2024年10月3日(木)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

1.経済指標
・日本10年債入札
・日銀、需給ギャップと潜在成長率
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数
・米国PMI確報値(サービス業、総合)
・米国耐久財受注確報値
・米国製造業新規受注
・米国ISM非製造業景気指数

2.要人発言
・野口日銀審議委員
・FRB

3.その他
・TOM効果:株式投資の月末安・月初高アノマリー。期間は営業日ベースでの月末3日間程度、月初3日間程度。月末の損益確定、毎月一定額を積み立てる投資信託などの購入が月末・月初に集中する傾向があります。「株買い→円売り材料」、「株売り→円買い材料」の傾向。特に2024年1月から新NISAが始まり全世界株への資金流入が一気に進んでおり、「株買い→円売り→ドル円上昇」しやすいと推測されます。
・地政学リスクオフ(中東、ウクライナ・ロシア)

4.参考情報
最近の相場を動かす主な材料は、①米国労働市場、②米国経済成長、③インフレ、④円キャリー取引(促進or巻き戻し)、⑤米国大統領選挙、⑥地政学リスクに分類できます。
・来週の円相場は上昇か、石破新総裁で日銀の利上げ路線維持を期待(Bloomberg
・【債券週間展望】長期金利上昇か、石破新総裁で「高市トレード」反動(Bloomberg

5.本日の注目材料
(1)米国経済指標
注目は米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数と米国ISM非製造景気指数です。
2024年9月、米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数発表日のドル円動きまとめ
2024年、米国ISM非製造業景気指数発表日のドル円動きまとめ

直近の労働市場関連指標結果に絞ってみると、
10/1米国ISM製造業雇用(弱),米国JOLTS求人件数(強)、10/2米国ADP雇用者数(強)となっており、現時点では堅調な労働市場が伺えます。

基本は結果に対して下記の様なドル円反応を想定しますが、中東地政学リスクオフ悪化が交錯する可能性は続いていますので注意したい。
(a)米国ISM非製造景気指数かつ雇用(強)→ドル円上昇
(b)米国ISM非製造景気指数かつ雇用(弱)→ドル円下落
(c)米国ISM非製造景気指数,雇用(強弱交錯)→ドル円乱高下


<10月度、主要指標とドル円関係>

10/1(火)
・米国ISM製造業新規受注(強)、米国ISM製造業景気指数,仕入価格,雇用(弱)米国JOLTS求人件数(強)→ドル円乱高下。但し、サプライズの中東地政学リスクオフ悪化も交錯。

10/2(水)
米国ADP雇用者数(強)→ドル円急上昇。中東地政学リスクオフ後退中。

(2)中東地政学リスクオフ
10/1イランがイスラエルへ大規模なミサイル攻撃を実施し、米国軍も今まで以上に戦闘に直接関与することから、中東戦争拡大への懸念が高まりました。
10/2は、イラン攻撃休止かつイスラエル大規模報復攻撃がなかったことで、リスクオフ後退しました。
しかしながら、イスラエルは数日以内の報復攻撃を予告しており、リスクオフ悪化はほぼ確実。

地政学リスクオフ悪化となれば初動ドル円急落から乱高下の可能性が高く、地政学リスクオフ後退となれば巻き戻しのドル円上昇を想定します。従って、今まで以上に報道や要人発言ヘッドラインに要警戒が必要と考えます。

(a)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→ドル売り
(b)他国から安全資産米国債買い需要→リスクオフドル買い
(c)安全資産米国債買い→米国債利回り低下→株上昇(円キャリー促進)→円売り
(d)世界的景気悪化懸念→株下落(円キャリー巻き戻し)→円買い
(e)原油先物価格上昇→インフレ懸念→ドル買い
(f)原油先物価格上昇→日本貿易収支悪化→円売り

マーケット動向

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

東京マーケット(9:00~15:00)

10:31~要人発言
野口日銀審議委員
(過去の発言:4/18, 10/3)
2%目標と整合的な意識確立には相応の時間、忍耐強く緩和環境維持を=野口日銀委員(Reuters
:政策スタンスはハト派。前回4/18ハト派発言

【考察】利上げ慎重姿勢のハト派発言。しかし、前日まで政府・日銀の追加利上げ牽制やハト派発言が続いていたことで一気に織り込みが進んだためかドル円反応薄。

12:35 経済指標
日本10年債入札(財務省
「最高落札利回り低い、応札倍率高い、テールが短い→入札好調→国債価格上昇→利回り低下→円売り材料」
「最高落札利回り高い、応札倍率低い、テールが長い→入札不調→国債価格低下→利回り上昇→円買い材料」
「国債入札→市場へ国債供給イベント→国債価格下落→利回り上昇」にもなりやすいことから、「入札前から織り込み→利回り上昇→円買い」や「入札通過→Sell the fact円売り」が生じることもあります。
発行予定額:2兆6000億円程度
最高落札利回り:前回0.925%、結果0.873%(◎)
応札倍率:前回3.17倍、結果3.53倍(◎)
テール:前回9銭、結果2銭(◎)

