomberg)
下記材料が想定されますが、最近の傾向は(a)ドル売り主導のドル円下落が生じており、中東戦争勃発となればドル円急落の可能性が高いと推測します。
(a)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
(b)他国から安全資産米国債買い需要→ドル買い
(c)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)→円売り
(d)世界的景気悪化懸念→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
(e)原油先物価格上昇→インフレ懸念→ドル買い
(f)原油先物価格上昇→日本貿易収支悪化→円売り
マーケット動向
経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)
東京マーケット前
東京マーケット(9:00~15:00)
欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)
19:43~要人発言
米国グールズビー・シカゴ連銀総裁(2024年FOMC投票権なし)
(発言:7/2, 7/4, 7/11, 7/12, 7/18, 8/2, 8/5, 8/8, 8/16)
:政策スタンスは中立。前回8/8タカ派発言
米FRB、必要以上の金融引き締め不要=シカゴ連銀総裁(Reuters)
【考察】前日の米小売売上高等の強い数値でソフトランディング期待が高まった中で、必要以上の引締め不要のハト派、景気減速懸念発言。ドル円下落継続。
21:30 経済指標
米国住宅着工
住宅購入に伴い家電などの耐久消費財も購入されることが多く、個人消費への波及効果が大きいため注目されます。また、最近はFRB当局者が住宅関連指標をインフレ把握のために注目していることから重要度が上がっています。
件数:前回135.3万件(改定132.9)、予想131.5万件、結果123.8万件(×)
前月比:前回3.0%(改定1.1)、予想-1.3%、結果-6.8%(×)
米国住宅建築許可
件数:前回144.6万件(改定145.4)、予想142.8万件、結果139.6万件(×)
前月比:前回3.4%(改定3.9)、予想-1.5%、結果-4.0%(×)
【考察】サプライズの弱い数値。ドル円下落。
23:00 経済指標
米国ミシガン大学消費者信頼感指数速報値(速報値発表日; 1/19, 2/16, 3/15, 4/12, 5/10, 6/14, 7/12, 8/16)
米国コンファレンスボード消費者信頼感指数に先行して発表されるため注目度は高い。米国GDPの約70%を占める個人消費の動向を確認できる。
前回66.4、予想66.9、結果67.8(◎)
米国ミシガン大学インフレ予測
1年先:前回2.9%、予想2.8%、結果2.9%(○)
5年先:前回3.0%、予想2.9%、結果3.0%(○)
【考察】強い数値。ドル円上昇。
23:30 経済指標
米国アトランタ連銀GDP Now(US Atlanta Fed)(Investing.com)
米国アトランタ連銀が各種経済指標を基に算出した米国実質GDPの先行指標です。比較的精度が高いことから市場の注目度が上がっています。
(発表日; 8/15, 8/16, 8/26, 8/30)
Q2:前回2.4%、予想2.4%、結果2.0%(×)
26:39~要人発言
米国グールズビー・シカゴ連銀総裁(2024年FOMC投票権なし)
(発言:7/2, 7/4, 7/11, 7/12, 7/18, 8/2, 8/5, 8/8, 8/16)
:政策スタンスは中立。前回8/8タカ派発言
【考察】前日の米小売売上高等の強い数値でソフトランディング期待が高まった中で、必要以上の引締め不要のハト派、景気減速懸念発言。ドル円下落継続。
28:30 経済指標
IMM通貨先物8/13時点(ポジション推移)
円ロングへ転換
ヘッジファンド、円の買い越しに転換-キャリトレ解消で約3年ぶり(Bloomberg)
<まとめ>
東京マーケット:
日足始値149.32
取引開始直後に日足高値149.35を付けてからは、米小売売上高や米新規失業保険・失業保険継続申請件数等の強い数値を受けたリスクオン(米株高、米金利高、ドル高、円安)を引き継ぎ、日本景気改善期待のリスクオン(日本株高、日本金利高、円高、ドル安)へ波及しました。
150円が視野に入った前日の約2.2円急騰は「政府・日銀の強い円安牽制警戒」かつ「日本金利高→日銀早期追加利上げ観測再燃、日米金利差縮小→円買い」材料になってしまった様です(推測)。
結果として、ドル円上昇は続かず、じり下げ展開が優勢となり日通し安値148.74へと下落しました。1H足レンジ安値形成。
東京終値148.92。
【日本市況】株は大幅続伸、米景気懸念が後退-債券は大幅安(Bloomberg)
