2024年5月9日(木)ドル円戦略と結果

ドル円戦略

ファンダメンタルズ分析

本日のシナリオ

<注目材料>
(1)5/8の欧米マーケット影響
今週5/6,5/7の傾向は欧州オープン前から序盤に掛けてドル円下落でしたが、本日は上昇継続。
欧州序盤に植田日銀総裁から火消しの円安牽制発言があり一瞬155.21へ下押しするも、午前中のドル円急騰を受けて焦りを受けただけと見透かされ即全戻しから日通し高値更新155.685到達。
直後に政府・日銀、2回の為替介入実施判明報道。観測通りでサプライズなしですが、警戒感は高まり一時下落するも米国コリンズ・ボストン連銀総裁のタカ派発言を受けて全戻し。
日足終値155.53

(2)経済指標
・日本毎月勤労統計
・日銀、金融政策決定会合における主な意見(4月25・26日分)
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数
・米国30年債入札
・BOE金融政策委員会

(3)要人発言
・政府日銀円安牽制
・FRB要人
・ベイリーBOE総裁

(4)その他
・中東地政学リスクオフ
来週のドル・円は上値の重い展開か、低流動性下での介入リスクに警戒(Bloomberg
【債券週間展望】長期金利に上昇圧力、日銀のオペと主な意見に注目(Bloomberg

本日の注目材料は4点。

①政府・日銀為替介入観測
4/29に続き、5/1も政府・日銀為替介入観測発生しました。しかし、5/4には米国イエレン財務長官より強い為替介入牽制発言(前回4/25牽制発言)。5/6~5/8はこの発言を受けてか介入警戒後退し強い円売り発生。政府・日銀から円安牽制発言が出ても実介入なければ押し目買いの好機になりやすいと考えます。

米財務長官、為替介入「まれであるべきだ」-慎重姿勢示す(Bloomberg

②米国経済指標
「強い数値→ドル円上昇」、「弱い数値→ドル円下落」の素直な動きを想定。但し弱い数値が出てもドル円下落は一時的となり、押し目買いの機会になりやすいと考えます。

③米国FRB要人発言
5/3米国雇用統計(弱)を受けてもFRB要人タカ派発言相次いでおり、本日もタカ派発言を想定。下押ししたタイミングでのタカ派発言であれば押し目買いの好機と推測します。

④中東、ウクライナ、ロシア地政学リスクオフ
各地域で軍事行動が活発化。特にイスラエルを巡る中東地政学リスクオフに関するヘッドラインに注視したい。
原油先物価格上昇、安全資産米国債買い、リスクオフ円買い材料交錯しますが、基本的には原油先物価格上昇によりドル円上昇しやすい。
戦闘激化となれば一時的に強いリスクオフに伴うドル円急落に警戒必要ですが、この場合でも押し目買いの機会になりやすいと推測します。

総じて、政府・日銀の強い円安牽制や実為替介入もしくは確度の高い追加利上げ観測報道以外にドル円下落の材料に乏しく、ドル円上昇優勢と考えます。

マーケットの動き

経済指標評価
(前回かつ予想より良い:◎、予想以上:〇、予想より悪い:△、前回かつ予想より悪い:×)

東京マーケット前

8:03~要人発言
神田財務官
(過去の発言:3/53/253/273/294/114/154/174/184/294/30, 5/2, 5/7, 5/9)
:前回5/7円安牽制発言。
為替介入「いつでもやる用意がある」、足元の円安受け-神田財務官(Bloomberg

【考察】円安牽制発言。5/8為替介入報道へのコメントなし。ドル円下落。

8:30 経済指標
日本毎月勤労統計(厚生労働省
現金給与総額:前回1.8%(改定1.4)、予想1.4%、結果0.6%(×)
実質賃金:前回-1.3%、予想-1.4%、結果-2.5%(×)
3月実質賃金2.5%減、24カ月連続マイナス-所定内給与は増加基調維持(Bloomberg

