2024年10月10日(木)ドル円戦略と結果

ファンダメンタルズ分析
テクニカル分析
1. トレードシナリオと結果

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

１．経済指標
・日本国内企業物価
・日本5年債入札
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数
・米国消費者物価指数(CPI)
・米国30年債入札

２．要人発言
・政府日銀円安牽制発言（特に150円台目前付近）
・FRB

３．その他
・五十日仲値
・地政学リスクオフ（中東、ウクライナ・ロシア）

４．参考情報
最近の相場を動かす主な材料は、①米国労働市場、②インフレ、③米国経済成長、④地政学リスク、⑤米国大統領選挙、⑥円キャリー取引（促進or巻き戻し）に分類できます。

５．本日の注目材料
（１）米国経済指標
注目は、米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数と米国消費者物価指数です。
（2024年9～10月、米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数発表日のドル円動きまとめ）
（2024年、米国消費者物価指数発表日のドル円動きまとめ）

10/4(金)米国雇用統計サプライズ（強）を受けて、市場の主な注目材料は①米国労働市場、②インフレが同等レベルになりました。

(a)米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数（強）と米国消費者物価指数(強)→ドル円急騰
(b)米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数（弱）と米国消費者物価指数(弱)→ドル円急落
(c)米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数と米国消費者物価指数が強弱交錯→初動ドル円乱高下。

（２）中東地政学リスクオフ
10/1以降、イランがイスラエルへ大規模なミサイル攻撃を実施し、イスラエルは報復を宣言、米国軍も今まで以上に戦闘に直接関与することから、中東戦争拡大への懸念が高まりました。

現状は地政学リスクオフ悪化の一途を辿っておりドル円急落から乱高下の可能性が高いですが、イスラエル報復開始が停滞するようなら地政学リスクオフ後退から巻き戻しのドル円上昇を想定します。
今まで以上に報道や要人発言ヘッドラインに要警戒が必要と考えます。

(a)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
(b)他国から安全資産米国債買い需要→リスクオフドル買い
(c)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→株上昇（円キャリー促進）→円売り
(d)世界的景気悪化懸念→株下落（円キャリー巻き戻し）→円買い
(e)原油先物価格上昇→インフレ懸念→ドル買い
(f)原油先物価格上昇→日本貿易収支悪化→円売り

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い：◎、予想以上：〇、予想より悪い：△、前回かつ予想より悪い：×)

東京マーケット前

6:30～要人発言
米国コリンズ・ボストン連銀総裁（2024年FOMC投票権なし）
（過去の発言：6/18, 8/9, 8/22, 10/8, 10/10）
：政策スタンスは中立。前回10/8景気減速懸念、利下げ慎重ハト派発言
ボストン連銀総裁、0.5ポイント利下げは「賢明」だった－リスク考慮（Bloomberg）

【考察】景気減速懸念、利下げ慎重ハト派発言

7:08～要人発言
米国デイリー・サンフランシスコ連銀総裁（2024年FOMC投票権あり）
（過去の発言：7/11, 7/16, 7/19, 8/6, 8/26, 9/5, 10/10）
：政策スタンスは中立。前回9/5ハト、タカ派発言
ＳＦ連銀総裁、年内１回ないし２回の0.25ポイント追加利下げ見込む（Bloomberg）

【考察】タカ、ハト派発言

8:50 経済指標
日本国内企業物価
前月比：前回-0.2%（改定）、予想-0.4%、結果0.0%（◎）
前年比：前回2.5%（改定2.6）、予想2.3%、結果2.8%（◎）

【考察】強い数値。ドル円下落。

東京マーケット(9:00~15:00)

9:55 五十日仲値
仲値に向けて実需勢のドル買い円売り、仲値通過後にドル売り円買いの傾向多いものの、逆の動きになることもあります。

12:35 経済指標
日本5年債入札（財務省）
「最高落札利回り低い、応札倍率高い、テールが短い→入札好調→国債価格上昇→利回り低下→円売り材料」
「最高落札利回り高い、応札倍率低い、テールが長い→入札不調→国債価格低下→利回り上昇→円買い材料」
但し、「国債入札→市場へ国債供給イベント→国債価格下落→利回り上昇」にもなりやすいことから、「入札前から織り込み→利回り上昇→円買い」や「入札通過→Sell the fact円売り」が生じることもあります。
発行予定額：２兆3000億円程度
最高落札利回り：前回0.525%、結果0.568%（×）
応札倍率：前回3.76倍、結果3.73倍（×）
テール：前回2銭、結果3銭（×）