欧米マーケット:
欧州オープン直前、1H足レンジ内で三尊形成。
欧州オープンすると、リスクオン・オフ交錯(欧州株高、日米株先物安、欧米金利安、ドル安、円高)、典型的なリスクオフ発生(安全資産スイスフラン売り、資源国通貨(豪ドル・ニュージーランドドル)売り、ゴールド急騰)、原油先物価格下落、米国グールズビー・シカゴ連銀総裁のハト派・景気減速懸念発言も加わり、日通し安値147.62へ急落しました。4H足レンジ形成。
その後、4H足レンジ高値147.84かつ4H足20MA付近で押し目買いやショート勢決済が入ったことで揉み合いましたが、NYオープン後の米国ミシガン大学消費者信頼感指数速報値,インフレ予測(強)を受けて148.26へ上昇。
4H足レンジ下限147.84かつ20MA付近に、1H足レンジ形成。
しかし、リスクオン・オフ交錯(米株高、米金利安、ドル安、円高)は続き、日足レンジ高値148.23がレジスタンスになると、米国グールズビー・シカゴ連銀総裁のハト派,景気減速懸念発言、IMM通貨先物8/13時点の円ロング転換を受けて日足安値147.57を付けました。
日足終値147.61
総じて、8/15米国小売売上高等(強)を受けたリスクオン(米株高、米金利高)引き継ぐも、日本金利高から日米金利差縮小・日銀早期追加利上げ観測再燃し、日足高値149.35から下落継続。FRB要人ハト派・景気減速懸念発言、IMM通貨先物円ロング転換を受け、日足安値147.57を付けました。
【米国市況】S&P500種が7日続伸、景気が底堅く-円は147円台後半(Bloomberg)
ファンダメンタルズ材料とドル円の関係
通貨強弱
<ドル売り優勢>
買い材料:
・米国ミシガン大学消費者信頼感指数速報値、インフレ予測(強)
売り材料:
・8/15米小売売上高等の強い数値を受けたリスクオン(米株高、米金利高、ドル高、円安)が日本景気改善期待リスクオン(日本株高、日本金利高、円高、ドル安)へ波及→日米金利差縮小
・休場中の地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)悪化を懸念したロング勢決済(推測)
・米国グールズビー・シカゴ連銀総裁のハト派、景気減速懸念発言
・米国住宅着工、米国住宅建築許可(弱)
・米国アトランタ連銀GDP Now(弱)
・原油先物価格下落→インフレ懸念後退
<円買い優勢>
買い材料:
・8/15米小売売上高等の強い数値を受けたリスクオン(米株高、米金利高、ドル高、円安)が日本景気改善期待リスクオン(日本株高、日本金利高、円高、ドル安)へ波及→日銀早期追加利上げ観測再燃、日米金利差縮小
・休場中の地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)悪化を懸念したロング勢決済(推測)
・IMM通貨先物8/13時点、円ロングへ転換
・原油先物価格下落→日本貿易収支改善
売り材料:
・恒常的円売り(日米金融政策差[日本実質金利マイナスで金融緩和環境継続]、新NISA等海外投資急増、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他円売り(自動車認証不正問題、航空燃料不足によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念)
政策金利市場織り込み
現行FRB政策金利525~550bps
2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool)
次回9月18日公表:25bps引き下げ76.5→74.5%、50bps引き下げ23.5→25.5%
年内利下げ観測:25bps×3回=75bps → 政策金利450~475bps相当
テクニカル分析
Trade
- 月足:8月陰線形成中。レンジ。20MAから上昇中。
- 週足:8/12週、陽線形成中。8/5週下ヒゲピンバーからBB-1σへ向かい上昇中。
- 日足:8/15大陽線。BB-1σへレジサポから20MAへ上昇見込み。
- 4H足:上昇トレンド。
- 1H足:上昇トレンドからレンジ移行中。
- 15M足:レンジ。
【シナリオ】
①Long
(A)1H足押し安値148.905付近へ下落→転換上昇→目標日足高値149.400
(B)日足高値149.400をダウ上昇→転換上昇→目標4H足戻り高値149.778
②Short
(C)1H足レンジ安値148.905かつ1H足20MAをダウ下落→目標日足レンジ高値148.226
(D)4H足戻り高値149.778付近へ上昇→転換下落→目標日足高値149.400
本日:1勝1敗、+11.0pips
8月通算:13勝8敗、勝率61.9%、RR 1.91、+325.0pips
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