【考察】弱い数値。実質賃金は過去最長の24ヵ月連続のマイナス。利上げ観測後退。

8:50 要人発言
日銀、金融政策決定会合における主な意見(4月25・26日分)(日本銀行
円安で基調物価の上振れ続けば、正常化ペース速まる可能性-日銀意見(Bloomberg

【考察】総じてハト派内容ですが、利上げ議論のタカ派内容も明らかになりドル円下落。

東京マーケット(9:00~15:00)

10:29~要人発言
鈴木財務相
(過去の発言:3/53/73/83/123/153/193/213/223/263/273/294/14/24/44/54/94/114/124/154/164/174/184/194/234/254/265/3, 5/8, 5/9)
:前回5/8円安牽制発言。
為替が国民生活に与える影響分析し適切に対応=鈴木財務相(Reuters

【考察】円安牽制発言。

10:36~要人発言
植田日銀総裁
(過去の発言:3/53/73/123/133/193/213/223/274/44/54/84/94/104/184/234/26,5/7, 5/8, 5/9)
:前回5/7円安牽制発言。
円安、輸入価格上昇通じて実質所得下げる影響=植田日銀総裁(Reuters

【考察】円安牽制発言

欧州マーケット(16:00~25:00)
NYマーケット(22:30~29:00)

20:00 経済指標
BOE金融政策委員会
政策金利:前回5.25%、予想5.25%、結果5.25%(○)
MPC議事要旨:タカ派内容

【考察】前回0.25%利下げ主張1人が2人に増加したことを受けてポンド急落。「ドル買い>円買い」によりドル円上昇。

20:37~要人発言
英国ベイリーBOE総裁
英中銀、利下げに近づく-総裁は市場予想より速いペースも示唆(Bloomberg

【考察】ハト派、タカ派発言交錯。

21:30 経済指標
米国新規失業保険申請件数
失業者が初めて申請した失業保険給付の申請件数を示す指標。失業率や非農業部門雇用者数の先行指標として注目されます。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回20.8万件(改定20.9)、予想21.0万件、結果23.1万件(×)

米国失業保険継続申請件数
新規申請後に失業保険の申請を継続している人数を示す指標。
「予想より高い数値→ドル売り材料」、「予想より低い数値→ドル買い材料」
前回177.4万件(改定176.8)、予想178.0万件、結果178.5万件(×)

【考察】サプライズの弱い数値。特に米国新規失業保険申請件数は2023年8月以来の弱さ。ドル円急落。

26:00 経済指標
米国30年債入札(Upcoming Auctions
「最高落札利回り低い、応札倍率高い、テールが短い→入札好調→国債価格上昇→利回り低下→ドル売り材料」
「最高落札利回り高い、応札倍率低い、テールが長い→入札不調→国債価格低下→利回り上昇→ドル買い材料」「国債入札→市場へ国債供給イベント→国債価格下落→利回り上昇」にもなりやすいことから、「入札前から織り込み→利回り上昇→ドル買い」や「入札通過→Sell the factドル売り」が生じることもあります。

発行額(Offering Amount):250億ドル
最高落札利回り(High Yield):前回4.671%、結果4.635%(◎)
応札倍率(Bid to Cover Ratio, 応札額/発行額):前回2.37倍、結果2.41倍(◎)
外国中銀など間接入札者の落札比率(Indirect Bidder):前回64.4%、結果64.86%(◎)
テール(Bid利回りと落札利回りの差):前回+1bps、結果-0.7bps(◎)

【考察】入札好調。ドル円下落。

27:09~要人発言
米国デイリー・サンフランシスコ連銀総裁(2024年FOMC投票権あり)
(過去の発言:1/192/162/293/13/64/24/12, 4/16, 5/9)
:政策スタンスは中立。前回4/16タカ派発言
SF連銀総裁、政策は抑制的もインフレ率低下には「もっと時間が必要」(Bloomberg