【考察】入札好調。

13:10~要人発言
石破首相、市場や金融関係者との意思疎通重要-「投資大国」実現へ(Bloomberg

【考察】前日までの様な日銀利上げ牽制発言なし

14:00 経済指標
日銀、需給ギャップと潜在成長率
需給ギャップ:日本経済全体の「潜在的な供給力」と「実際の需要」の差。需要が供給力を上回りプラスになると物価上昇、需要不足でマイナスになると物価下落の傾向。
前回-0.66%(改定)、結果-0.55%(◎)
潜在成長率:は設備などの資本、労働力、生産性の供給能力をどれだけ増大させられるかを示します。
日銀版需給ギャップ、4―6月期は-0.55% 17四半期連続のマイナス(Reuters

【考察】前回より強いものの、17四半期連続のマイナス

14:39~要人発言
野口日銀審議委員
(過去の発言:4/18, 10/3)
利上げは「極めて慎重に行うべきだ」、時間的余裕ある-野口日銀委員(Bloomberg

【考察】利上げ慎重姿勢のハト派発言。しかし、前日まで政府・日銀の追加利上げ牽制やハト派発言が続いていたことで一気に織り込みが進んだためかドル円反応薄。

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

18:05~要人発言
政府・日銀が共同声明に沿って緊密連携、日銀総裁が財務相らと確認(Bloomberg

【考察】植田日銀総裁、加藤勝信財務相と赤沢亮正経済再生担当相の3者初会談。前日まで相次いだ政府・日銀の追加利上げ牽制やハト派発言共有のためかドル円上昇。

18:18~要人発言
赤沢経済再生相

【考察】日銀利上げ牽制発言。

21:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数
失業者が初めて申請した失業保険給付の申請件数を示す指標。失業率や非農業部門雇用者数の先行指標として注目されます。失業保険継続申請件数より注目度は高い。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回21.8万件(改定21.9)、予想22.1万件、結果22.5万件(×)

米国失業保険継続申請件数
新規申請後に失業保険の申請を継続している人数を示す指標。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回183.4万件(改定182.7)、予想183.0万件、結果182.6万件(◎)

【考察】強弱混在。ドル円乱高下。

22:45 経済指標
米国PMI確報値
(速報値発表日:1/242/223/214/235/236/217/248/22, 9/23
基準50。景気先行性高いため注目度高い。速報値は確報値より注目度高い。
サービス業:前回55.4、予想55.4、結果55.2(×)
総合:前回54.4、予想54.4、結果54.0(×)

23:00 経済指標
米国耐久財受注確報値:設備投資の先行指標
前月比:前回0.0%(改定)、予想0.0%、結果0.0%(○)
コア前月比:前回0.5%(改定-)、予想0.5%、結果0.5%(○)

23:00 経済指標
米国製造業新規受注
前月比:前回5.0%(改定4.9)、予想0.3%、結果-0.2%(×)

23:00 経済指標
米国ISM非製造業景気指数(ISM Report On Business
(過去の発表日; 1/52/53/54/35/36/57/38/5, 9/5, 10/3)
景気の先行指標として注目度大。
基準50、前回51.5(改定)、予想51.5、結果54.9(◎)→注目大

・仕入価格:前回57.3、予想56.0、結果59.4(◎)
・新規受注:前回53.0、予想52.5、結果59.4(◎)
・雇用:前回50.2、予想50.0、結果48.1(×)→注目大
米ISM非製造業総合景況指数、2023年2月以来の高水準(Bloomberg

【考察】
発表前:切番147.00手前揉み合い。直前146.66(日足戻り高値146.91付近)。
発表後:総じて強い数値。初動146.91へ上昇するも、注目の米国ISM非製造業雇用(弱)かつ米国製造業新規受注(弱)、かつ直後の米国バイデン大統領発言を受けて中東地政学リスクオフと原油先物価格急上昇も交錯し、ドル円乱高下。

23:13~要人発言
米国バイデン大統領
イスラエルの対イラン報復、石油施設攻撃を「協議中」とバイデン氏(Bloomberg

【考察】中東地政学リスクオフ。原油先物価格急上昇。ドル円乱高下。

24:13~要人発言
米国ボスティック・アトランタ連銀総裁(2024年FOMC投票権あり)
(過去の発言:8/138/238/299/4, 9/23, 9/30, 10/1)
:政策スタンスはハト派。前回9/30ハト派発言

【考察】失業率低下見込み

26:09~要人発言
米国グールズビー・シカゴ連銀総裁(2024年FOMC投票権なし)
(発言: 9/69/23, 9/30, 10/3)
:政策スタンスは中立。前回9/30ハト派発言
シカゴ連銀総裁、金利は今後1年に「大幅に」下がる必要あると再表明(Bloomberg