【考察】入札不調。ドル円上昇継続。

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

16:39～要人発言
氷見野日銀副総裁
（過去の発言：8/28, 10/10）
:前回8/28ハト・タカ派発言。
緩和調整のタイミング、経済･物価･金融の推移次第－氷見野日銀副総裁（Bloomberg）

【考察】金融正常化示唆のタカ派発言。ドル円下落

17:37～要人発言
神田内閣官房参与（前財務官）
神田前財務官、短期の相場急変動や不確実性に警戒必要と強調（Bloomberg）

【考察】急変動牽制は事実上の円安牽制発言

21:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数
失業者が初めて申請した失業保険給付の申請件数を示す指標。失業率や非農業部門雇用者数の先行指標として注目されます。失業保険継続申請件数より注目度は高い。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回22.5万件（改定）、予想22.9万件、結果25.8万件（×）

米国失業保険継続申請件数
新規申請後に失業保険の申請を継続している人数を示す指標。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回182.6万件（改定181.9）、予想183.1万件、結果186.1万件（×）
米新規失業保険申請、約１年ぶり高水準－ハリケーンの影響も反映（Bloomberg）

【考察】サプライズの弱い数値。

21:30 経済指標
米国消費者物価指数(CPI)（発表日; 1/11, 2/13, 3/12, 4/10, 5/15, 6/12, 7/11, 8/14, 9/11）
FRBが金融政策を決定する上でインフレ変動を把握する重要指標。CPIは米国生産者物価指数(PPI)の川下に相当する指標でPPIより注目度は高い。基調的なインフレを見る上では総合指数よりコア指数が重要。基本は「予想より高い数値→ドル買い材料」、「予想より低い数値→ドル売り材料」

前月比：前回0.2%（改定）、予想0.1%、結果0.2%（○）
前年比：前回2.5%（改定）、予想2.3%、結果2.%（○）
コア前月比：前回0.3%（改定）、予想0.2%、結果0.3%（○）
コア前年比：前回3.2%、予想3.2%、結果3.3%（○）
米ＣＰＩ、９月は予想を上回る伸び－インフレ鈍化の流れ休止（Bloomberg）

【考察】
発表前：氷見野日銀副総裁のタカ派発言、神田内閣官房参与（前財務官）の急変動牽制発言を受けてドル円下落。直前148.94。
発表後：米国消費者物価指数（強）、米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数（弱）が交錯し初動で一気に日足安値148.25と日足高値149.61）を付けて乱高下。

22:15～要人発言
米国クックFRB理事（Fed News & Events, Calendar）
（過去の発言：9/27, 10/1, 10/10）
：政策スタンスは中立。前回10/1金利見通しについてはコメントなし。

【考察】経済や金融政策の見通しのコメントなし

23:10～要人発言
米国グールズビー・シカゴ連銀総裁（2024年FOMC投票権なし）
（発言： 10/3, 10/4, 10/10）
：政策スタンスは中立。前回10/4ハト派発言
「インフレは予想範囲内」
「住宅市場は改善」
シカゴ連銀総裁、ＣＰＩ統計を過度に懸念せず－減速傾向は明らか（Bloomberg）

【考察】インフレ懸念なしのハト派発言

23:32～要人発言
米国バーキン・リッチモンド連銀総裁（2024年FOMC投票権あり）
（過去の発言：8/2, 8/8, 8/26, 8/29, 10/2, 10/10）
：政策スタンスはタカ派。前回10/2タカ派発言
「インフレの勝利宣言できない」
リッチモンド連銀総裁、インフレはなお「正しい方向」に進んでいる（Bloomberg）

【考察】ハト、タカ派発言。ドル円上昇。

24:00～要人発言
米国ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁（2024年FOMC投票権あり）
（過去の発言：9/6, 9/26, 10/4, 10/10）
：政策スタンスは中立。前回9/26金融政策や経済見通しについてコメントなし。
ＮＹ連銀総裁、金利は「時間をかけて」中立水準に引き下げるべきだ（Bloomberg）

【考察】利下げ慎重タカ派発言

25:47～要人発言
米国ボスティック・アトランタ連銀総裁（2024年FOMC投票権あり）
（過去の発言：10/3, 10/8, 10/10）
：政策スタンスはハト派。前回10/8タカ派発言
11月ＦＯＭＣ、利下げ見送りでも問題なし＝アトランタ連銀総裁（Reuters）