【考察】タカ派発言。

29:30~要人発言
米国イエレン財務長官
「インフレ低下不十分」
米中関係、この1年で明らかに改善=イエレン米財務長官(Reuters

【考察】タカ派発言

<まとめ>
東京マーケット:
日足始値155.53
神田財務官の円安容認発言と日銀金融政策決定会合における主な意見(4月25・26日分)の利上げ議論タカ派内容の影響強く日足安値155.16へ下落。しかし、日本毎月勤労統計(弱)で実質賃金は過去最長の24ヵ月連続マイナスになっており、日銀は利上げ困難と判断されて全戻しから東京高値155.70(前日日足高値155.69)へ上昇。その後、前日日足高値での決済や戻り売りが意識されるタイミングで、鈴木財務相と植田日銀総裁の円安牽制発言あり。東京引けに掛けて揉み合い。前日同様、日本株下落リスクオフも生じましたが強烈な円売りの前では影響見られず。

きょうの国内市況(5月9日):株式、債券、為替市場(Bloomberg

欧米マーケット
今週5/6,5/7の傾向は欧州オープン前から序盤に掛けてドル円下落でしたが、5/7と本日は上昇継続し、前日日足高値155.69を超えてレジサポすると、日足高値155.95へ到達。
156円台に乗せられないなかで米国新規失業保険申請件数・失業保険継続申請件数(弱)。特に米国新規失業保険申請件数は2023年8月以来の弱さでサプライズとなり155.52へ急落。
NYオープン後に155.42を付けてからは米利下げ観測の株上昇リスクオンと米国デイリー・サンフランシスコ連銀総裁と米国イエレン財務長官のタカ派発言が下値支えし、米国30年債入札好調が上値を抑えて揉み合いながらも下落強くじり下げ。
日足終値155.48

【米国市況】株上昇、年内の米利下げ観測強まる-ドル155円台半ば(Bloomberg

ファンダメンタルズ材料とドル円の関係

(Trading View)

通貨強弱

<ドル売り優勢>
買い材料:
・米国デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、米国イエレン財務長官のタカ派発言

売り材料:
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数(弱)
・米国30年債入札好調

<円売り優勢>
買い材料:
・日銀、金融政策決定会合における主な意見(4月25・26日分)→追加利上げ観測、国債買いオペ減額観測。
・神田財務官、鈴木財務相、植田日銀総裁の円安牽制発言

売り材料:
・5/4米国イエレン財務長官の為替介入牽制発言影響継続
・日本毎月勤労統計(弱)→日銀追加利上げ観測後退
・政府日銀為替介入観測後退
・米国新規失業保険申請件数、失業保険継続申請件数(弱)→米利下げ期待→欧米株上昇リスクオン

Currency Strength Chart

政策金利市場織り込み

現行FRB政策金利525~550bps

2024年FOMC市場織り込み(CME FedWatch Tool
次回6月12日公表:据え置き91.5%
初回利下げ観測9月18日公表:25bp引き下げ49.6%
年内利下げ観測:25bps×2回=50bps → 政策金利475~500bps相当

テクニカル分析

トレード

  • 月足:5月陰線形成中。上昇トレンド。
  • 週足:5/6週、陽線形成中。上昇トレンド。
  • 日足:5/8陽線スラストアップ。レンジ
  • 4H足:上昇チャネル。
  • 1H足:上昇チャネル。
  • 15M足:上昇チャネル。

【シナリオ】
①ロング
(A)日足高値155.685をダウ上昇→目標4H足戻り高値156.013
(B)1H足押し安値155.380付近へ下落→転換上昇→目標日足高値155.685

②ショート
(C)1H足チャネル下限かつ1H足押し安値155.163をダウ下落→目標日足安値154.578

5月通算:3勝2敗、勝率60.0%、+153.4pips

(Trading View)

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