【考察】大幅利下げ支持のハト派発言。ドル円揉み合い継続。

<まとめ>
東京マーケット:
・ドル円:上昇から全戻し下落
・株式:日経平均上昇、TOPIX上昇、ダウ先物下落
・国債:日本10年債利回り下落、米国10年債利回り揉み合い上昇
・通貨強弱:ドル>円(ドル買い優勢、円売り優勢)
・原油先物価格:揉み合い上昇

取引開始直後に日足安値146.29を付けると、10/2の赤沢経済再生相・石破首相の日銀利上げ牽制発言、植田日銀総裁ハト派発言、米国ADP雇用者数(強)、米国バーキン・リッチモンド連銀総裁タカ派発言の影響を引き継いで、日足高値147.24へ上昇(4H足戻り高値147.13付近)。

その後、野口日銀審議委員のハト派発言や日本10年債入札(強)が続いたものの、前日まで政府・日銀の追加利上げ牽制やハト派発言が続いていたことで一気に織り込みが進んだためかドル円反応薄。反対に、Sell the factの様な147円台前半ポジション調整のためか、146.53へ下落して引けました。
日足始値146.39

【日本市況】円下落、石破首相発言で早期利上げ観測後退-株は大幅高(Bloomberg

欧米マーケット:
・ドル円:欧州乱高下、NY乱高下
・株:欧州株下落、米国主要3指数(ダウ、S&P、ナスダック)下落、日経平均先物乱高下。
・国債:欧州10年債利回り上昇、米国10年債利回り上昇
・通貨強弱:ドル>円(ドル買い、円買い優勢)
・原油先物価格:急上昇

欧州オープン直後、146.30(日足安値146.29付近)まで下押しあるも、日銀総裁・財務相・経済再生相の3者初会談で前日まで相次いだ政府・日銀の追加利上げ牽制やハト派発言共有のためかドル円上昇。

注目の米国新規失業保険申請件数(弱)、失業保険継続申請件数(強)交錯でドル円乱高下。
米国ISM非製造業景気指数,仕入価格, 新規受注(強)、米国ISM非製造業雇用(弱)、米国製造業新規受注(弱)も強弱交錯。
直後に、米国バイデン大統領発言「イスラエルによるイラン石油施設攻撃を協議中」も飛び出して中東地政学リスクオフ・原油先物価格急騰も交錯し、ドル円乱高下で引けました。
日足終値146.96

【米国市況】株下落、指標堅調も中東巡り懸念強まる-146円台後半(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル買い優勢>
買い材料:
・10/2米国ADP雇用者数(強)影響継続
・米国ISM非製造業景気指数、仕入価格、新規受注(強)
・米国バイデン大統領「イスラエルによるイラン石油施設攻撃を協議中」→原油先物価格上昇

売り材料:
・米国製造業新規受注(弱)
・米国グールズビー・シカゴ連銀総裁のハト派発言

<円買い優勢>
買い材料:
・米国バイデン大統領「イスラエルによるイラン石油施設攻撃を協議中」→中東地政学リスクオフ

売り材料:
・10/2赤沢経済再生相、石破首相の日銀利上げ牽制発言影響
・10/2植田日銀総裁のハト派発言影響
・10/2林官房長官、加藤財務相のデフレ脱却最優先発言影響
・野口日銀審議委員のハト派発言
・日本10年債入札(強)
・赤沢経済再生相の日銀利上げ牽制発言
・米国バイデン大統領「イスラエルによるイラン石油施設攻撃を協議中」→原油先物価格上昇
・2024年6月調査想定為替レート上期144.96(日本銀行、短観)以上推移→日本企業業績改善・株上昇(円キャリー促進)
・構造的円売り(日米金融政策差[日本実質金利マイナスで金融緩和環境継続]、新NISA等海外投資急増、デジタル赤字増加等、骨太方針の家計支援で財政支出増)
・その他:自動車認証不正問題、航空燃料不足・パイロット不足・クレジットカード利用赤字によるインバウンド関連の旅行収支悪化懸念

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利475-500bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回11月7日(木)公表:25bps引き下げ64.8→65.4%、50bps引き下げ35.2→34.6%
年内利下げ観測:25bps×3回=75bps → 政策金利400~425bps相当

テクニカル分析

トレードシナリオと結果

  • 月足:10月陽線形成中。レンジ。20MA・押し安値付近。
  • 週足:9/30週、陽線形成中。戻り高値付近
  • 日足:10/2大陽線。上昇トレンド。BB+2σ付近。
  • 4H足:上昇トレンド。
  • 1H足:上昇トレンド。
  • 15M足:レンジ。

【シナリオ】
①Long
(A)4H足戻り高値145.797付近へ下落→転換上昇→目標日足高値146.518
(B)日足高値146.518をダウ上昇→目標4H足戻り高値147.134

②Short
(C)4H足戻り高値147.134付近へ上昇→転換下落→目標日足高値146.512
(D)4H足戻り高値145.797かつ1H足20MAをダウ下落→目標日足レンジ高値144.822

本日:2勝0敗、+76.4pips
10月通算:3勝3敗、勝率50.0%、RR2.02 、+91.0pips

(Trading View)

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