【考察】11月FOMC金利据え置き（利下げなし）の可能性示唆のサプライズタカ派発言。ドル円急上昇。

26:00 経済指標
米国30年債入札（Upcoming Auctions）
「最高落札利回り低い、応札倍率高い、テールが短い→入札好調→国債価格上昇→利回り低下→ドル売り材料」
「最高落札利回り高い、応札倍率低い、テールが長い→入札不調→国債価格低下→利回り上昇→ドル買い材料」「国債入札→市場へ国債供給イベント→国債価格下落→利回り上昇」にもなりやすいことから、「入札前から織り込み→利回り上昇→ドル買い」や「入札通過→Sell the factドル売り」が生じることもあります。

発行額（Offering Amount）：220億ドル
最高落札利回り（High Yield）：前回4.015%、結果4.389%（×）
応札倍率（Bid to Cover Ratio, 応札額/発行額）：前回2.38倍、結果2.50倍（◎）
外国中銀など間接入札者の落札比率（Indirect Bidder）：前回68.7%、結果80.5%（◎）
テール(Bid利回りと落札利回りの差)：前回+1.4bps、結果-1.5bps（◎）。4.389-4.404=-0.015
WI：4.404%

【考察】入札好調。ドル円下落。

＜まとめ＞
東京マーケット：
・ドル円：揉み合いから上昇
・株式：日経平均,TOPIX上昇、ダウ先物揉み合い
・国債：日本10年債利回り上昇、米国10年債利回り上昇
・通貨強弱：ドル＞円（ドル買い、円買いから売り）
・原油先物価格：上昇

日足始値149.24
取引開始後、米国コリンズ・ボストン連銀総裁の景気減速懸念・ハト派発言、日本国内企業物価（強）を受けて日通し安値149.01へ下落すると、米国株上昇波及と中国株下落波及交錯しながらも、日本株上昇につれて日通し高値149.55を付けて引けました。

【日本市況】株続伸、円は一時２カ月ぶり安値－米ＣＰＩ控え金利上昇（Bloomberg）

欧米マーケット：
・ドル円：欧州下落、NY乱高下
・株：欧州株、米国主要３指数（ダウ、S&P、ナスダック）下落、日経平均先物揉み合い上昇
・国債：欧州10年債利回りまちまち、米国10年債利回り揉み合い上昇
・通貨強弱：ドル＜円（ドル売り、円買い）
・原油先物価格：上昇

欧州オープン直後、氷見野日銀副総裁のタカ派発言、神田内閣官房参与（前財務官）の急変動牽制発言を受けて、日通し安値148.78へ下落。

米国消費者物価指数（強）、米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数（弱）が交錯し、初動で一気に日足安値148.25と日足高値149.61を付けて乱高下。

NYオープン後、FRB要人のハト派・タカ派発言、米国30年債入札（強）を受けてドル円乱高下継続し引けました。

日足終値148.58

【米国市況】株下落、円は対ドルで上昇－ＦＲＢの次の一手に不透明感（Bloomberg）

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

＜ドル売り優勢＞
買い材料：
・米国消費者物価指数（強）
・米国ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、米国ボスティック・アトランタ連銀総裁のタカ派発言

売り材料：
・米国コリンズ・ボストン連銀総裁、米国グールズビー・シカゴ連銀総裁のハト派発言
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数（弱）
・米国30年債入札（強）

＜円買い優勢＞
買い材料：
・日本国内企業物価（強）
・氷見野日銀副総裁のタカ派発言
・神田内閣官房参与（前財務官）の急変動牽制発言
・米国消費者物価指数（強）→インフレ懸念→欧米株下落（円キャリー巻き戻し）
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数（弱）→労働市場減速懸念→欧米株下落

売り材料：
・10/4米国雇用統計（強）影響→米国好景気期待→米国株上昇波及→日本株上昇（円キャリー促進）
・日本5年債入札（弱）
・2024年6月調査想定為替レート上期144.96（日本銀行、短観）以上推移→日本企業業績改善・株上昇（円キャリー促進）
・構造的円売り（日米金融政策差[日本実質金利マイナスで金融緩和環境継続]、新NISA等海外投資急増、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増）
・その他円売り（自動車認証不正問題、航空燃料不足・パイロット不足・クレジットカード利用赤字によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念）